4649 6 * 叶多 side * そのまま、林に入って、20分。 つまり今の時間は8:40。 教室ではHRが始まっている頃だろう。 なんとなく、結城は起きてないような気がした。 由奈が起こしに来ないということは、朝によっぽど弱くて毎日ああなのかもしれない。 それに薄々気付いていた自分もいる。 でもだから起こさなかったと言ったら、同室者なのになんだ、と思われてしまうんじゃないかとも思って。 要するに、面倒だから放棄したのだ。 それを否定するつもりはない。 本当のことだし、これが結城にばれたとしても多分俺は否定しないのだろうと思う。 嫌われたくないだなんて感情は、もとから俺の中にはないから。 理解はできるけれど、それはまた別の話だ。 もしかしたらほんの少し、離れて欲しくないという気持ちはあるのかもしれないけれど… いつか無くなるべき俺が、周りに何かを期待するなんて、やってはいけないことだ。 …あり得ない、そんなこと。 突然視界が開ける。 切り開かれた、小さな広場のような場所。 真ん中近くに、南に向かってベンチが一つ、置いてあった。 誰もいない。 (まぁ、当然か。) この学校なら、サボっているやつがいるかもしれないとも思ったのだけれど。 [*前へ][次へ#] [戻る] |