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幻滅デイリー
嘘吐き先生
 ニンゲンシッキャク 番外編。

 前川進も勿論、教育実習生だった。先生が、先生じゃなかった頃の話。



「それでは、プリントの問題をやってみよう」
「はーい」
にっこり、と教壇前で笑顔を作る前川。高校2年生というのは、未だ未だ子供かと感じていた。
「先生、終わった!」
一分もしないうちに、一人の生徒から声が挙がった。一瞬驚いたが、それを取り繕う。
「速いね。では、見せてもらおうかな」
生徒の席に近付き、プリントに手をかける。しかし、生徒はその手を制止させた。
「ん?」
「嘘、ダメ、先生! やっぱ、終わってない!」
唖然としたが、前川は気を持ち直す。
「こーら、しょうもない嘘を吐かない」
「でも、時には嘘も必要だと思います!」
その一言に、冷ややかな視線を送る前川。いくら子供の戯言といえど、許せない様だった。
「ねぇ、君は嘘を吐いて良い時といけない時の違いって解る?」
静かで、淡々とした物言い。前川は気付かなかったものの、生徒の殆んどはその声色に恐怖を覚えた。
「わ、解りません……」
ふざけていた生徒が、ビクッと身を縮こませる。
「俺に嘘を語るなんて、百年早いよ」
そう言って、前川は柔らかに微笑んだ。

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