幻滅デイリー 不良優等生 服装編 「見て見て、先生! この髪!」 セーラー服の少女は、短めの金髪を指差す。彼女は、俺の担当クラスの生徒である。自ら不良と名乗っているが、俺にはそうは見えない。 「染めたのかい?」 「違うもん、ほら!」 少女は、カツラを取って見せた。俺は驚いて、のけ反ってしまう。 「ヅラか!」 「だって、親から貰った大事な体を傷付けたら駄目じゃん!」 真顔で言う彼女に、思わず吹き出してしまった。今日、こんな事を言う高校生がいるだろうか。いや、いない。 「君は、本当に不良か? 親から貰った大事な体って、不良は言わないものだよ」 「何よ、わたし超不良なんだから!」 「超不良って何だよ」 何でも、超とか付ければ良いと思っているのだろうか。 「ううう……、ならこれでどうだ!」 「君は、何と張り合っているんだね……」 髪を掻き上げて、右の耳たぶに付けられたピアスを見せられる。 「じゃんじゃじゃーん、どうだどうだー」 「ほお、見事に開けたじゃないか」 うん、これなら不良と言えるかもしれない。 「あ、開けてないもん! ほら! マグピ!」 「マグピ?」 とは、何だろうか。お洒落に疎い俺には、いまいち解らない。 「マグネットピアスだもん、これ。体に穴なんて、開けられないよ!」 「親から貰った大事な体に傷は付けられない、とか?」 「ピンポーン、先生も解ってくれるんだね! ほらっ、タトゥーもシールなんだよ!」 嬉しそうに言う彼女を見て、良いのか悪いのかよく解らない気分になる。教育者側から見れば、可愛い子供だ。しかし、彼女は真剣に不良を目指している様だし。 「……君は、本当に不良かい? 不良になりきれなかった、優等生では無く?」 ヅラとマグピとタトゥーシールを持ったままの彼女は、俺を見上げて呆然としていた。[続] [戻][進] |