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幻滅デイリー
死亡予想図5
 出窓からは、朝日が差し込んでいた。小鳥の囀りが聞こえ、麗らかな春が来る事を告げている様だった。
「ねえ、そろそろ夜型の生活を治しなさいよ」
「んん?」
寝ぼけた様に伸びをする彼は、わたしの夫。建築デザイナーとして地位を確立した彼は会社を大きくして、全てを部下に任せている。だから、会社員とは違ってこうして朝も暢気なのだ。
「嫌だ。低血圧だからこその、この生活だぞ。手放してたまるか」
そうして、再び眠りの世界に誘われていこうとする彼。
「もしかして、わたしが死んだらどうするのよ。あなたは、ずっと──そのままなの?」
昨日、「燃やすよ、燃やす燃やす」と言ったにも関わらず訊いてしまう。将来の夢を語り合うよりも、わたしは自分が死んだ時に相手がどうするのかという方が、実は興味があったりする。ロマンチックより、リアリスティックのわたしだからこそ。彼がどうするのか、気になった。そう、漠然とした興味から成る。
「ねえってば」
蒲団を剥ごうとすると、そのまま手首を取られて中へと引きずり込まれていく。
「困るから、死ぬな」
抱き寄せられて、耳元で囁かれる。窒息しそうなくらい、蒲団の中は熱かった。

 火葬場が休業日の朝、の事。

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あきゅろす。
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