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幻滅デイリー
嗚呼、断片的記憶よ
 白い、喉だった。スラリとした、顎までのライン。何処かの誰かは、ミロのヴィーナスにまでフェチっていたけれど。ぼくは、別にそれをどうかしようとか思っていなくて。無造作に置かれた彼女は、確か泣いていた。

「どうしたの」とか「大丈夫?」とか、言ってあげられれば良かったのになんて今だから言える事だし。今更、そんな事を言える資格も無い。

 なぜ、そんな環境に自分が置かれていたのかさえ解らない事だし。ならば、訊こうか。君は、小学校低学年の頃の事を覚えているかと。実際、ぼくはその頃の記憶だと踏んでいる。だから、ぶつ切りの記憶なのだ。

 プレハブか? いや、あれは倉庫に近かっただろうか。汽笛が聞こえていたかもしれないし、機械音が喧しかったかもしれない。横たわった彼女と隣り合わせだったぼくは、ただ彼女の肩をゆっくりと一定のリズムで軽く叩いていた。

 ギョロリとした両の目が、ぼく達を睨み付けていた。鉄扉の隙間風が冷たくて、見上げたんだった。その時、ぼくはその目と合ってしまった。それから、ぼくは他人と視線を合わせる事が出来なくなってしまった。

 そうだったのか。あの日あの時、ぼく達は誘拐されていたんだった。

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あきゅろす。
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