幻滅デイリー 河合的、可愛い論 「俺は、とうとう馬鹿イコール可愛いという論に辿り着いた!」 立ったまま力説する男の前で、女はソファーに寝転びながら通販雑誌を捲っていた。 「あ。この服とこのサンダル、欲しいかも」 「聞いてんのか」 厚めの雑誌を取り上げ、女の前に仁王立ちをする男。そして、取り上げた雑誌を放り投げる。 「何すんのよ」 「だから、聞けって」 「聞いてるわよ。可愛いは、馬鹿って事でしょ。それが、どうしたのよ」 女は近くにあった、テレビリモコンを手繰り寄せて電源を入れる。 「おい!」 それを、間髪を入れず切る男。 「煩いわね、もう。男より女の方が解っているのよ、そんな事」 「……は?」 「女に、女を紹介してもらった事ってある?」 気だるげに、ソファーから体を起こす。 「あるけど……」 「その時に、何か言われた?」 「凄い可愛いでしょ、って言われた……」 「実際は?」 流し目で、チラリと男を見やる。 「あまり……」 「解る? 女ってのは、自分より格下の相手しか紹介しないのよ。可愛いイコール馬鹿、なんて遠い話だわ。まぁ、男なら当てはまるかもしれないけど」 「………」 たじろぐ男。 「大丈夫よ、あなたは可愛いわ。だって、名前が河合だもの」 [戻][進] |