幻滅デイリー 明日を見ていたい。 一昨日より昨日、昨日より今日。 今日より明日、明日より明後日。 彼女は、窓辺でいつも両肘を付いていた。髪は柔らかにウェーブがかかり、睫毛は豊かに上を向き、白のワンピースがよく似合う少女だった。俺が仕事帰りの時間に、いつも窓辺から空を見上げていた。 「今日も、あの子……」 グリム童話の、ラプンツェルをふと思い出した。高貴な雰囲気だが、僅かに陰のあれ少女。男という生き物は、陰のある女に弱い。俺も、例外では無いが。 ある少し寒い日、俺は初めて例の少女に声をかけた。少女はカーディガンを羽織り、やはり空を見上げていた。 「あのー、何か見えますかー?」 すると、彼女は初めて俺を見た。 「あ、初めまして……。俺、そんな怪しい者じゃなくて……」 何言ってんだ、俺は。彼女は、そんな俺を見て微笑んだ。 「あなたが、見えたわ」 毎日の彼女が、仕事帰りの今の俺には幸せだった。 [戻][進] |