幻滅デイリー 美しい最期を飾れ 「美しい中で死にてー」 「美しい、死に方ではなくて?」 寝転ぶ二人は、目だけで互いを見合う。 「睡眠薬は、比較的綺麗だと聞く。水死は駄目だそうだ、体が水分吸って何倍にも膨れる。それから」 眼鏡をかけた男は、淡々と話す。そして、それに制止をかける茶髪。 「死に方なんて、どーでもいーの。服毒死だろーが、水死だろーが。ぶっちゃけ、深夜の街中で刺されたっていーんだ」 「あまり、ぶっちゃけていないようだが」 無音。 「だけどさ、綺麗なものを見ながら死にたいんだよ。ただ、それだけで良い。綺麗な華、綺麗な景色、綺麗な人。ただ死ぬ前に、それが目の前にあるだけで幸せだと思うんだ」 ゆっくりと瞼を閉じていく、茶髪。横の髪が顔にかかり、邪魔そうに見える。しかし、茶髪はそれをどうともしなかった。ただ、だらりと全身の力を抜いて倒れているだけだった。そうして、やっと眼鏡の男が喋った。 「なら、お前が死ぬときは俺が傍にいないと駄目という事だな」 「………うん」 「その間は何だ」 「何でも無いよ、何でも無い」 何という自惚れだろうか、茶髪の男は密やかに笑った。 [戻][進] |