幻滅デイリー 終わらない終わり ぼくの携帯電話は、少し前から異常をきたしていた。同じメーカーで同じ機種の携帯が電波良好でも、ぼくの携帯は芳しく無かった。 「あっれー……?」 携帯を振り回しながら、首を傾げる。今から、帰るコールをする予定なのに。以前も、この様な状態があったので慣れている。電源を一度、切ってみれば良いだけの話。 電源キィを長めに押すと、電源が落ちる──いや、落ち始める。けれども、落ち始めるばかり。終わらない、落ち切らない。何故だ。電池は満タンだが、圏外状態。しかも、終了画面が続いている。仕方がないので、近くにいた同僚に訊いてみた。すると、電池パックを一度外してみれば良いとアドバイスを受ける。どれだけ、機械音痴なのかと自己嫌悪になった。けれども、落ち込んではいられないので電池パックを外しにかかる。 「と、取れない……」 歯を食いしばって爪を立てるが、一向に外れる気配は無い。慌てているからだろうか、家路につきながらもガリガリと電池パックの角に指を引っ掛ける。 「う……、ッお! と、取れた……」 慌てて元に戻し、電源を入れる。 「点いた!」 発信履歴から自宅を呼び出し、電話をかける。 「今から、帰ります」 伝えてから、我に帰る。いや、決して駄洒落では無い。帰宅まで、あと三歩なのに帰るコールをしてしまった。 ああ、また怒られるなあと苦笑した。 [戻][進] |