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幻滅デイリー
イケナイコト
 規制されているというのは、その向こう側に何らかの快感が待っているという事なのだろうと思う。

 目茶苦茶にしてやりたい、ぼくが居なきゃ駄目になれば良い、お前の人生をぼくの物にしたい、ぼくの為に破滅を招けば良い、無茶苦茶にしてやりたい。彼の弱った態度を見て、掌にじっとりと汗をかいていた。普段は気丈で高慢で、いかにも天才肌で、他の追随を許さない彼も好きだった。しかし、若さ故の衝動は抑えられなかった。周りはぼくらを百合文学の登場人物に擬えた事もあったが、頑なにそれを否定していた。とうとう、誰も居ないのを良い事に目の前の彼の体を掻き抱いた。彼は抵抗もせずに、身を任せる。嗚呼、この小さな体に全てを背負っていたのかと思うと殊更に愛おしくなった。狭い肩、細い腕、薄い体。逞しさとは程遠い、少女の様なそれ。
「一人なら重いかもしれないが、二人なら分け合える」
意味も無く、そう言ってみた。彼は、何も言ってはいないのに。彼は、何も求めていないのに。
「俺は今、腰挫きをかけてしまいたいくらいに抱きしめたい」
「やってみなよ」
彼の体温は、子供の様に熱かった。

 ぼくは、彼をどうしたいのだろうか。解っているのに、繰り返してばかりいる。

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あきゅろす。
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