[携帯モード] [URL送信]

幻滅デイリー
わたしの魔法使い
「あなたが、わたしの心も読めたら良いのに」
後ろ姿を見ながら、ポツリと呟く。彼は、いつもわたしのして欲しい事をしてくれる。まるで、魔法使いみたいに。会社で少し浮いた存在(雰囲気が)の彼は、同じく少しだけ浮いた(コネクション入社疑惑で)わたしを魔法を使ったかの様に助けてくれる。スーツを着たエリートサラリーマンと、会社規定の制服を着たOLの現代ファンタジーは言い過ぎだろうと思うけど。
「俺は、そんなに偽善的に出来ていない」
「へあッ?!」
振り向き、そして、さくさくと廊下を歩いて近寄って来る。
「ちょっ、え、な?!」
「……中世、魔女狩りが行われた時の話だ。魔女裁判には男も摘発され、それは全体の16%を占めている」
わたしの手を握り、淡々と語る。
「それって」
「本当に魔女の称号を持っているのは、男かもしれないという仮説だ」
「何で、今、それを」
握られた手と彼の顔を交互に見ながら、しどろもどろ舌が縺れそうになりながらも言う。
「俺は君に何のコネクションも無い事を知っているし、単に興味があるだけだ。魔法使い、だと触れ回られても困るしな。そこで、魔法にかけられてみないか?」
それから、何十年も魔法にかかる事をわたしは未だ知らない。

[戻][進]

18/29ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!