幻滅デイリー わたしの魔法使い 「あなたが、わたしの心も読めたら良いのに」 後ろ姿を見ながら、ポツリと呟く。彼は、いつもわたしのして欲しい事をしてくれる。まるで、魔法使いみたいに。会社で少し浮いた存在(雰囲気が)の彼は、同じく少しだけ浮いた(コネクション入社疑惑で)わたしを魔法を使ったかの様に助けてくれる。スーツを着たエリートサラリーマンと、会社規定の制服を着たOLの現代ファンタジーは言い過ぎだろうと思うけど。 「俺は、そんなに偽善的に出来ていない」 「へあッ?!」 振り向き、そして、さくさくと廊下を歩いて近寄って来る。 「ちょっ、え、な?!」 「……中世、魔女狩りが行われた時の話だ。魔女裁判には男も摘発され、それは全体の16%を占めている」 わたしの手を握り、淡々と語る。 「それって」 「本当に魔女の称号を持っているのは、男かもしれないという仮説だ」 「何で、今、それを」 握られた手と彼の顔を交互に見ながら、しどろもどろ舌が縺れそうになりながらも言う。 「俺は君に何のコネクションも無い事を知っているし、単に興味があるだけだ。魔法使い、だと触れ回られても困るしな。そこで、魔法にかけられてみないか?」 それから、何十年も魔法にかかる事をわたしは未だ知らない。 [戻][進] |