[携帯モード] [URL送信]

幻滅デイリー
基督教徒ノ彼
「その時、イエスは厳かに仰った」
「わたしは、宗教絡みが嫌いだって言ったでしょう!」
ヒステリックな声が、広い中庭に響いた。
「……ごめん」
彼は、申し訳なさそうに謝る。悲しそうに俯いた横顔を、愛しく思った。そんなに強く、言うつもりはなかったのに。信仰の自由は認められているし、わたしが彼を縛る事が出来る理由なんてどこにも無いのに。
「本当にごめん、聞きたく無かったよね」
悔しくて、泣きたくなった。なぜ、この人は謝るのかが解らない。こんな小娘に怒鳴られて、謝るなんて人が良いのか。ううん、もしかしたら馬鹿なだけかもしれない。それでも、彼がロザリオを手繰って祈る姿は美しくて。それでいて神々しいのは、絶対に言ってやらない。
「ごめんね」
「もう、謝らないで。ウザったいわ」
「ごめ……、あ」
ジロッと睨むと、彼は自らの口を塞いでから苦笑した。
「バーカ」
この人は、いつか騙されると思った。
「君は博識だし、頭の回転も速い。ぼくは君に何と何度罵られようと、構わないよ。ぼくは、馬鹿だもの」
彼は、わたしの肩を優しく抱いた。
「触らないでよ、バカがうつるわ」
「ごめん」

 神様はいないから、宗教は嫌い。神様がいたのなら、わたしはこんなに悲しく無いもの。でも、もしも、もしも──もしも神様がいるのなら、彼の優しさがずっとわたしだけに注がれます様に。

[戻][進]

23/31ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!