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幻滅デイリー
自由の国
「さて、では何故アメリカでは銃の所持が認められ、許可されているのでしょうか」
彼は、静かに言った。アメリカは素晴らしいだろう、とでも言わんばかりに。ぼくは少し考えてから、口を開く。
「ほら、物騒だからじゃないかな」
「物騒ならば、皆が武器を捨てれば良い」
却下だ、という意味らしい。彼は椅子に腰掛けたまま、そのすらりと長い脚を組んだ。そして、トントンと膝を人差し指で叩く。
「じゃあ、自分の身は自分で守れっていうさ」
「最初の答えと、変わっていないが」
またもや、却下らしい。一体何だ、言われてみれば解らない。
「君は残念ながら、馬鹿なんだな」
掌を上に向けて、指先を動かしてぼくを呼ぶ。ふらりと近付けば、その指先で強かに打たれた。
「痛……ッ!」
いわゆる、デコピンというやつだ。打たれた眉間が、じんわりと熱を発する。
「権利が認められているのさ、さすが自由の国というべきだろう? 日本はその点、劣っている。警察が、ぼくらを守ってくれた事はあるか。政府は、ぼくらを守ってくれた事はあるか。国は、ぼくらを守ってくれた事はあるか。奪うばかりで、何も与えてはくれないんだ」
「あ、でも祖父の屋敷の蔵には猟銃があった気がする」
ぼくは、論をひっくり返したくて言う。すると、彼は慈愛に満ちた笑顔でぼくを奈落の底に突き落とした。
「君の実家は、山中だろう。田舎には猪などの、野生生物を撃たねばならない。違うか? それとは、似ても似つかない。武器を持たないのは、奴隷だけさ。日本人は、皆奴隷に過ぎない。君も、ぼくもね」

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あきゅろす。
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