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幻滅デイリー
指先の箸
 昼の食堂は、随分と賑わいを見せていた。
「お前、箸の使い方違うぞ」
木川が林川の隣で、注意していた。木川は身嗜みやら素行やら、何かにつけて煩い男だった。一方の林川は大人しいというか、波風を立てない男で素直に箸を持ち直していた。しかも「うん、解った」と頷いて、木川に従順な態度を取っていた。俺はラーメンをトレイに乗せて、木川と林川の前に座る。
「一緒させてな」
「うん」
木川は無言で頷き、林川だけが友好的に笑う。俺は大して気にもせず、割り箸を二本に分け、ラーメンをかき込む。長蛇の列に並んだだけあり、なかなか美味いと思う。すると、木川が俺の手を見て口を開いた。
「森川、箸」
何だよ、俺もかと木川の手元を見ると奴も不思議な持ち方をしていた。なので、俺も言い返す。林川の様に、なるべく波風を立てない形で。
「木川も、微妙に違うよな」
しかし、精一杯の抵抗は木川の一言で虚しく終わった。
「俺がこの持ち方で、森川に迷惑をかけたか?」

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