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幻滅デイリー
提出期限は、明日
「本当に、大丈夫?」
「応よ」
咳き込む彼に、何度も何度も振り返る。火燵でレポートを書く、彼の背中は優しい。
「そう……」
「だから、心配すんな。お前は、料理を作ってりゃいい」
いつにも増して、酷く掠れた声だった。わたしは彼の為に、せっせとお粥をこしらえる。流動食しか食べられる気がしないなんて、余程喉にキているのだろう。
「それは良いけど、背中見えてる。風邪、酷くなるよ」
「見んなよ、エッチ」
笑いながら、左手で上着を引っ張っていた。



「本当に、馬鹿だね」
お粥を皿に盛り、傍に寄ると彼は顔だけをこちらに向けた。わたしは、気にせず台に皿を置く。
「馬鹿って言う奴が、馬鹿なんだよ」
マスクをしているからなのか、くぐもった声が漏れた。そして、ズズッと鼻水を啜る。
「啜っちゃ駄目でしょ、ちゃんとかんで」
ティッシュを引き寄せようと火燵の端に手を伸ばすと、そのままその手を掴まれる。そして、恐らくキスをされた。布越しっていうか、マスク越しのキスだった。一瞬過ぎて、幻の様にも感じてしまう。掠める様に、時間を飛び越える様に。
「奪われた感じ、しないね」
「それより、感染しねえよな風邪」
わたしは、残る感覚に指を這わせた。

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