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幻滅デイリー
止まらない昇降機
「絶望的だ」
ぽつん、と残された箱の中。いくら、数字の書いてあるキーだろうが、開閉とわざわざ緑と赤に色分けされているキーだろうが、虚しくプラスチック同士がぶつかる乾いた音だけが押した分だけ響く。

「畜生! もしもし、誰か! 誰か! オイ! 閉じ込められてんだ! 止まらないんだよ! オイ、誰か!」
昇降機内の無線は、役に立たないらしい。
「ふざけんなよ、クソ」
地下から屋上まで、ノンストップで往復何回目だろうか。もう、数えてもいない。
「頭痛ェ……」
体と頭が、浮き沈みする感覚についていかない。おまけに、この昇降機自体の希釈液臭。閉所恐怖症ってわけでも無いが、長時間独りでこの中にいるのは些か辛い。こうしていると、昇降機のワイヤーが切れてしまうのでは無いかという最悪の結末さえ浮かんでしまう。
「気持ち悪ィ……」
とうとう、目眩がしてきた。がくん、と膝を付き手を着く。膝が、ジンと痺れた。はた、と携帯電話があった事に思い出した。急いでポケットから取り出し、ディスプレイを見る。
「け、圏外……かよ」
昇降を繰り返す箱の中、とうとう俺は意識を手放した。



 頼むから、出してくれよ。

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