幻滅デイリー
負けて、勝って下さい
打たれ弱い人っていうのは、負け知らずなんじゃないかって思うわけ。と、前置きをする少女は格闘実況マニアである。
「『俺、打たれ強いんだぜ』なんて言われたって負け犬の遠吠えか、人生の敗北者である事を自己申告している様にしか聞こえない。例えば試験に落ちて、立ち直りが早い人はメンタル面で強いと錯覚しがち。だけど、立ち直りが早いって事はしょっちゅう倒されているんじゃないかって思えるのよ。逆に、負け知らずは倒されると起き上がれないの。倒された事が無いから、起き上がり方を知らないの」
少女は、少し興奮気味に語る。少年はそれぞれ脚と、腕を組んだまま笑っていた。そして、ファーストフード店で購入したシェイクを啜ってから言う。
「それ、面白いね。じゃあさ、その負け知らずと勝ち知らずを戦わせたらどうなると思う？ 個人的に、俺は勝ち知らずを応援したいけど」
「わたしは断然、負け知らずよ。勝ち知らずなんか、一発与えられる前にボコボコにしちゃえばいいんだもの」
左は世界を制す、とでも言いたげに高く掲げる少女はある意味とても輝いていた。
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