自宅謹慎(2)
親の言うことは絶対、子供を丁稚のようにこき使い、親の言うことに逆らったら容赦しない人達をよく説き伏せたものだ。

「4人でお金出し合ったの。だって絶対お金出さないって言うんだもの。ほんとケチよね」

「そうそう、あ、でも気にしなくていいのよ。ちょっと早い誕生日プレゼントだと思ってね」

「う・・・うん。ありがとう」

「それとな、中学卒業するまでは通話料金も俺と兄貴が払うから、あんまし無駄遣いはするなよ」

「え?どういうこと、将兄ちゃん」

なぜ兄2人が俺の携帯電話の料金を払うんだ。そりゃあ俺には無理だけど。

「家訓破って買ってやるんだから俺らで責任持てって。高校入学したら料金払ってやるけど、それまでは家訓に反したから払ってやらないとさ」

「・・・さすがお父さんとお母さんだね」

「あとへんな事に使って問題起きたら私達が怒られるから、変なサイトとか覗いちゃだめよ。あとゲームも禁止」



兄姉達は、こうやっていつも俺のことを見守ってくれる。お父さんもお母さんも厳しいけど、それは愛情だと分かっている。
俺は本当に、家族に大事にされている。今更だけどそう思う。この家に生まれたことを、感謝する。
俺はビービー泣きはらして、散々泣き虫に戻ったといじられたけど、それさえも兄姉の優しさが伝わってくる。

「さて、電話番号も打ち込んだし、メールはこれからね。赤外線の使い方分からなかったら友達に聞きなさい」

みんな慣れてるから他社の機種だって使えるのよと、蝶子姉ちゃんは簡単な操作を教え番号を保存してくれた。



「じゃ、一番はやっぱり京極君よね」



「え?」

「一番にかける人よ。今からかけるんでしょ。そのために買って来たんだから」

兄姉にはバレバレだ。

「ちょっと貸して」

蝶子姉ちゃんは俺の携帯を取りピッピと何かを打ち込んでいる。そして転送!と言ったあと、また俺の手に携帯を戻した。

「今ね、京極君にSMSでこたの番号送ったから。携帯買いましたって文も一緒にね。これでこたからの電話って番号見て分かるわね」

なるほど・・・SMSの意味は分からないけどメールだなきっと。いきなり知らない番号からかかったら出ないかもしれない。ここまでしてくれるなんて。嬉しいよ。蝶子姉ちゃん。

「じゃ、私は優君にこたの番号とアドレスをメールしとこう!」

華子姉ちゃんは自分の携帯電話で椎神にメールを送るらしい。

「・・・なあ、華子姉ちゃん。何で椎神のアドレスとか知ってるの?」

「当然でしょう。そんなのとっくの昔に教えてもらったわよ。ね蝶子!」

すげえ、姉ちゃん達。昔から椎神のファンなのは知ってたけど。よくまあ中学生相手に高校生と大学生が電話番号とかアドレスとか聞くよな。椎神も教えるなよ。

それに姉ちゃん達が知ってるなら携帯借りて電話すればよかった。今更だけどね。




それから夕ご飯を食べて、1人部屋に戻り携帯とにらめっこ。かけたいけど、いざ手元にあるとかけるのに勇気がいる。でも、さっきメールしたからもしかして龍成と椎神の方からかかってくるかも知れない。
悩んで悩んで悩んで・・・・・・・・・・・・・・・・・・決心がつかずに俺は寝た。いいや、明日にしよう。どうせ明日も一日暇だ。






謹慎3日目金曜の夕方、せっかく携帯を買ってもらったのに電話をせず、悶々と過ごしていると思いもよらぬ来客が2人訪れた。


「げ、、、やっぱひでえな。その顔」


人の顔を見るなり玄関でそうつぶやいたのは、3日前にケンカしたクラスの不良だった。1人は不良グループのリーダー。もう1人は俺が最初に殴った奴、「おもしれえ発言」をした奴だ。
俺の顔は今日がピークか?と思うくらい目の上と切った口の端の青あざが鮮やかで、湿布を貼った頬もまだ赤く腫れている。


「何か用」


俺はまだ許したわけじゃなかったからぶっきらぼうに答えると、あいつらいきなり頭を下げてきた。

「悪かった。綾瀬」

何だいきなり!不良が俺に頭を下げている。何かの見間違えか!

「俺達、京極のこと悪く言うつもりじゃなかったんだ。ただ、その、ヤクザとか事件とかいろいろあったからさ、ちょっと面喰っちまって」
「おもしれえとか言って、悪かった。あいつらのこと何も考えてなくて。お前がまさかあんなに怒るなんて思わなかったし」

俺の不良の概念は、威張ってる、反省しない、考えが無茶苦茶、自分が悪くても謝らない、そんな感じだった。まさか自分達が言ったことを反省しているなんて思わなかったからびっくりした。



「仲間なのに、やなこと言っちまったな」



不良のリーダーの目は真剣に見えた。
もう1人も俺に殴られた頬が腫れているのに、俺に腹が立っていてもおかしくないのに神妙な態度でちゃんと謝っていた。

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あきゅろす。
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