Morning Coffee
−4−
時計を見て虎徹に声をかけた。
「そろそろ出ましょうか」
「もう、そんな時間か」
虎徹も時計を見る。
朝食は外で食べるのでそんなにもゆっくりはしていられない。
虎徹はたいてい朝食は家で食べるのが常だが、ここはバーナビーの家であるからバーナビーに合わせることにしている。
朝食は大体アポロン・メディアのビル近くのカフェだ。
少し値ははるが美味しい。
虎徹も店は知っていたが入ったのはバーナビーとがはじめてだった。
朝食のメニューも豊富にあるが選ぶのが面倒臭さくて最初に来たときにバーナビーと同じものを頼んで以来それを食べている。
ラグーパスタ。
ペンネとラグーを和えさせたものだ。
気に入っているのもあって他のものにかえたことがない。
バーナビーにも飽きないのか聞かれたことがある。
けど、飽きないのだからしょうがない。
コーヒーを啜りながらいると、
「ホント。飽きないんですね」
「ん?」
「他にもここ美味しいのあるんですよ」
バーナビーはいつも違うメニューを食べている。連続して同じものを食べているのを見たことがない。
「けど、旨いからなあ」
相変わらずの同じ応えにため息をつく。
面倒臭がっているのもバーナビーは知っている。
バカのひとつ覚えに同じものを食べることも。
だから、今度は自分が作った食事を食べさせると決めている。
ずいぶんと前からそのために練習をしてきていた。
「ん?どうした」
どうやらじっと虎徹を見ていたようだ。
「いえ。‥‥ついてますよ」
手を伸ばし、口端についてるのを取ってやるとそれを口に入れた。
「―――っ!?」
まさかのバーナビーの行動にびっくりしたのと恥ずかしさで顔が熱い。
「どうしたんですか?顔が赤いですよ」
意地の悪い笑顔を見せる。
「―――おまえなあ‥‥‥」
虎徹は俯き顔を覆った。
「虎徹さんだって前にボクにしたじゃないですか」
意地の悪い笑顔はそのままに言い攻める。
確かにやった覚えはある。が、あれはついやってしまったことだったはずだ。
娘の楓にもやっていたりするから条件反射みたいなもんだ。
こんなあからさまにじゃない。
「あれは、楓にもだから条件反射っちゅうか」
バーナビーだってそんなことはわかってはいるがこういう反応がおもしろくて堪らない。
つい意地ってしまいたくなる。
虎徹はコーヒーを飲み干すと紙ナフキンで口を拭った。
またバーナビーにやられたら堪らない。
すっかり警戒してしまった虎徹にバーナビーは心の中でチッと舌打ちを打つ。
今度ついてたら嘗めてあげたのに‥‥。
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