モノクロツインズ
双子、そらまで
『今日一日、お天気◎!』
朝のニュースで最近人気のある、可愛いお天気お姉さんがそう言っていたのを思い出した。
という事で俺は、月と一緒に散歩に行く事にした。
「ほんとに今日は天気いいね。気持ちいい」
「…太陽の光で月がきらきらしてる。綺麗だな」
「っ…もう…陽、そんな事ばっかり言うな…」
無意識の内に口に出した言葉に照れたのか、月はふわりと頬をピンク色に染めた。
日が当たってほんとに綺麗なんだけどな。
「あ、そうだ。月、影おくり、しよっか」
ポカンと間抜けな表情をした後、
「あ〜小学生の時によくしたね」
月は頷いてくれた。
「でもオレ、まばたきしちゃっていつも失敗ばっかりだった」
「はは、目開けてちゃんと影見ておかないと」
ドライアイだもん、て変な言い訳をして月が目を擦る。
その仕種がまた可愛い。
「よーし月、ここでしよっか」
「じゃあ陽もなんかポーズしてよ。オレはバンザイしとくね」
「んじゃ、俺はピースでもしてる」
そのあとに二人笑って、自分達の目の前に広がる二つの同じ高さの影を見つめる。
バンザイしながら少しふらふらしてる月を横に感じながら。
「月、10数えるからね。まばたきしちゃ駄目だよ」
「はーい」
「いくよー。…1…2…3…4…
5…6…7…」
「あれ?ちょ、陽……?」
「…8」
「何顔覗きこんでんの!影見ないと!え…待っ……」
「ふふ、…9……
ちゅ」
「…、10。…あれ?月ってば目つぶっちゃったの?駄目じゃーん」
にやにやしてるだろう自分の顔を想像しながらも、ぐわっと目を見開いて顔を真っ赤にするもバンザイしたままの体を指でつつく。
「、っばーかばーか!影見れなかったじゃないか…!陽の顔しかオレの視界になかったよ!!」
「ははっ、それは嬉しい事で」
「…んっとーに!陽のばかやろうッ」
ふざけて言ってやると月は怒って尻尾の毛を逆立てて叫ぶ。
こういうところは本物の猫みたいだ。
「という事は月、影おくり失敗しちゃったの?残念だなあ」
「誰のせいだと…!そういう陽こそ失敗じゃん」
「違う違う。成功」
当たり前のように言う俺に疑問をもったのか、月が首を傾げた。
そう思うのも当然だろうが。
俺にとっては成功、なのだ。
「だってさ、――――――――――――――だもん。」
「……、…っ…へーぇ。あっそ!」
「あれ?何にやけてんのー?嬉しいの?」
「う、嬉しくないっ。勝手に陽がそう見えるだけじゃないの〜」
そんな嘘ついてもバレバレなのになあ。
月の猫耳がピコピコ動く時は、気に入る事があった時なんだっていうのは秘密だけどね。
「、あ、陽。き、今日くらいは一緒にお風呂入ってあげてもいい、よ…?っオレは、別に入りたくないけど!」
「え〜?素直じゃないなあ」
二人いつの間にか手を繋いで。
また笑い合う日常が幸せなんだって―――。
"だってさ、月の影、空に取られたくないんだもん。"
end
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