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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第17話 『私達の夢を皆に認めさせるために、お前達にはその力を振るう義務がある』



とまカイっ! 前回の三つの出来事っ!!

一つっ! 六課再起のためにシグナムがただ一人で動き出したっ!!

二つっ! 恭文とフェイト達が別行動を取っていたティアナとリインと合流したっ!!

三つっ! 今回の事件にレジアス中将が大きく絡んでいる可能性が出てきたっ!!






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ティアナ「・・・・・・物語的には結構平和に動いてるわよね」

恭文「そうだね。特にバトったりもなかったしさ。でも・・・・・・ここからだよ。ほら、嵐の前の静けさだろうし」

ティアナ「そう、なっちゃうわよね。まぁ大事にならない事を祈りましょ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・ドクター、どうします? ルーテシアお嬢様の召喚獣も居るとは言え、圧倒的戦力不足は否めません」

「あぁ、分かっている。分かっているよ。実はこんな事もあろうかと」

「何も用意してないんですね?」

「・・・・・・はい、その通りです。ごめんなさい、生まれてきてごめんなさい」



マズい、マズ過ぎるぞ。というか管理局組、ここは空気を読みたまえ。どう考えても私達が圧勝するコースだろうが。

君達が空気を読まなかったせいで、私はラボの奥底で頭を抱えてウーノにため息を吐かれるんだ。



「ドクター、ドクターのその内面と外面の差が激しいのはもう知っていますが、少し落ち着いてください」

「すまん、無理だっ! これはあまりに予想外でいつものマッドサイエンティストキャラなど作れないんだっ!!」




私、ジェイル・スカリエッティ・・・・・・実は何気に天才科学者なんていうキャラではない。そんなのは外面だ外面。

私の尊厳を踏みにじる娘達は怖いし、たまに昔見たスプラッタ映画を思い出して眠れなくなる時もある。

ただそれでも生態研究への好奇心は止まない体質なので、人体実験もしちゃったりするのがおちゃめなところだ。



ただそれを知っているのはごく一部。他には私は強烈なマッドサイエンティストキャラで通っている。

というかその、ついつい私もそういうキャラを通してしまって・・・・・・私は泣きたい。

具体的にはそんな事も含めて現状を壊してやろうと今回の『革命』を起こしたのに、失敗しそうなところがだ。



どうするどうする。計算では最終的には負けても復讐は達成出来るはずだった。だが今の状況は非常にマズい。

復讐のために必要な鍵の一つは既に仕掛けてある。こちらは命令を早めるだけで問題なく実行可能だ。

だた問題はもう一つの方だ。肝心要の鍵がどこにあるかも分からなくなるとは・・・・・・くそ、完全に六課の連中を甘く見ていた。



私の復讐はこの二つを使って初めて完遂される。勝ち負けが問題ではなくそこが出来なかったらだめなんだ。

だが娘達からここの居場所がバレておそらくはすぐにでも・・・・・・そしてそれに対応は出来ないだろう。

襲撃に備えている余裕はない。いや、そもそもこの時点で備えていても無意味とも言える。それではだめだ。



とりあえずアレだ、私の頭脳など本当に大した事がないな。



あちらどころかこちらも立たない今の状況を打破する手段も見つけられないんだから。





「ドクター、私が思うに」

「なんだ?」

「ドクターはおそらく復讐も完遂した上で勝利する事を望んでいると思います。
・・・・・・本当の事をずっと教えられなかった私の妹達のために」



私の隣にずっと居てくれたウーノは、優しくそう声をかけてくれた。私は抱えていた頭をあげて、ウーノの方を見る。



「ですが、負ける事前提ならばドクターの最優先事項である復讐は完遂出来ます。
重要事項は『スポンサー』の抹殺と、ゆりかごを浮上させ・・・・・・破壊させる事なのですから」

「待てウーノ、それでは」

「私達はきっと大丈夫です。ゆりかごの浮上は・・・・・・管理局がどういう判断を下すかが不安ですね。
ですがこちらがスポンサーとの繋がりとアレの事を暴露すれば、話は変わるのではないでしょうか」





確かにそれなら・・・・・・下手に抵抗して罪状が重くなるような事もないだろう。

ウーノの言うようにこちらの手持ちの情報も開示すれば、多少は温情が見込めるかも知れない。

だがそれは、私達をこれまで道具扱いしてきた局に恭順する事になってしまう。



ダメだ、これでは意味がない。勝った上で私達の世界を作らなくては、やはりダメだ。





「だめだ・・・・・・それはだめだ。ウーノ、それではこれまでと同じだろう」

「ドクター、ドクターにとっての復讐は私達にとっても復讐です」



鋭くウーノにそう言われて、私は固まってしまった。それからウーノは、また優しく微笑む。



「・・・・・・そこをお忘れなく」

 

その笑顔に何も言えなく・・・・・・いや、そもそも言う権利などないのだろう。

だから私は大きくため息を吐いて、微笑み続けるウーノを見返しながらこう言うしかなかった。



「分かった」



それは事実上の敗北宣言。それが・・・・・・『無限の欲望』の限界だった。



「『スポンサー』の抹殺を最優先に。それでゆりかごを破壊する手順を早急に組み立てよう。
ウーノ、すまん。私が情けないばかりに、負け戦に付き合わせてしまって」

「大丈夫です。それに・・・・・・例え負け戦でも、復讐が完遂出来ればそれで勝ちです。違いますか?」

「・・・・・・いいや、違わないな」










・・・・・・私は情けない男だ。娘達に最良の世界を送る事も出来ない。スプラッタ映画に怯えて泣きながら寝る事もある。





そんな男だが、それでもと思っていたのに・・・・・・すまん、みんな。あとで好きなだけ殴ってくれ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・やっとですね」

「うん」

「な、長かったわね」

「何気に無重力空間の中でずっとって・・・・・・くるわね」





ここは本局無限書庫の中。もう曹長・・・・・・もとい、早朝もいいところ。てーか、朝日が見えたらきっと黄色く見える。

僕達は、あっちこっちでカオスな決定が下されている事も知らずに感嘆の息を漏らしていた。

だってようやくジョーカーが引き当てられたから。というか、我ながらかなり頑張った。・・・・・・訂正。



みんなで頑張ったの。だってだって、死んだように眠りながら、空間を漂う人が何人も居るし。





「みんなありがと。かなり助かっちゃった」

「ううん。私大した事はしてないし」

「ですです」

「ティアナと歌唄ちゃんもありがとね。おかげで助かったよ」



ユーノさんも若干身体をフラつかせながらも、ティアナにお礼を言う。



「い、いえ。私はコイツが出した本を取りに行くだけですし。てーか、アンタは大丈夫?」

「・・・・・・ごめん、もう魔力すっからかん」



さすがにフル稼働だったから・・・・・・そんな時、後ろから歌唄が僕を抱き止める。僕の後頭部は歌唄の胸に乗った。



「あの、歌唄っ!? 僕大丈夫だから離してー!!」

「いいから。それとも、ただ甘えるだけもダメかな」



少し不安げな声といつもと違う優しい包むような抱き方をする歌唄に・・・・・・僕は何も言えなくなってしまった。



「・・・・・・ありがと」

「いいわよ、別に」

「お兄様、情けないですね。もうちょっと頑張らないといけませんよ」

「そうだぞ恭文、しっかりし・・・・・・このスルメ中々いけるな」

「おのれらやかましいわっ! 僕の周囲で無重力空間が楽しくて、遊びまくってたくせに何を言うのっ!?」



色々おかしいからね、それっ! あと、スルメはどっから取り出したのさっ!!



「いや、アンタいきなりどうしたのっ!? てーか私達遊びまくってないでしょっ!!」

「・・・・・・あ、ごめん。こっちはこっちの話だから気にしないで」

「それ気にするからっ!!」



ちくしょお、ティアナにも全部バラしちゃおうかなぁ。あんまり連中にツッコめないのが辛い。

ただフェイトとリインは納得顔。苦笑気味に僕を見ている。



「とりあえず・・・・・・マジックカードで」

「あぁ、いいよ。僕が回復魔法かけてあげるから」



懐からマジックカードを取り出そうとすると、ユーノ先生が止めた。

・・・・・・いいのだろうか。だって、ユーノ先生もお疲れなのに。



「・・・・・・私、マジでダメね。回復魔法とか全然だし。てーか、何でアンタはこんな色々出来るのよ。
料理も家事も得意で、魔導師としても強くてその上検索みたいな事も得意だし」

「凡人だもの。手札を多く持ち、状況に合わせて的確に使って、ようやくSランクとかとやり合えるの」

「納得したわ。てーか、決めたわ」



うん、何を? てゆうか、なぜにそんなガッツポーズかますのさ。

あとそれやるならその目の下のクマをなんとかしようか。うん、ちょっと痛々しいもの。



「検索魔法と回復魔法は覚える。次はなにやろうかって考えてたけど、それにしたわ」

「あぁ、それはいいかも知れないね。フェイトも自分で調べ物をしたりする時に使ったりするから」

「そうなんですか?」

「うん。実はヤスフミの直伝なんだ。執務官の仕事をしてると依頼で済ませる事も多いけど、それでも覚えておくと楽だから」



フェイトを驚いた顔で見ていたティアナが僕を見るので、疲れた身体に鞭を打ちつつエヘンと胸を張った。

なお、教えたのは触りだけ。実際はフェイトの頑張りがあったからこそ出来る事なの。



「というかね、執務官に限らず自分で調べ物が出来るようになってくれると僕達は嬉しいなぁ」



そう言いながらユーノ先生が涙を零す。そして瞳に明らかな恨みの炎が宿った。

それを見て僕達はつい身体が震え、ユーノ先生から若干距離を置く。



「・・・・・・世の中にはこっちの都合も完全無視で資料請求してきたりする、元執務官のクソ提督とかが居るし」

「そ、そうなんですか」

「うん、そうなんだよ。ティアナ、君が将来的に何か偉い仕事に就いたとするよ?
それで人に何かを頼む時には感謝の気持ちを忘れない方がいいと思うな」



ユーノ先生、落ち着いてっ!? いや、分かるけど落ち着いてっ!! 僕達めちゃくちゃ怖いからっ!!



「こう、表面上の態度って言うのも結構大事でさ。
ムスっとした感じで頼まれると、こっちは非常に感じが悪いもの」

「は、はい。あの・・・・・・心に刻んでおきます」

「私も心に刻んでおくよ。というかその・・・・・・落ち着いたらちょっと説教してくる」

「リインも手伝うですよ。これはさすがにひど過ぎです」



ユーノ先生、僕もフェイトと同じくそのクソ提督にすっごい覚えがあるけど、それでも落ち着いて? ほら、怖いですから。

てーか、ティアナがちょっと引いてますから。僕の腕にさりげなく抱きついたりしてますから。



”ね、これなに? なんでスクライア司書長は、こんないきなりにキレるのよ”



背中のドSと左腕のツンデレという状態なのに、僕はツンデレの質問に答えなければならないらしい。それが悲し。



「・・・・・・だめ、浮気禁止」

「ですですー」



そして右腕の永遠の嫁に駅弁な黒ロリという状況に進化してしまった。てゆうかあの、このてんこ盛りなに?



”・・・・・・負けらんないわね。てゆうかほら、早く質問答えて”

”おのれこの状況見てそれっ!? ・・・・・・あぁもういいや。あのね、ある人に今言ったような事を散々されてきたの。
10年前から今に至るまでずっと。そのために色々な被害を蒙ってるんだ。なお、僕が居る時にもやられた事がある”

”それでこれ?”

”それでこれなの”



被害としてはなのはとのおでかけが何回かキャンセルになったりとか、休みがなくなったりとかだね。

思うにもしかしたらなのはとのフラグが立たないのは、クロノさんのせいなのではないだろうか。



”納得したわ。・・・・・・ね、また今度検索魔法教えてよ。
これ見たら、おいそれと資料請求するのは躊躇っちゃう”

”分かった。・・・・・・ただユーノ先生の言うように感謝の心って大事だからさ”

”えぇ、それも分かった。でもすごい勢いよね”

”『大事な幼馴染み』とのお出かけが何回もなくなったりすれば、そりゃあこうもなるって”



なんて感じで僕達が色々と引いていると、後ろに気配が生まれた。・・・・・・あ、訂正。

後ろというか、無重力空間の上の方からだね。もうちょっと言うと書庫の入り口側から誰かが近づいてくる。



「・・・・・・ユーノ先生、お久しぶりです」

「お邪魔いたします」



固まった思考を元に戻したのは一組の男女の声。そちらを見ると、ヴェロッサさんとシャッハさんが居た。



『アコース査察官にシスター・シャッハっ!!』

「やぁ。恭文・・・・・・はともかく、フェイト執務官にリインと歌唄ちゃんまで。君達もここに居たんだね」



それで二人はティアナに視線を向ける。ティアナは慌てた様子で僕から離れてその場で敬礼を返した。

でも他の三人は離れない。それでなぜか僕を見てヴェロッサさんとシャッハさんが引き気味なのが気になる。



「でもシャッハさんまでまたどうして」

「司書長から連絡をもらいまして。・・・・・・あ、安心してください。
日奈森さん達はちゃんと私と騎士カリムの信頼の置ける騎士達と居ますから」

「いや、僕はまだ何も・・・・・・でもありがたいです」



シャッハさんが安心したように優しく微笑む。・・・・・・基本的に優しい人なのです。

暴力・武闘派シスターなんて言うのは、シャッハさんのキャラの一部だもの。全部じゃない。



「ただまぁ、あなたはその・・・・・・もう少し女性関係をきちんとした方が良いのでは」

「してますよっ! してるのにどうしてかこうなるんですけどっ!?」

「普通はそうならないよ。・・・・・・それでユーノ先生。
スカリエッティが保有していると思われる手札が分かったと聞いたのですが」



あー、なるほど。いつの間にかユーノ先生が呼び出したのか。それなら納得だわ。でも、それだけじゃない。

二人はカリムさんの代理としてここに来たって感じなのかな? カリムさんは今、忙しいそうだし。



「・・・・・・恭文君、例のデータを二人に見せてあげて」

「はい。・・・・・・これです」



空いた左腕で、アルトが展開してくれたと思われる操作キーボードをポチポチと押す。

すると二人の前に空間モニターが立ち上がる。そこに映るのは・・・・・・巨大な建造物。いや、違う。



「これは」

「船、ですね」





映っているのは船。それもただの船じゃない。全長にすれば数キロの戦艦。

搭載されている武装も、今の次元航行艦の比じゃないくらいに充実している。

これが連中が持ってきているジョーカー。予言を現実のものとするカード。



そしてこの絶望を呼び起こす巨大な戦艦には、当然名前がある。





「古代ベルカ時代。聖王が保有し戦乱の世を治めた決戦兵器。その名も・・・・・・『聖王のゆりかご』」




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と彼女達の崩壊の非日常


第17話 『私達の夢を皆に認めさせるために、お前達にはその力を振るう義務がある』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



聖王のゆりかご・・・・・・見事に検索ワードに引っかかったのがこれ。ただそこからが大変だった。





情報量があんまりにも少なくて、資料を揃えるのに一晩かかったのよ。















「これはまた・・・・・・凄いのが来たね」

「えぇ。正直、私も見てて驚きました。マジで信じられなかったです」

「こんなの、本当にありえないレベルで・・・・・・私も一瞬夢見てる気分でした」



ロッサさんとティアナとフェイトが驚きを隠しもせず・・・・・・いや、隠せずに呟く。

シャッハさんも同じ。普段は見せないであろう『驚きました』と言わんばかりの顔をしている。



≪・・・・・・資料によると、その時代から既にロストロギア扱いを受けていた最強の質量兵器だそうです≫

≪この手のは全部秘匿級の扱いだけど、どうもこのゆりかごはブッチギリっぽいの≫





この手の戦艦はミッドでは戦船(いくさぶね)と言う。古代ベルカ時代には、かなりの数が生産されたらしい。

それこそ比喩無しに空を埋め尽くすほどに。なお、それらは基本ロストロギア扱い。

今言ったように秘匿級という最上級の扱いを受けている。でもその中でもこれはブッチギリなの。



書庫で何度か見た戦船の資料の中でも、これはブッチギリにデカイ。

だから戦船の存在自体は知っていた僕も、本当にビックリした。

その理由はあまりの能力の高さと大きさ。戦乱の世を治めたのはその能力のおかげだよ。



しかしどうやって造ったの? こんな物騒なリアルマクロスをさ。





≪その上、これは無敵の戦艦なんですよ≫

「アルトアイゼン、それはどういう事だい?」





二人にデータを見せながら僕達も改めて本に目を通す。それで改めて寒気を覚える。

『これ、実は大昔のアニメの武器とかじゃないよね?』なんて考えたりする。

だってあんまりにチート性能なんだもの。一応知ってはいるけど、それでもだよ。



あれだね、聖王ってきっと『エターナルフォースブリザード』とか『邪気眼』とか、発症してるんだね。分かります。





≪まずゆりかごは普通に飛んでいたのでは、その性能の全てを発揮出来ません≫

「それを発揮出来るのは・・・・・・軌道上」



フェイトが無重力空間の上下の概念が無い世界の中で上を見る。

でも見ているのが軌道上・・・・・・宇宙空間を示しているのはみんな分かったと思う。



「なんでも二つの月の魔力を受け取れる位置まで到達した時に、性能の全てを発揮するそうなんです」

≪地表への精密な大規模爆撃を可能とし、ゆりかご本体も強固な防御フィールドを発動。
そうなってしまうと、大抵の攻撃は一切通らなくなります。その上≫

「まだ・・・・・・なにか?」

≪ここからがチート性能の本領発揮です。これ、次元航行空間での戦闘も可能だそうです≫

「「はぁっ!?」」





本来次元空間で艦船がドンパチっていうのは出来ない。いや、普通はしようとは思わない。

各世界は次元空間という海に浮いている島だ。その海が荒れれば、当然島は津波やら災害に遭う。

だから世界を守る意味でも絶対にやらない。現在製造されている艦船の多くもそうだ。



基本的にはそんな海でどんぱちなんて思考から外してる。



でもこれはそれを可能としている。これだけでも十分怖い。





「武装がほぼ丸々使えるとするなら・・・・・・これ一隻で現在の本局の次元航行艦隊と対等以上に渡り合えると思います」



なお、今ユーノ先生は『使えるとするなら』というとても柔らかい表現をした。でも実際問題使えるでしょ。

そうじゃなければこれを持ち出す理由が全く分からない。機能や能力はほぼ全て使えると見ていい。・・・・・・ヴィヴィオが向こうに居れば。



「・・・・・・ユーノ先生、ぶっちゃけ聖王とかってバカでしょ。なんでこんなバカ兵器を作ったんですか」

「それは私も同感です。こんなの、いくらなんでもおかしいですって」



あ、ティアナと意見が合った。なんだろう、つい顔を見合わせてしまった。



「まぁ統一戦争に勝つためだろうね。あとは他の戦船を制圧する意味もあったのかも」



ユーノ先生も、同感と言いたいような顔をして、苦笑いを浮かべる。

・・・・・・まぁそれしかないよね。統一戦争って、相当な泥試合だったらしいし。



「もちろんそのために聖王の血筋を持つ人間にしか動かせないようになってるんだ。
ただ、それでもあんまりな性能だからミッドに封印したって書いてるけど」

「書いてたよね。だけどこれはありえないよ。あぁもう、私達の時代に迷惑かけないで欲しいんだけど」



フェイトの言う通りだ。いくらなんでも、これはバカ過ぎだから。てーかアレですよアレ。

封印せずに、壊して欲しかった。おかげで今この現状だもの。フェイトじゃなくても、言いたくなる。



「そもそも破壊するという考えはなかったのかしら。
私の住んでる地球だったらこんなの、あるだけでブーイング対象よ?」

「なかったと思うですよ? 本当に強い武力というのは、持っているだけでも充分な効果になるのです。
つまり聖王家はゆりかごという兵器を『持って』いたかったのですよ」



リインの言っているのは抑止力の話だね。地球でも核兵器保有はそういう側面があるからやってる事だもの。

これも同じ。動かせなくてもいいし実際役に立たなくてもいいのよ。大事なのは持っている事。



「そういう威圧のため・・・・・・抑止力って言うのよね? そのためにこの兵器は破壊される事はなかった。
聖王っていう凄い人が使っていた兵器を持っている事が、一種のステータスにもなっていた」

「ですです。なにより今回みたいに動かす方法が全くないわけじゃないですし、場合によっては再利用するつもりだったと思います」

「なら、それはそれで許せないね。それなら聖王家はその度に『鍵』を作るつもりだった事になるよ。そんなの、絶対に良い事じゃないよ」

「・・・・・・あの、待ってください」



シャッハさんが戸惑い顔で、今自分が聞いた情報が信じられないと言わんばかりに呟いた。



「本当にこんなものが現存して・・・・・・動くと言うのですか?
古代ベルカと言えば、最低でも300年以上前の話です」





信じられないから、だから僕達にこんな事を聞くのである。こんなの、無意味なのに。



まぁ大体それくらいだよね。1世代とか2世代前なんて話じゃない。



300年ってそれだけの時間なのよ? 孫の孫くらい生まれてても、おかしくない。





「それになによりミッドに封印していると言うのなら、なぜこのような巨大なものが今の今まで発見されなかったんですか。
ベルカ聖王家はとっくの昔に滅びていますし、ますこれを隠そうとする人間が存在しない事になります」





シャッハさんの疑問は・・・・・・多分一つの希望にすがりついたもの。

こんなものは存在せず、そして動かない。そんな願いがその根底にある。

でも残念だけどそれは無い。真実はコーヒーのようにほろ苦いものなのだ。



だから僕達はその疑問を壊す。そしてこれは真実だと通達する。





「・・・・・・ユーノ先生、確かロストロギアって、ゆりかごと同じ時代の物もあるのよね?
例えば前に私が拾ったブラックダイヤモンドとか。あれも数百年前の物って聞いてるけど」

「うん、そうだよ。あとは話だけは聞いてるかも知れないけど、今回出ているレリックはゆりかごと同じ時代のものだ」





ユーノ先生と歌唄の会話を聞いて、シャッハさんがハッとした顔になる。・・・・・・そう、レリックは動いている。

そうじゃなかったら六課なんて出来るはずないし、予言どうこうの話になったりなんてしない。

ううん、それを言ったら他のロストロギアだって相当年数を経ている骨董品だ。でも大半が動くシロモノばかり。



つまりロストロギアというオーバーテクノロジーに、時間の話をするのは基本的にはナンセンスなんだよ。

そしてもう一つの疑問。これにも残念ながらシャッハさんの疑問を壊す答えが既に存在していたりする。

それはなぜこのバカでかい戦艦が、今の今まで発見されなかったのかという事。





「この場合、やっぱり誰かが隠していた・・・・・・と考えるのが妥当だろうね。もちろん聖王家以外がだよ」



その答えを僕達が提示する前に、ヴェロッサさんが気づいた。

視線は目の前にあるジョーカーの映像に向けられたまま、言葉が続く。



「それもただ隠していたんじゃない。それじゃあすぐに見つかっちゃうから。
局はもちろん、聖王教会や他の組織にも見つからないように手を下していた」

≪でしょうね。恐らくそれほどの権力と行動力を持った人物がスカリエッティの後ろについていたんですよ。だからこそ≫

「今の今まで・・・・・・これは見つからなかった」





この場合はレジアス・ゲイズ中将・・・・・・だよね。でもそれだけなのかな。

あの人がスカリエッティみたいなイカれた犯罪者に、こんな物騒なもんを預けるとは思えない。

だってこれが切り札として出てくるって事は、やっぱりスカリエッティの手元にゆりかごはあるはずなのよ。



ちなみにここでこのブッチギリな戦艦が切り札だって言い切れるのには、もちろん理由がある。それはヴィヴィオの事。

僕達もここに来てから知ったんだけど、ヴィヴィオの遺伝子のコピー元・・・・・・どうやら件の聖王様らしい。

聖王教会(カリムさんの管轄外)が情報開示を渋ってたせいで、ここまで情報が出るのが遅れたけど確定事項。



情報開示を渋った理由もユーノ先生から聞いた。その原因はある一つの不祥事。





「というかシャッハさん、ヴィヴィオの出自の事聞いてますよね? その原因も」

「あ・・・・・・えぇ。あぁ、でもだからなのですね。だからコレを持ち出して来たと。
なんというか、非常に申し訳ないです。これは完全に聖王教会の不始末ですし」





シャッハさんが非常に申し訳なさそうになるのにも、当然理由がある。

どうも聖王の遺伝子・・・・・・血が付いた遺品があったそうなんだけど、それを司祭がどこかに流したそうなの。

聖王関係の遺品は発見されているものに限りだけど、全て聖王教会の方で厳しく管理している。



その中にはロストロギアの類だったり、本当に身の回りで使われていたようなものだったりと様々。

今回の問題品である『聖骸布』はどちらかと言うと後者に当たる物で、ロストロギアの類ではないの。

でも稀代の英雄に関係する貴重な遺品であり、歴史的資料である事は変わらない。



だからこそ聖王の遺品の一つとして、聖王教会の方で厳しく管理されていた。

ただ管理を担当していた司祭が聖骸布を持ち出してどこかへ流して、直後に死んでしまったそうなの。

結果的に聖骸布は消失。ほうぼうを探したそうだけど、どこへ行ったかも分からなかった。



その件は幼い頃から聖王教会に関わっていたカリムさんやシャッハさんも知っていたらしい。

でも二人もヴィヴィオのコピー元が聖王様だとはこの段階まで知らなかったんだよ。

ここは遺伝子検査した時に教会のスタッフが、ヴィヴィオの『製作』にこの聖骸布が使われたと気づいたから。



聖骸布が使われたとなると、当然管理していた聖王教会の責任が問われる。だから・・・・・・って事。

それでヴィヴィオをさらおうとするために隊舎襲撃したのもそこが理由だよ。今言ったように、ゆりかごは聖王にしか動かせない。

その辺りはDNAレベルでの認証が必要とか。だからヴィヴィオをゆりかごの鍵として扱おうとしている。



本当にヴィヴィオをデンライナーに乗せて正解だった。もしさらわれてたら・・・・・・これがミッドの空を飛んでたわけだもの。





「ねぇフェイト、レジアス中将ってこの事知ってたのかな」

「ゆりかごの事? まぁ・・・・・・レジアス中将が黒幕なら知っててもおかしくはないよね。
だって隠すにしても、そこを抜いてしまったらどうしようもないわけじゃない?」

「普通はそうなるんだろうけど・・・・・・でもコレをスカリエッティに預けるかな。
現に聖骸布の事だって、こうなるとかなりキナ臭くなってくるし」

「・・・・・・うん、私もそこは疑問。というか、私だったら絶対スカリエッティは頼らないよ」





なんだよなぁ。知ってたなら、さっきのようにするか自分達で確保した上で使えるようにすると思う。

例えばゆりかごの能力を、ミッド防衛のために使いたかったとするよ?

だとしてもいくらなんでもこれは犯罪者任せにするには、ヤバ過ぎでしょ。



まぁ実際に持ち出そうとしたら、確実に色んなところから止められるレベルだろうけど。



これは一種の制圧兵器。こんなものがある下でのんびり平和になんて過ごせるわけがない。





「なら・・・・・・もしかしたらレジアス中将は、コレの存在を知らなかったのかも」

「フェイト執務官、どういう事ですか?」

「中将は完全に利用されただけって事です。そう考えれば一応納得は出来ます。
いくらなんでもこれを中将の権限で、他の組織や色んな人達に気づかれずは無茶過ぎるかなと」

「そうだね、多分それで正解だ。・・・・・・あーシャッハ、ようするに更に上に誰か居る可能性があるって事だよ。
レジアス中将よりも高い権力を持った人間がスカリエッティと繋がっている。そしてその人物がコレを隠した」



ヴェロッサさんが口元に手を当て、考えるような仕草をしつつそう口にする。

・・・・・・レジアス中将より高い権力を持った人間って、それほど数が多くないと思うんだけど。



≪そうなるとレジアス中将がどういう形でこの件に絡んでいるかが気になりますね。
レジアス中将も利用される立場なのか。もしくは全く関係がないのか≫

「ですがそういう事が出来る立場となると限られてきますね。例えば伝説の三提督。あとは」

「最高評議会・・・・・・とかだね」





最高評議会。管理局発足当時から、世界平和のために貢献したって言う偉い人。

なおミゼットさん達よりも一応権限は上。現状の管理局ではトップの存在。

一応僕も名前だけは知ってるけど、確か会議とかにもほとんど出席しないのよ。



で、上から神様気取りで管理局の運営を見守ってるらしいけど。





「誰にしてもゆりかごの存在を隠していたのは、その上の人間の仕業と見て間違いないという事ですね。
ではこの件は内乱も同じではないですか。それではスカリエッティは局側の人間という事になりますよ?」

「そうなっちゃいますよね。それだけでなく、局はずっと・・・・・・ずっと違法行為を続けていた。本当になんでこんな」



フェイトの表情が曇って、悔しげに拳を握り締めていた。僕はそっと左の拳を包むように握り締める。

それでフェイトはハッとした顔をして、何も言わずにその拳を開いて僕の手を握り締めた。あと、表情も柔らかくなった。



「まぁその辺りはまた調べておくとして・・・・・・とにかくゆりかごの所在地だね。
アジトの近くだとは思うんだけど、状況を考えるにヴィヴィオが居ればすぐに動く状態にはなっている」

「突入隊の編成、少し練り直す必要がありそうですね。それに行動も本当に気をつけないと」

「こうなるとスカリエッティとその関係者は、この件についての生き証人になります。
絶対に生きたまま確保しないと。下手をしたら・・・・・・このままもみ消される可能性もある」



そしてヴェロッサさんがゆりかごの映像から、シャッハさんの方へと向き直る。



「シャッハ、僕達はこのデータを持ってすぐにカリムと予言解読チームのところに。
ヴィヴィオが無事とは言え、ゆりかごが動かせないという保証はどこにもない」

「つまりその・・・・・・ヴィヴィオのスペアというか、船を動かすためのキーが他にあると?」

「可能性としては低いだろうけど、それでもそこは警戒していた方がいい」





あー、確かにそれはなぁ。多分可能性は低い。だってそれがあるなら、隊舎を襲う必要ないわけだしさ。

いきなりこっちが対処出来ないうちにゆりかご飛ばして、軌道上に上がればいいだけだもの。

でもスカリエッティ達の身の安全の確保の意味も含めて、脳天気に安心しているわけにもいかない。



ここはみんなして早急に動いて、残っている一味連中と接触して真実を確かめる必要がある。

皮肉な事に状況そのものがシグナムさんの発言を全て否定する形で動いてきている。

僕達にまず必要なのは対話。その上でこの混迷とした謎の中にある真実を知る事なんだから。





「心得ました。あとは準備も急がせましょう。もう既に向こうの居場所は分かっているのですから」

「なら僕達はもう少しゆりかごの資料が無いか調べてみます。あとは一応六課への連絡も」

「ユーノ先生、よろしくお願いします」



ゆりかご・・・・・・か。ネーミング、間違えてない?

これはゆりかごとかじゃなくて箱舟でしょ。アレだよ、ノアの何たらとかさ。



「それでティアナはどうする?」

「付き合うわよ。てーか言わなかった? 今度は私が力になるって」

「・・・・・・左様で」

「左様よ。それで」



ティアナが僕の事・・・・・・ううん、フェイトとリインと歌唄の事もマジマジと見る。それで軽く息を吐いた。



「強敵揃いだけど・・・・・・負けるつもりないから。てゆうか、このメンバーで居るの居心地良いから一応認めるわよ」

「へ?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



地上本部襲撃から今日で二日目。まだまだミッド地上は慌ただしい。

テレビでは連日このニュースの報道がされて、あっちこっちの局で特集が組まれとる。

おかげで楽しみにしてたアニメは軒並み中止。気晴らしする事も出来んわ。





・・・・・・あ、でも一局だけはちゃうな。その局はいわゆる『ミッドのテレ東』って言われてるとこやから。

とにかく地上本部の宿泊施設の一室でそんな特集を見ながらどうしたもんかと考えてると、クロノ君から連絡が来た。

部屋に持ち込んで食べてたご飯を一旦置いて、うちはクロノ君からの通信を繋ぐ。





それで出てきた話は、えぇ報告と悪い報告がごちゃ混ぜでマーブル色になっとるようなものやった。





テーブルに腰かけながら頭がどんどん痛くなるのが分かった。アレや、今回の件が終わったらうちは長期休暇取るわ。










「・・・・・・ゆりかごかぁ。で、早急に突入隊を編成言う感じなんよな」

『あぁ。幸いな事にアジトの居場所は大体絞れているからな。上手くいけばそのまま拘束で詰みだ。
ただ今回は『内通者』の事もあるので、突入部隊には局関係者は入れない事にしている』

「つまり・・・・・・聖王教会だけでか」

『それも騎士カリムとシスター・シャッハの信頼出来る騎士だけで編成する。
まぁ後々問題になる可能性もあるが、電撃的にやらなければ意味がない』





まぁそうやろうなぁ。突入作戦の目的は、別に賊の制圧だけとちゃうもん。

重要参考人足るスカリエッティの身の安全の確保も込みなワケやし。

なんつうか、いつぞやのヴェートルの時と同じ感じになるってどういう事やろ。



管理局、マジで役立たず組織になりつつあるんかなぁ。うちはつい表情をセンブリ茶並みに苦くしてまう。





『早やければ明日の早朝には・・・・・・だな。さすがに今日中は無理らしい』

「まぁそれはなぁ。で、クロノ君・・・・・・そうするとうちらは」

『すまないが動かせない。君達が下手に準備をしていると目立つからな。
恭文達にもぎりぎりまで動かないようにと言ってある。一応六課関係者だしな』

「その方がえぇよな。特に恭文とフェイトちゃんはゼスト・グランガイツと接触してもうてるし」



つまりアレよ。うちらが『内通者』に目をつけられてるから、そのせいでって感じなんよ。

・・・・・・部隊が全滅して、一局員として動こう思うても無理とは。うちはどうも、何につけても遅過ぎるわ。



『ただ、六課の立場が悪くなった事で好転した部分もあるんだ』

「・・・・・・はい?」

『まずは召喚師対策。真龍クラスの出現も考えて、専門チームを組むそうだ。
ここの辺りは前々からミゼット提督達が動いてくれていたおかげだな。つまり六課とは関係なく』

「表での動き方でなんとかしとると」



クロノ君が困ったように頷いたのを見て、うちも同じ表情になってもうた。

いや、なんつうか・・・・・・それやったらうちらなんやろうなーと考えてもうて。



『さすがにゆりかごが出てきてしまっては縄張りどうこうを言っている場合じゃないからな。
なにより問題だったレジアス中将に疑いがかかっている。配慮する理由もないという事らしい』

「また現金な」



でも確かにミッド地上への介入が無理やったんは、レジアス中将が居たからこそってのがあったしなぁ。

シンパ達がうるさいやろうけど、緊急時の事を考えたらなにもせんわけにはいかんやろ。



「・・・・・・あ、ならゆりかごなりガジェット対策とかも」

『出来る範囲では行うそうだ。教導隊の面々も引っ張り出した上で早急に準備中らしい』

「そっかぁ。でもアレやな、この組織も何気に本気出せるんやな」

『まぁ本来はこれが正しい形なんだ。六課もそうだが去年で言うところのGPOのような部隊にも頼らない。
組織としてその数と組織力を活用して事態に当たる。これが警備組織の基本だ』



でもそれが出来んかったのは、まぁどっかでそういうのに本気出してなかったんやろ。

それがこの組織の問題であり、そこを補うのが六課・・・・・・やったんやけどなぁ。



「そう言えば例のあむちゃん達による説得はどうなっとるん? やっぱ難航しとるんか」

『実はそこも聞いている。それが・・・・・・思ったよりも上手くいっているそうなんだ。
とりあえず喧嘩腰にならずに話をする段階までは進められたらしい』

「はぁっ!? なんでよっ! だって連中相当強情やて」



そうやそうや、仮にスカリエッティが謀殺される可能性を提示しても言う事聞くとは思うてなかったんに。



『彼女達の中にもしゅごキャラが見る事が出来る子が、何人か居たそうなんだ。つまり橋渡し役になっているワケだな』

「いやいや、どうしてよっ! だってしゅごキャラって同じ宿主か霊感ないと見えんって聞いてるんにっ!!」

『そうだ。だが見える条件はまだある。・・・・・・生まれて間もない赤子のような存在は見えるんだ。
まだこころのたまご・・・・・・『なりたい自分』や夢が生まれていないような子どもはな』



赤子・・・・・・いや、待って。生まれて間もないってアレか、つまりそういう造られてからとか。



『実際現在幼稚園児のあむの妹は、その条件に当てはまるためにしゅごキャラが見えているらしい。
彼女達の場合生まれてからまだ数年という子も居るらしくて、その関係で若年層は全員見えるとか』

「そらまた・・・・・・もうなんでもありやな」



それやったらうちにも見えてえぇと思うて、ついため息を吐いてまう。

そやけどそんなうちをクロノ君はどこか楽しげに微笑みつつ見るだけだった。



『そうでもないさ。生まれて間もなく、世の中にあるありとあらゆるものを曇りなく見れるという事だろう。
だが逆に言えば、そんな存在に対して先日のような攻撃行動をさせてもいるんだ』

「・・・・・・うちら局員の罪は重いな」

『全くだ』



クロノ君も画面の中で頷くんは、今回の事件の原因が下手すると局のトップにまで及ぶから。

スカリエッティが悪いし償わなアカン罪があるのも事実だけど、それが全部やないのは忘れたらアカンわ。



「まぁ話は分かったわ。それで説得が思いの他進んだんやろ?」

『そうらしい。僕には未だに見えていないんだが、しゅごキャラの面々は相当に強烈キャラだからな。
きっとそのキャラを活かして、相手の毒気が完全に抜けるような説得をしてくれたんだろう』

「そっか。でもまだガチに確信に触れる感じではないんよな」

『改めての自己紹介としゅごキャラの事、あとは彼女達の事をちらほら・・・・・・だな。
もしかすると説得が実を結ぶ前に、アジトの居場所が分かる可能性もある。だが』

「ムダではないよな。少なくともまた自殺されるような事もなくなるやろうし」





ようするに後々の更生・・・・・・・まぁ局がコレでそう言うのも非常に辛いけどな。

とにかくその子達が将来的に今とは違う道を進みたいと考えるキッカケになるかも知れん。

もちろん説得されたフリをして情報を引き出して、その上で反乱ってのも考えられる。



でもここの辺りはカリムとシスター・シャッハも承知しとるやろ。おそらくはあの子達もや。



本当に注意した上で話を進めて欲しいなぁと、うちは身勝手にも思ったりした。





「ならどうにかしてその子達にもお礼せんとアカンなぁ。あ、でもどないしよう」



うち精霊も妖精もしゅごキャラも見えんのに。手ぇ合わせて拝めば・・・・・・むむむ、難題やなぁ。



『そういう時はお菓子を持っていくといい。全員普通の人間には見えないが、食生活は僕達と変わらない』

「あ、そうなん? ならそっち方向にしとくわ」



うちには見えない夢の妖精達の事を考えて、少しだけ気分が軽くなった。

ただ、ここからまた重くなるのは明白やった。



『それではやて、実は報告しておかなければならない話題がもう一つある』



クロノ君がこう言い出した時、また一気に重い表情になったのでそれを痛感してもうた。



『実は・・・・・・昨日から』

「シグナムと連絡が取れない」



続く言葉を言い切られた画面の中のクロノ君が、驚いたように目を見開いた。



『そうだが・・・・・・はやて、知ってたのか』

「知ってて当然やろ。通信関係も全部切れてて、今の今まで姿表してないんやもん。
昨日もなのはちゃんのお見舞い行こう思うたら、当人から通信かかってきてなぁ。めっちゃ大騒ぎよ?」



実はオーリス三佐と話した後、ちょお遅いけど顔見に行こうと思うてなぁ。そうしたらそれやろ?

慌ててシグナムに通信かけても連絡も一切取れないし、うちマジでビビってもうたし。



『そうか。ではわざわざ言う必要も・・・・・・待てはやて。なぜそこでなのはの話が出る』

「そんなんなのはちゃんに部隊員達の仇討ちしようって声かけたからに決まっとるやろ。
でもなのはちゃんはそれに首振って大丈夫やったんよ。ここの辺りはヴィヴィオが無事なせいやな」

『なら・・・・・・本当に恭文様々だな』

「そやなぁ。下手したら凄い事になってたで」





確かにうちやフェイトちゃん達を見限るような事は言うた。でもそれでシグナムが最後まで傍観するやろうか。

味方傷つけられて、今までの蓄積もそれに拍車をかけて完全にとち狂っとるのにや。

当然ながら答えはノーや。だから画面の中のクロノ君も瞳を閉じて唸り出してもうたわけよ。



この場合失踪した理由の中で一番想像出来るんは・・・・・・まぁ、一つだけやろうなぁ。





『はやて、実は昨日の昼間、シグナムは僕に対して君の予想通りの打診をしてきた』

「そうか。で、断ってくれたんやろ?」

『あぁ。それで説得も試みたんだが、ダメだった。今のシグナムは返り討ちにされた部隊員と同じだ』

「敵を見つけて・・・・・・倒そうとしてる」





あのアホが音信不通になった理由はおそらく、ジェイル・スカリエッティへの復讐に走ったからや。

うちらがアレなもんやから、シグナムのアホがなのはちゃん抱き込もうとしてまでな。

ヴィヴィオの事とか持ち出したり、六課の現状を訴えて『自分達でやるしかない』とか言うたらしい。



でも、今のなのはちゃんには通用せんよ。なのはちゃん、完全にヴィヴィオのお母さんになってもうてるし。

そのヴィヴィオの無事が恭文によって確保されている以上、ぶっちゃけなのはちゃんがこの件に関わる理由そのものがないわ。

うん、局員としてはありえんわな。分隊長としてもありえんわな。でもな、それが今のなのはちゃんなんよ。



なのはちゃん、通信で『あの子を利用してたけど、それでも・・・・・・ホントのママになりたい』って言っててなぁ。

まぁもう職務意識どうこうは言わん事にしたわ。だってそんなん今更やもん。それよりも問題はシグナムや。

シグナムは自分の事を『六課最後の部隊員』と称したそうや。ならその部隊員として、シグナムはどういう行動に出る?



・・・・・・やっぱりスカリエッティのとこに突撃かなぁ。どっちにしても相当荒っぽい手を使う思うわ。





「クロノ君、あむちゃん達の事気をつけるようにカリム達に言うといてくれるか?
・・・・・・状況的にしゃあなかったとは言え、シグナムがしゅごキャラの事聞いてるんよ」

『もう騎士カリム達に伝えてある。・・・・・・あむ達を利用されたくなければ手勢を貸せと脅迫してきたからな』



軽く舌打ちして、あのバカ捕まえたら殴ったろうとこころに決めた。てーかどんだけ命知らずなんよ。

あむちゃん達利用するような事になったら、マジ恭文キレてなにするか分からん言うに。



「シグナム、完全にレアスキルやって決めつけてたんよ」

『知っている』

「それで今の状況を考えたら、なにするか分かったもんちゃうな。あむちゃん達にも話してた方がえぇわ」



そこまで性根腐ってない事を祈るわ。それやったらマジスカリエッティと同類やし。まぁ自覚ないんやろうな。

シグナムは部隊員が派手に傷を負った事で完全に糸がキレとる。その切れ具合だけなら烈火の将や。



「あぁもう、ホンママジ頭痛いし。なんでここまでゴタゴタするんよ。・・・・・・獅子身中の虫ってやつか?」

『いや、違うな。おそらくだが・・・・・・シグナムはこころにハテナが付いたのかも知れない。
だから夢を叶えるために、味方を作るために、周囲の人間を自分の望み通りの形に変えようとしている』

「ハテナ?」

『あぁ、ハテナだ。もしそうならはやて・・・・・・シグナムは一筋縄では止まらないぞ』



クロノ君がホンマに困った顔して、画面の中からうちを見る。

でもうちは・・・・・・なんでそこまで重い言葉になるのかがよう分からんかった。



『今のシグナムが六課をその意義そのものから守るという夢に取り憑かれているとしたら、本当に簡単じゃない。
シグナムはそのためになら周囲にどんな無茶ぶりでもする。それを当然ともする。ハテナが付くという事は、そういう事なんだ』










・・・・・・その後、こころのたまごにハテナが付く事がどんなに恐ろしい事かを嫌になるくらいに教えてもらった。

それで今のシグナムは、もしスカリエッティ止めても六課が誰にも認められなかったら局すら壊しかねん勢いやと分かった。

シグナムの今の目的はいくつかあるけど、まず一つはみんなの仇討ち。次は六課の威信回復。





それで最後に・・・・・・そのためにスカリエッティを討つ事が絶対必要やとうちらに認めさせる事。

つまり今の自分の考えこそがうちらの砕けた夢を守るための絶対手段と突きつけるつもりなんよ。

そしてそれを否定する人間は、おそらく誰であろうと鉄拳制裁や。現にそれをフェイトちゃんにやろうとしとる。





同じく認められなかったクロノ君に対してもあむちゃん達の事を持ち出した上で協力を強制しようとした。





アカン、これはマジで止めないと・・・・・・このままエスカレートしたら、どこぞの暴君か独裁者みたいになるで。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・旧暦の時代、バラバラだった世界を平定したのは、最高評議会の三人』





まだ夜が明けきらない早朝、僕と母さんは通信越しにある人と話していた。

目の前に画面に映る薄い青色の髪を後ろで結わえた妙齢の女性は、ミゼット提督。

六課の非公式の後見人で、伝説の三提督だ。なお、原因は実に簡単。



サリエルさんが送ってきた、今回の事件の真相を記したデータ達だ。

どうも今サリエルさんは、その最高評議会の面々のところに居るらしい。

それでその面々が今回の事件の黒幕という事を僕達に教えてくれた。



ついでにスカリエッティのアジトの場所もだ。・・・・・・本当にあの人は何をしているんだろうか。





『現役を引いてからは私達や時空管理局ってシステムに世界を任せ、評議会制を作った』

『だけどこのデータ通りであれば・・・・・・その功労者が、今回の事件の黒幕になります』

『そうなんだよねぇ。というか、ヘイハチの弟子はあの子もそうだけど、みんな無茶するねぇ』



ミゼット提督が呆れてるとも感心しているとも言える顔で笑う。それを見て僕と母さんはまぁ・・・・・・苦笑いだ。



『・・・・・・一応、止めたんですよ? サリエルさん達は現役を引いている方々ですし』

『あぁ、分かってるよ。でも聞かなかったんだろう?』

「その通りです」

『まぁそこはいいさ。・・・・・・それでレジィ坊や』



僕と母さんが首を傾げてていると、ミゼット提督は気づいたように笑って訂正する。



『レジアス中将の事だよ。結構前から知ってる子だからねぇ。・・・・・・まぁ、あの子もあれだよ?
時々やり方が乱暴ではあったけど、それでもミッド地上の平和を守ってきた功労者さ』

「そうですね、そこは間違いないと思います。僕も常々見習うべき点は多いと考えていました」

『あのハングリーさだけで言うなら、私もさ。だからこそ』

「信じられないんですね」



ミゼット提督は沈痛な面持ちで頷いた。どうやら本当にショックを受けているらしい。

ここは恭文と同じだな。あの人の牽引力というかカリスマ性は、本当に見習わないといけない。



『そこは最高評議会に関してもだよ。正直信じたくはないけど・・・・・・事実なんだよねぇ』

「間違いなくそうでしょう。そしてジェイル・スカリエッティさえもその手ごまです」

『スカリエッティは最高評議会が生み出した人工生命体。
そしてそのコードネームは・・・・・・アンリミテッド・デザイア』





意味は『無限の欲望』。というより、そういう調整を誕生段階から受けているらしい。

そうして科学的な項目・・・・・・特に生命技術関連に対して強い興味を刷り込まれている。

まさしく無限の欲望と言うべき純粋な願いが、彼の中にあるんだ。



そんな彼を生み出したのは恐らく、管理局のために色々な技術を開発させるためだな。

自分の意志でならば研究の効率が落ちる心配もない。彼は生まれながらにして解けない鎖を持っていた。

つまりスカリエッティは最高評議会の・・・・・・管理局の人形として、飼い犬として生み出された。



なんというかやり切れないな。決してスカリエッティの行動を認めるつもりなどはない。

だが、僕達の身内が今回の一連の状況を引き起こしたのは事実だ。

これはフェイトでなくてもダメージを受ける。現に僕と母さんはこのデータを見てかなりキツい。





『無限の欲望ねぇ。なんというか・・・・・・まさしく、その通りなネーミングね』

「そうですね、現に欲望のままに現状を引き起こしていますし。
ですが最高評議会はこうまでして、世界を守りたかったんでしょうか」

『そうだろうねぇ。。でも、決して許される事ではない。そこは事実だよ。
その責はしっかりと払って・・・・・・いいや。もう、払わされてるんだろうね』

「恐らくは」



・・・・・・不幸はたった一つ、あの方の弟子を敵に回したことだ。あの遺伝子を縛る鎖など、どの世界だろうと存在しない。

よし、僕は気をつけよう。人の振り見て我が振り直せだ。だがこれは後処理が大変だぞ? 結局内乱とさほど変わりないじゃないか。



『でもヘイハチさんのお弟子さんは・・・・・・ぶっ飛んだ事をするわね。これ、どう考えても完全な違法捜査よ』



母さん、今更それを言うんですか? というより、それを言えば恭文もそうでしょう。



『リンディ提督、これくらいならまだヘイハチには負けるよ。
アイツのバカと無茶苦茶に比べたらまだまだ可愛いもんさ』

『・・・・・・そ、そうですか』





なんでなんでしょうか。あの方でもこうするのが、目に浮かびますよ。

・・・・・・僕もお二人と酒を飲み交わした事がある。その印象はまさしくあの方の弟子だった。

だが・・・・・・美味く酒を飲みつつ、色々と話が出来たのはいい思い出だ。



僕個人で言うなら、ヒロリスさんもサリエルさんも好きな人間と言える。そこを思い出して、つい頬が緩んでしまう。





「・・・・・・それで、どうします?」



そんな表情の変化は一旦仕舞った上で、この素晴らしいデータはどうしたものかと・・・・・・画面の中の二人を見た。



『どうするもなにも、出来る範囲で公表するしかないでしょ。そうしないと間違いなく市民にリークするわよ?』



そうでしょうね、PSでそう書かれていますから。しかし文面の一番最初に『PS』が付いた報告書なんて、僕は初めて見た。



『とにかく対処の方向は一つだけ。公表して、絶対に同じ事を繰り返さない。これだけよ』

『そうだね。それで本局の方だけど』

「ゆりかごの存在が明らかになって、大騒ぎですか」



ミゼット提督は少し困ったように頷いた。いや、実際困っているんだろう。



『あぁ。本当に今更だけどね。いや、早め早めに準備を進めておいてもこれとは呆れたよ』



仕方あるまい。予言の事を知っていたとしても、これはありえない。いくらなんでもぶっ飛び過ぎだ。

幸いな事はゆりかごが現状で動く可能性が低い事だけ。ただ召喚師関係の事もあるから油断は出来ないんだが。



『ただ、レティやミゼット提督達が取りまとめてくれてるから大きな混乱は無いわ。
遅延無くいつでも増援は出せそう。そこは心配しないでいいわ。あとは』

「やはり、ゆりかごですね」

『そうなるわね』



ゆりかごはヴィヴィオという鍵がなければ動かない。だが、鍵が一つだけとは限らない。

代替案のようなものを出している可能性もあるので、油断出来ないからこそ今までの会話だったりする。



『でもなんというか』

「どうしました」

『・・・・・・私、やっぱり色々間違ってたのかしら。ううん、間違ってるわね。
こういうフィルターというか思い込みが、あの子に距離を取られちゃう原因だろうし』

「はい?」

『恭文君の事よ。サリエルさんの事あれこれ話してたら、自然と思い出しちゃって』



母さんはそう言って大きく息を吐いて反省顔をする。



『やっぱり私、もうちょっと肩の力を抜いた方が良いみたいね。
ねぇクロノ、突然だけど再婚ってアリだと思う? お父さんは年下になるけど』

「母さん、ミゼット提督の前でいきなり何の話をしてるんですかっ! あとその話は聞きたくないのでやめてくださいっ!!」

『いえね、やっぱりちゃんとあの子の事を知りたいなーと思ってて・・・・・・うん、まずはそこからね。
事件が片づいたらデートにでも誘ってみようかしら。それで手を繋いで・・・・・・あ、楽しくなってきたかも』

「だからやめてくれっ! さすがにそれは怖過ぎるんだっ!!」










極々たまに、母さんが分からない時がある。例えば今だ。まぁその、完璧なリラックスと集中は裏表とも言うしな。

母さん的にはやはりサリエルさんの行動が認められないのか、さっきからずっと苦い顔をしていた。

ただそういう部分がある事そのものが、最近の母さん的にはかなりの反省材料らしい。だから息を入れ替えたんだろう。





ミゼット提督もそういうのは分かったらしく、本当に優しく温かい目で表情を緩めた母さんを見ていた。





・・・・・・まぁ、それでも状況を考えて欲しいとは・・・・・・いや、去年のような暴走をされるよりマシか?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、運命の日は本当にあっけなくやってきた。あたし達みんなで行った説得は、何気に良い感じで進んでいたりする。

まずは事件の事とかも話しているけど、その前にあたし達の事やラン達の事を話してる感じ。

みんなの話を聞いてると、こう・・・・・・なんかずっとそのアジトに閉じこもってる感じっぽいんだよ。それもずっと。





だから全員外の世界に憧れみたいなものがあるし、表立って出られない今の状態にも不満がある。

だったらこんな事しなきゃ・・・・・・とも思うけど、管理局の上の人が悪い事してコレならあんまりそこも意味なかったり。

とにかくまた明日も少しずつ話してまだまだ硬い気持ちを解そうと考えながらみんなで寝ついた。





でもその・・・・・・なんというか、目が覚めたらあたしは両手両足を縛られた上で車に乗せられてました。










「・・・・・・ん・・・・・・んっ!?」





てーかこれ、猿轡っ!? ここが車の助手席だってのは分かるけど、これなにっ!!

よ、よし落ち着け。まず外の景色は明るいから、これは陽が昇ってるって事だよね。つまり外だよ。

それで車は走ってる感じがない。今現在停車中って感じになるのかな。



だけど窓の外の景色・・・・・・だめだ、ここからだと森しか見えない。



てゆうかラン達はどこ? だめだ、ラン達もどこにも居ない。ならコレは。





「目を覚ましたか」



そう硬い声であたしに話かけたのは、運転席に居る誰か。というか、ピンク色の女の人。



「安心しろ、私は蒼凪の友人だ。機動六課ライトニング分隊副隊長のシグナムだ」



シグナム・・・・・・シグナムっ!? それ、昨日カリムさんとシャッハさんから注意するようにって言われた人じゃんっ!!

六課の人で恭文の昔なじみだけど、六課で手柄をあげるために暴走してるとかなんとかってっ!!



「すまないがお前達の力を借りるぞ。これは蒼凪も了承している事だ」

「んーんー!!」



それは嘘だ。あたしは前もって話を聞いてたから知ってる。ううん、聞いてなくても知ってる。

確かに恭文は強引なとこあるし性格悪いけど、こんな事許すような奴じゃない。この人は嘘を言っている。



「お前達は蒼凪を助けに来たのだろう? だったら私を・・・・・・六課を助けろ。私達の夢を守れ。
そのために動くべきだ。お前達の力はそのためにあるものだと聞いている。だから自分達の使命を果たせ」





シグナムさんはあたしの方を見る。その目を見て、ずっともがいていたあたしは動きを止めてしまった。

その目はとても冷たくて、悲しくて・・・・・・・それで黒い感情で濁りきった目をしていたから。

あたしはこの目を知っている。もう1年近く前だけど、あたし達は全く同じ目をしている人達と何度も向き合った。



これ・・・・・・あぁ、そうだ。全く、ルルがまたバカやったわけじゃないのにコレってなにかな。





「まずはお前の仲間を呼び出さなくてはいけないな。全員揃って協力してもらわなければ」










そう言ってあの人はあたしが枕元に置いてあった携帯をなぜか左手から出して・・・・・・恭文、コレマジヤバいよ。





この人、完全に暴走してる。このままじゃホントになにするか分かったもんじゃない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ロッサ、どうですか?」



僕達の目の前にあるのは、何の変哲も無い洞窟の入り口。

だけど、僕達の目指すべき場所・・・・・・ではないんだよね。



「空き家みたいだね。うーん、この辺りだとは思うんだけどなぁ」

「居留守を使われているというのは」

「あー、それはありえるかもね」



まぁ朝早くからの来訪という事で、礼儀は弁えてないしね。

ちなみに僕達が探しているのは城。そしてそこの城の主の名は・・・・・・ジェイル・スカリエッティ。



「でもここに限っては外れだよ。居留守どころか鍵は開けっぱで出入り自由だもの」

「そうですか。ではここはクリアですね。・・・・・・しかしロッサ」

「何?」

「私はしばらく、のんびりハイキングをするのがトラウマになりそうです」



山間で見渡す限り木々しか存在しない世界。さっきも言ったように早朝なのにその中に僕とシャッハは居た。

それで困ったようにシャッハは周囲を見渡していた。辺りの風景は、本当にのどかで・・・・・・あ、鳥が鳴いた。



「確かにね。こんな場所にだもの。さすがにありえ」



言いかけたその時、甲高い着信音が鳴り響く。それに思わずシャッハと顔を見合わせてしまった。



「緊急通信・・・・・・ではありませんよね。というかロッサ、こんな時でも女性のお相手ですか? 多少は自重を望みますが」

「いや、これ・・・・・・カリムからだよ」



言いながら僕は右手で携帯を取り出して、操作した上で画面を展開。

僕達の目の前に広がった空間モニターに、焦ったカリムの顔が映る。



「騎士カリム、どうなされたのですか?」

「そうだよ。緊急連絡なら公用の回線を使えばいいのに」

『それがそうもいかないのっ! あむちゃんが・・・・・・あむちゃんがシグナムにさらわれたわっ!!』

「「はぁっ!?」」




















(第18話へ続く)




















あとがき



恭文「さてさて、ルルが居ないのになぞたま化してしまったシグナムさんがやってくれました。・・・・・・殺す」

リンディ(白)「恭文君、落ち着いて? あの、怖いから。ほら、まるで普段の私に向けられてる視線は怖いの」

恭文「気のせいでしょ。それで結局・・・・・・うん、ごめんねみんな。やっぱりStS・Remixのコピペが多いんだ。
そんな中昨日(2010年2月22日)の夜に購入したGジェネワールドをどっぷりやってた作者はバカだと思う蒼凪恭文と」



(毎度おなじみのフライング販売のお店です。現在、ダブルオークアンタとスサノオゲット。
というか、エクシアとアヘッド・サキガゲのベーシック鍛えたらそのまま開発で進めました。
でもスサノオの性能がヤバい。格闘重視にしてキャラ作成で作ったパイロット乗せたら無双しまくり。
格闘攻撃の射程が上がるスキルを付けたら射程1〜4で斬りまくる侍の完成です。ぶっちゃけダブルオークアンタより強い)



リンディ(白)「実はこのルートは『恭文君×フェイト+私+リインさん』というルートだと判明したのが嬉しいリンディ・ハラオウンです」

恭文「そうそう、そこにリンディさん加わって・・・・・・はぁっ!?」



(はぁっ!?)



恭文「いやいや、そんなルートじゃないでしょっ! むしろ『僕×フェイト+歌唄+ティアナ+リイン』になりそうだったしっ!!」

リンディ(白)「大丈夫、その間に私が入るから。ほら、A's・Remixのあなたを見習って」

恭文「見習えるかボケっ! てーかアレですか、とまかのベースだからこっちもハーレムなんかいっ!!」



(いや、もう・・・・・・もう熟女エンディングとか良いんじゃないかと)



恭文「作者落ち着けー! 作者がそういうのに心惹かれるのは知ってるけどそれはダメでしょっ!!」



(・・・・・・だってそういうのやりたかったんだもんっ! でも今まで必死で我慢してたのよっ!? 趣味出し過ぎだしっ!!
我慢するがあまりついつい黒くして内心ごめんなさい状態だったんだから、もういいじゃないかー! 僕は趣味に走るんだー!!)



恭文「あー、そうだよねっ! リンディさんくらいな感じがめっちゃ好みだもんねっ!!
恋愛感情とか抜きで純粋に素敵だなーって思うもんねっ! この変態がっ!!」



(うん、知ってるけど何かっ!? てーかお前に言われたくないわボケっ!!)



リンディ(白)「というわけであなた、これからよろしくお願いします」

恭文「よろしくされないからっ! てゆうかそれマジでやるってアウトでしょっ!!」

リンディ(白)「でもコレを逃したら本編で私があなたと結ばれるシーンはないと思うの。
今ここでいくしかないの。大丈夫、GMとまとだってそういう感じになってきて」

恭文「確かにそうだけどアレ僕じゃないしっ! アレジュンイチさんだしっ!!」



(StSの一つまとめVerより、ちょっと上気味のポニーテールリンディさんが至高だと思う。それで・・・・・・素敵だよねー)



恭文「それで作者も鼻息荒くするなっ! てーかこっちの会話に加わってっ!!」

リンディ(白)「恭文君、もちろんあなたの意志もあるから・・・・・・まずは話し合っていきたいの。
ううん、例えそういう関係にならなくても、改めてあなたと理解を深めていきたい。そのためにまず」

恭文「まず?」

リンディ(白)「フェイトにしてるみたいにハグと手を繋いで歩いて、添い寝して・・・・・・バストタッチね」

恭文「ハグと手を繋いで歩くのはtおもかく、添い寝とバストタッチは余計だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










(なぜ髪を下ろして纏めてしまったのかと思うのですよ。やっぱりあの躍動的なポニーが(以下省略)。
本日のED:UVER world『儚くも永久のカナシ』)




















恭文(A's・Remix)「・・・・・・本編の僕、苦労してるなぁ。確かにリンディさんが相当だしなぁ。
というか、作者の趣味? 今まで必死に抑えてた分がここでタガ外れちゃったから」

古鉄(A's・Remix)≪そう言えばあなたの筆おろし投票の結果を鑑みてですね≫

恭文(A's・Remix)「何? そんなバカな企画はもうやらないとか?」

古鉄(A's・Remix)≪リンディさんと初めての時間を過ごす小説書きたいって言ってましたね。
なんでも(うったわれるーものー♪)だそうです。そう言えばそれっぽいディスクが≫

恭文(A's・Remix)「よし、あのバカちょっと殴ってくるわっ! いくらなんでも調子乗り過ぎでしょっ!!
なにより結果鑑みてないよねっ! アレ1位あむだったじゃないのさっ!! リンディさん何位だったっ!?」

古鉄(A's・Remix)≪まぁアレですよ、頑張りましょうか。きっと今まで趣味を抑えるが余り黒くなってしまった分、凄い濃密なホワイトピンクに≫

恭文(A's・Remix)「やっぱアイツぶった斬るっ! それで趣味を抑える気持ちを思い出してもらおうかっ!!」










(おしまい)





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