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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第6話 『何も変えないよ。ううん、変えたくない。だって私の一番は・・・・・・あなただから』



今日も今日とて、本局は平和だ。そう、本局は。休憩時間を活用して、俺達は普通にあるものの鑑賞会をしている。

ちと局のデータベースにハッキングして、俺とヒロはリアルタイムで廃棄都市部の様子を見ていた。

その鑑賞会が終わった直後、普通にお茶なんか飲みつつ俺達は談笑していた。・・・・・・しかし凄かったな。





まず砲撃が六課所有のヘリにぶっ放されるだろ? で、それを高町教導官が防ぐ。

撃った奴と、観測手らしいのをハラオウン執務官が追い詰める。で、追い詰めたところで広域魔法をどがーん。

・・・・・・ここで一瞬、殺傷設定で撃てばよかったんじゃないかとか思ったのは、気のせいじゃない。





とにかく、そこから顔をしかめつつも脱出した二人を狙って、挟み込むように砲撃・・・・・・と。





うん、中々にいい腕だ。少々甘いところはあるが、それだってあくまでも『少々』だ。










「・・・・・・ね、普通に首とか落とせばよかったんじゃないかな」



まぁ、コイツみたいに空気を読むつもりのない奴を除いてだが。



≪姉御・・・・・・別にいいじゃねぇかよ。てか、普通に肉食った後にそういう話するか?≫

「大丈夫、私はスプラッタとか平気だから。死霊のはらわたとか見に行った後にホルモン食べられるよ?」

「俺は平気じゃないがな。お前みたいに鉄の神経してねぇし。てーかアレだ、お前それは女として終わってる」





しかし・・・・・・これはひどいな。いや、六課隊長陣じゃない。

敵のカードの切り方だ。一気に色んなもんを出して来やがった。

・・・・・・戦闘機人か。ギンガちゃんや六課に居る妹さんと同じく。



見えるだけでも美人揃いなだけに、惜しいな。敵じゃなければ口説きたいところだ。





≪主、私が思うにこの砲撃を撃ったおさげの女性など、蒼凪氏の好みではないでしょうか≫

「あぁ、ドンピシャだな。やっさんは髪が長くて大人っぽい女性が好みだから」

「ハラオウン執務官みたいにね」

≪姉御、そこは言ってやるな。・・・・・・で、サリ。俺達がこんなアウトな鑑賞会をしてる理由はなんだ?≫



アメイジアが分かりきっている事を聞く。なので、少しお手上げポーズを取りながら答えた。



「俺らがこのままだとやり合う連中の能力把握くらいは、しとくに越した事無いだろ。
いやいや、休憩時間中にどんぱちしてくれて助かったな。おかげで色々と分かった」

≪あぁ、そういう事か。・・・・・・てか、マジでどうなってんだ?
レリック事件自体は、4年近く進展してなかったってのによ≫

≪確かに・・・・・・ここに来て急激に事態が進展している。
スカリエッティがガジェットの製作者と判明したり、戦闘機人が出てきたり≫

≪そして姉御と俺が気になってる召喚師だ。いくらなんでも一気にカード出過ぎだろ≫





俺もそこはかなり気になってる。やっぱりここまでの状況になる理由が見つからないんだよ。

普通に考えるなら、それだけしてでもエンジンをかけたいとかか?

つまり・・・・・・何かが動きつつある。まだ俺らにはそれが見えていないだけの話だ。



てーか、そこを考えると六課という部隊も色々とおかしい。やっさんには報告したが、色々と裏がある。





「・・・・・・てかさ、地下でもどんぱちしてるんだよね?」

「あぁ、そういややってるな。そっちは映像回ってきてないから見れないが、問題ないだろ」

≪だが六課がアレなんだぞ? それでどうすんだよ≫

「知らん」

≪結局丸投げなのかよっ!!≫





あとは・・・・・・レジアス中将がどう動くかだな。実はこれを見ているのは、俺らだけじゃない。

ちょっと回線を調べたら、レジアス中将のラインにも映像が回ってた。

やっぱり六課の行動は色々と気になるらしい。いや、六課自体が気になる要素の塊だからか。



厄介な事にならないといいんだが。・・・・・・そんな事を考えたのがきっといけなかった。

だから通信の着信音が聞こえてきた。その相手を見ると、シャマル先生だった。

やっさんの現地妻1号で、本局の医務官。六課でも医務官として働いている女性。



俺らはやっさんの訓練を行う最初の段階で挨拶をさせてもらってる。

理由はやっさんの主治医だから。さすがにここはちゃんとしておきたかった。

ただ・・・・・・少し後悔した。だってシャマル先生、すっげーフラグ立ってるし。



『私が元々闇の書のプログラム? なにそれ、美味しいの?』と言わんばかりにやっさんLOVEだ。

普通に抱きつくし、普通に手を繋ぐし、普通に『押し倒して欲しいな』とか言う。

やっさんに吐かせたところ、添い寝やバストタッチに一緒にお風呂もオーケーらしい。というか、したとか。



俺らはそれを聞いて、泣いた。やっさんのフラグメイカーっぷりに泣いた。

だって元々この人は感情とかが無いプログラムだったんだぞ? それがあれですよ。

まぁここはいいか。シャマル先生はなんかすっげー幸せそうだし。



てか、めちゃくちゃ幸せそうだし。とにかく俺はポチっと通話ボタンを押して通信を繋ぐ。



画面に出てくるのは、もちろん白衣姿のお姉さん。そして背景は・・・・・・あれ、これ本局か?





『サリエルさん、ご無沙汰しています。・・・・・・あ、ヒロリスさんも』

「あー、いえいえ。シャマルさん、ご無沙汰してます。てか、今日はまたどうしたんですか?」

『すみません。私今、本局の方に居るんですけど・・・・・・すぐに来てもらえませんか?』



場所は分かる。てか、分かってた。だがすぐに来て欲しいという理由がわからなくて、俺はヒロと顔を見合わせる。



『恭文くんが六課での任務中に少し負傷してしまって、今治療中なんです』

「やっさんがっ!? あの、それでやっさんはっ!!」

『あ、大丈夫です。命に別状はありませんし、念のための精密検査ですから』

「いやいや、それ以前になんでアイツが六課にっ! アイツ部隊員じゃないですよねっ!!」



そこまで言って一つ思いついた。いや、その・・・・・・まさかとは思うんだが六課の連中、またやらかしたんじゃないだろうな。

だから自然と視線が厳しくなってたんだが、シャマルさんはそれに気づいて申し訳なさそうにした。



『実はその、六課の任務に繋がるようなものを恭文くんが発見したんです。
それで人手が足りなくて、報酬を出すと約束した上で協力をお願いして』

「あ、それでなんですか」

『えぇ。・・・・・・ただ、それだけじゃなくて、その』

「その?」

『現場で遭遇した被疑者を、殺害したんです』










その言葉が一瞬信じられなかった。だからヒロと二人でシャマル先生を見る。





シャマル先生は頷いた。出来れば冗談か何かであって欲しかったけど、それでもだ。





・・・・・・・・・・・・なんでそうなるっ!? てか、地下で一体何があったんだよっ!!




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と彼女達の崩壊の非日常


第6話 『何も変えないよ。ううん、変えたくない。だって私の一番は・・・・・・あなただから』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



シャマル先生から連絡をもらって、本局の医療施設に運ばれたやっさんに会いに行った。

というか、局長の制止を振り切り飛んで行った。後で当然のように叱られた。

それはもう30過ぎの俺らが子どもみたいに叱られたさ。それから俺達六人で色々と話。





そうして・・・・・・現在、時刻は夜の10時。ここは俺達以外誰も居ないオフィス。

そこでやっさんとアルトアイゼンからもらったデータを見て(シャマル先生の許可をもらった)色々と検証中。

やっさんは少々思考がアレなところもあるが、なんだかんだで約束は守ってくれる。





色んな意味で喜べない成り行きではあるが・・・・・・しっかりと、それも合法的に俺達に渡してくれた。





もちろんあの召喚師のデータだ。今日地下で出現したらしい。










「・・・・・・サリ」

「なんだ」

「やっさんも面の皮が厚くなったね。ヒカリ達も元気そうだったし」

「あぁ。だが・・・・・・マジで腹立つな」



話は聞いたが、普通に腹が立って腹が立ってしょうがないぞ。てーかおかしいだろ。

なんで連中は普通に仕事を捨ててやがんだ? 公僕の存在意義0になるだろうが。



「確かにね。やっさん、ちゃんと話そうとしたってのに」





前だったらきっと一人で突っ走ってたな。それが出来るようになったのがアイツの去年1年の成長だ。

それなのにコレで、ヒロもさすがにイライラしている。さっきから俺と同じく表情が険しい。

それで今俺らの目の前に立ち上がった空間モニターの画面に映ってるのは、アルトアイゼンが撮っていた戦闘映像。



アレだ、チートの権化だな。あいかわらずやっさんはこういうのと縁があるな。

もしかしたらアイツはもっとチートになるべきなのかも知れないとふと思った。

具体的には超絶能力で魔力はSSS級で武術はスプリガンの朧並みの達人にだ。



まぁそんなのはおそらく無理だと思いつつ・・・・・・やっぱそこ目指した方がいいんじゃ。せめて朧だよ朧。





「この陰険そうなおっちゃんの対処法とかって」

「俺でも殺す」





ここで『実際にやれるか』という考えがあるんだが、この調子な戦い方を続けているなら勝機はある。

てーかアレだ、コイツ能力の高さ故に調子乗りまくってるだろ。隙だらけでいつ攻撃しても全て食らってくれそうな雰囲気がある。

あとはやっさんから聞いたアレコレのせいで本気が出せなかったってところか?



それならやりようはいくらでもあるはずだ。まぁガチに本気出したらヤバいだろうが。





「お前はどうだ」

「同じくだね。てか、この子達が止めた理由が分かんない。
再生能力に馬鹿げた魔力量にやっさんと同じ能力・・・・・・ありえないでしょ」

≪やっぱボーイ、チートとかって縁あんだな。去年のアレも同じ感じだったろ≫

「あ、それは思ったわ。まぁアレらに比べたらこれはまだ良識的だよなぁ」

「ただそのせいでチート相手も慣れつつあるのがやっさんの不幸というかなんというか」





やっぱり今のご時勢ではやっさんみたいなのは異質らしい。チートに遭遇する率も含めてな。

話によると、ギンガちゃん以外にはこの手を取る事を頭ごなしに否定されたそうだ。

しかもついさっきまで部隊内の人間に不満持ちまくってた連中が。意気投合した上で気持ち悪かったとか。



まぁそういう内部事情は置いておくとして・・・・・・確かに時代は変わった。

力を守るためだけに使うなんて甘っちょろい理想を貫いても、持っていてもいい時代になった。

そうだな、創設当時に描いた局の理念を誰でも貫けるようにはなったのかも知れない。



だからこそ全員が見失っているんだろうか。その理念が、凄まじく綺麗事で簡単じゃないと。

俺らの時代はそういう理論そのものを持っていても貫く事が更に難しかった。

それは今みたいに『当たり前』の事ではなかった。ただ、それでも管理局はその理念を捨てなかった。



貫けなかった事を組織全体の敗北とし、反省して間違いとして正そうと努力を続けた。それが今までの組織の積み重ね。

確かにこの組織は問題が多いが、そういう姿勢を貫く事だけは止めなかった。そこだけは事実だ。

だからこそハラオウン執務官や高町教導官、クロノ提督やリンディ提督のような優秀な人員もその理念に共感した。



それは市民達も同じだ。信頼を得るってのはな、そういう事なんだ。普遍である事が大事なんだ。

共感した人間が当たり前じゃなかった理想を当たり前にしようと努力し、仲間と手を取り合って一つずつ貫いた。

そういう積み重ねをしてきた結果が、今の社会だ。非殺傷設定は完成と言うべき域に達した。



さっきも言ったが昨今の武装局員は当たり前のようにそれに頼る。それがあって当然のものだと思っている。

俺らが引退する前後辺りから管理局はようやくその段階まで辿りつけた。それはきっと喜ばしい事だ。

そうして10年後・・・・・・辿りついた結果がこの体たらくだよ。別にやっさんがこの子達と同じであっても、問題は無い。



てーか同じなんだよ。やっさんが『罪を数えろ』ってよく言うが、それと同じなんだよ。

非殺傷設定は、犯罪者に罪を数えさせる機会を作るためのものだ。

少なくとも管理局創設時はそういう趣旨だった。そのためにこの手段を取った。そのはずだった。



公僕として、治安維持を預かる警備組織として振るう力。それに非殺傷設定は必要且つ理想的なものだったんだ。

別に綺麗事のために使ってたわけじゃない。何度も世界の中で戦争や殺し合いがあって、もううんざりだった。

誰かが死んで、憎んで殺して・・・・・・また誰かが死んで憎んで殺して。そんな繰り返しを止めたくてこの理念に到達した。



だがその志が今の局員の一人一人に本当の意味でちゃんと伝わっているかは微妙だな。

少なくとも六課のフォワード陣には伝わっていないと思う。特にその理念以前に貫くべき事を分かっていない。

状況から聞いて、俺はそう考えてしまった。なんつうか・・・・・・しょうがないのかねぇ。



時代が変われば人も変わる。きっと理念さえもその意味合いを変える。

だから昔と同じじゃなくて良いと言えば、確かにそうなる。だがこれは・・・・・・どうなんだろうな。

このままの調子で進んでいって本当に管理局は最初の志を貫けるんだろうか。



正直俺には分からない。ロートル組な俺が言えた義理じゃないが、本当に分からないんだ。





「まぁ六課の方は大丈夫だろ。肝心のやっさんは部隊員でもなんでもないし。
シャマルさんや隊長陣もフォローはするだろ。しかし、よりにもよってコイツかよ」

「知ってるの?」

「スカリエッティには負けるが、そこそこ危ない奴だ。後で罪状見てみろ。
お夜食が食べたい気分が一気に冷め・・・・・・ないな。うん、お前は女捨ててるから大丈夫だわ」

「失礼な事言わないでくれる? 私はこんなに女らしいってのにさ」





シャマル先生がデータを見る事を認めてくれたのは、やっさんとリインちゃんの行動へのフォローのためだ。

二人は相当苦い顔をしていたが、要するに『あの場で逃がさず、殺す選択しかなかった』という立証をするため。

そうすりゃ問題に発展するのだけは避けられる。まぁ・・・・・・アレなんだよ。



さっき俺『部隊員じゃないから大丈夫』って言ったろ? でも六課の任務中に起こった事ではあるんだ。

だからコレがどういう飛び火がするか分からない部分がどうしてもある。

俺もヒロも今でこそこれだが昔はブイブイ言わせてたので、その辺りを協力して欲しいと頼まれた。



ただ実際にそういう結論を公式的に出すのは俺達ではなく、俺とヒロの知り合いで教導隊に居るレイオ・ガーランドという奴がやる。

てか、俺達がやっても意味がないだろ。やっぱりここは今実際に現場に出てる奴の意見が優先されるだろうし。

とにかく今すぐにレイオに検証データを送って、明日の朝一で六課にそのデータがレイオから六課に送られる。



レイオは高町教導官とも顔見知りらしいし、問題なく処理は済むだろ。残るもう一つの方は・・・・・・どうかな。





「でよ、お前の方はどうだ」



ヒロが一端あの男の画像を下げて、別の画像を出す。それは一人の女の子。

召喚獣を連れて使役している様子もあるから・・・・・・これでビンゴだろうな。



「正直、分かんない」



だから俺の予想通りにこんな答えを・・・・・・おーいっ!? 一体どういう事だよそれっ!!



「待て待てっ! お前、ここまで来て分かんないってありえないだろっ!! なんだよそれっ!!」

≪サリ、落ち着けって。姉御が最後にルーテシア・アルピーノと会ったの、1歳になるかならないかの時だぜ?≫

「・・・・・・あ、そっか。つまり分からないってそういう意味か」

「そうなんだよね。たださ、この召喚獣はやっぱガリューなのよ」





ヒロには一人の友達が居た。その名は、メガーヌ・アルピーノ。

8年前にある事件に巻き込まれて消息不明・・・・・・実質、死亡扱いを受けている女性。

そしてこの召喚獣や召喚師が使う術式は、メガーヌ・アルピーノのそれ。



ヒロがやっさんにデータを流して欲しいと頼んだのは、この召喚師がメガーヌだと思ったからだ。

普通にやってもヒロにデータが回ってくるはずがない。かと言って普通に協力を申し出ても断られる。

だって俺達ロートルだし。普通に考えてそんなの認めてくれるわけがない。



ただ、やっさんに相談する前に俺がハッキングという手も考えた。というか、試しにしてみた。

そうしたら六課隊舎のサーバーシステムのガードが、どこの国務機関だって言うくらいに厳重で用意周到。

侵入は不可能だと結論を出したのは、言うまでもないだろう。てゆうか、普通に俺は負けた。



俺達で勝手に調べられるんならやっさんに頼んだりしない。どっちにしろ、危ない橋を渡らせるわけだから。

・・・・・・ちくしょお、あのシステムに入れなかったのは悔しい。つーか、どこのバカだよ。

あんな無駄に構築に時間がかかりそうなシステム作った奴。ぜひともお目にかかって友達になりたいぞ。





「それに面影はある。・・・・・・多分、間違いない」

「そっか。しかしこうなると・・・・・・ヒロ」

「うん、そうだね。メガーヌが所属してた首都防衛隊が全滅した一件、そうとうキナ臭いよ。それで」










そうだ、それで・・・・・・スカリエッティが絡んでるのは確定。しかもそれだけじゃない。





どうやら俺達はメガーヌ・アルピーノの事がなくても、この一件に関わる定めだったらしい。こっちも今日の一件で確定だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



色んな事があったその日の夜。フェイトから・・・・・・通信がかかってきた。





なぜかうちに来てしまったシャマルさんとリインはお風呂中。僕は少し怖かったけど、通信を繋いだ。










『・・・・・・そっか、今は二人ともお風呂中なんだ』

「うん、さすがに僕が入るわけにはいかないしさ」

『確かにそうだね。それでティアナは?』

「今は寝てる。シャマルさんが来てびっくりしてたけど」

『まぁいきなりだもんね』



フェイトはなにも触れない。普通にお疲れ様と言ってから、軽い雑談をする。

だから僕は自分から、フェイトが通信をかけた本当の理由に触れた。



「ごめん」



ただ一言、唐突にそう言うだけでフェイトは分かったらしい。

表情が重くなったから。きっと・・・・・・傷つけてるよね。



『・・・・・・謝らなくていいよ。というより、謝ってもしょうがない』

「確かに、そうだね。・・・・・・うん、しょうがない。どうしようもないんだし。
なによりフェイトとの約束、ちゃんとした形では守れなかったしね」



あははは、これは本格的にフラグ消滅・・・・・・だよね。

そう、だよね。フェイトはスバル達と同じで優しいから、きっと・・・・・・ダメだよね。



『うん、そうだよ。もうどうしようもない。だから・・・・・・変わらないんだよ?』

「うん、変わらないよね。殺した事は、絶対に」

『違う、そっちじゃないよ。ヤスフミ、お願いだからちゃんと私の目を見て』



少しだけ、フェイトが怒ったような声を出す。だから僕は俯いていた瞳を上げる。

そこには悲しそうなフェイトの顔があった。それを見て・・・・・・胸が締めつけられる。



『・・・・・・ヤスフミ、好きだよ』



・・・・・・はいっ!? て、てゆうかあの・・・・・・いきなり何言い出すのさっ!!



『確かにヤスフミのした事はいけない事だと思う。というか・・・・・・多分ヤスフミはそれをちゃんと分かってる。
うん、分かってるよね。きっと、私よりもずっと。だからそこは何も言わない。でもこれだけ言いたいの。私はヤスフミが好き』

「好きって、あの・・・・・・その・・・・・・えっとっ!!」

『ヤスフミの事、大好きで、大事な男の子だと思ってる。変わらないのはそこなんだ』



一気に顔が真っ赤になる。というか、あの・・・・・・えっと、フェイトはきっと家族的な意味合いだと思う。

で、でも嬉しいよっ! だめ・・・・・・凄く泣きたくなるっ!!



『ヤスフミ、どうしたの? 顔赤いけど』

「だ、大丈夫。大丈夫だから気にしないで? でもフェイト・・・・・・いいの? だって僕」

『うん、スバル達の事振り切ったよね。それだけじゃなくて、リインも巻き込んだ。理由はどうあれチームメイトに攻撃もしちゃったし』



・・・・・・・・・・・・うん、そこだけは変わらない。僕も少し調子乗ってたのかな。ここも反省かも。



『でもだからってヤスフミが私との繋がりを切るべきとか諦めていいなんて、絶対に思わないよ。
・・・・・・ヤスフミ、ヤスフミはどう思ってる? お願い。話すの怖いかも知れないけど、聞かせて欲しいの』

「・・・・・・フェイト」

『私はちゃんとヤスフミの今の気持ちが知りたい。他の人はともかく、私は知らないままは嫌だ』



そこまで言ってフェイトは、頬を赤く染めておどけたように笑った。



『だって私の事さらって、キスしたりエッチしたりしてお嫁さんにしてくれるんでしょ?
それで私はいっぱいヤスフミのものになって・・・・・・私の全部はヤスフミに独り占めにされる』

「・・・・・・うん」

『そうなるとヤスフミは私の旦那様なんだよ? 私はヤスフミの事、いっぱい愛していきたい。
なのにちゃんとそこが分かってないと、奥さんとしては不安になるよ』



きっと僕の事元気づけようとしてくれてる。だから顔を真っ赤にして・・・・・・いっぱいふざけてくれる。

それが嬉しくて、僕はフェイトの笑顔に魅入られていた。



『だから旦那様、教えて・・・・・・くれるかな。私はあなたの奥さんだから・・・・・・ううん。
あなたの奥さんになっていきたいから、ちゃんと知りたい。あなたの事が知りたいの』



・・・・・・・・・・・・自然と、画面の中のフェイトに手を伸ばす。それで空間モニターの中のフェイトの頬にそっと触れる。

そのまま・・・・・・僕とスリープモードのアルトしか居ない部屋の中で、想いを吐き出す。



「フェイトが・・・・・・好き」

『・・・・・・うん』

「僕も、フェイトの事が大事で、大好き。だから離れたくなんてない。
フェイトとの繋がり、フェイトとの時間・・・・・・諦めたくなんて、ない」

『諦めなくていいんだよ? 私もヤスフミと繋がる事を諦めたくないから』



その言葉に胸が震える。というか・・・・・・だめ、涙が出そうだわ。



『だって私達両想いだもの。全部を含めて、互いに繋がっていきたいって思ってる。
だから変える必要なんて、ない。・・・・・・ありがと、教えてくれて』



画面の中のフェイトが、そっと手を伸ばす。それで僕の手にそっと自分の手を重ねる。

自分が見ているモニターの中に移っている僕の手を、優しく撫でてくれる。



『私、すごく嬉しい。ちゃんと気持ち、通じ合ってたから』

「そっか。なら・・・・・・よかった」










空間モニターに頭を乗せるようにして、少しだけフェイトに甘えた。

顔を上げるとフェイトは優しく笑ってくれていて・・・・・・それが嬉しかった。

それから僕達の時間は動き出して、また話をしていく。





少しだけ、さっきより自然に笑えるようになったから、笑顔で・・・・・・だね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・それで、あの・・・・・・前に教えてくれた夢は』

「大丈夫だよ」



フェイトそこも気にしてくれてたんだ。僕が殺したから、また夢を諦めちゃうんじゃないかって。



「喝、入れられちゃったもの。『迷うな・逃げずに正しいと思う事を貫け』ってさ。
理想のために、今守りたいものから絶対に目を背けるなって背中押された」



それでその喝を入れたのは、僕の肩に乗って二人して当然という顔で笑ってる。

きっとフェイトには見えてないけど・・・・・・うん、夢はちゃんと生きてるの。



『そっか。というか、まるでその夢が実際に話してるみたいな言い方だね』

「当然だよ。夢は生きてるんだから。だって夢は、『なりたい自分』は」



僕はそっと、右手を自分の胸に当てる。それから、また笑う。



「ここで生きてる。僕のたまごは、まだこの中で生きてるから。それで今も言ってくれてる。
絶対に、絶対に自分を諦めるなーって。矛盾してても『罪を数えろ』って自分に突きつけろってさ」

『そう言えば・・・・・・うん、そうだった。なら、ヤスフミの夢は健在なんだね』

「健在だよ。・・・・・・悔しい事は沢山あるけど、それでも。
それが僕の目指すハードボイルドかな。うん、きっとそうだ」



迷いもあるし、止まりそうにもなる。だけど、それでも・・・・・・って悪あがきをするのが僕。

だからそんなハードボイルドになれたらいいなぁと、やっぱり思うわけですよ。



「なによりフェイトも背中押してくれたしね。フェイト、ありがと」

『ううん。そんな事ない。そんな事・・・・・・ないよ。だって私、奥さんだもの。
だから私達は、キスやエッチっていう繋がり方もアリ。そうでしょ、旦那様?』

「・・・・・・うん。あ、でもさすがに今日はちょっと。その・・・・・・こういうのは気分が」

『た、確かにそうだね。ならヤスフミがそういう気分になるまで・・・・・・あれ、私なに言ってるんだろ。それでね、ヤスフミ』



どうやらここからは甘いお話は無しらしい。フェイトが一旦顔の赤みを引っ込めて真剣な顔になった。



『まずスバル達を攻撃したのは別にいいの。私も話を聞いたけど、確かにあの場ではヤスフミの判断が正しい。
というより、信じられなかった。『家族を殺す』とまで言われたのに・・・・・・みんなが自分達で何もしない事を選ぶなんて』

「まぁどうにか出来る力もないからって事を含めたらそうも言えないけどさ」

『うん、そうだね。それは大事だ。だけど私達の仕事は、やっぱり人を守る事なのに』

「そりゃあしょうがないでしょ。誰だって汚い仕事はしたくないし手は汚したくない」



そっと右手を上げて・・・・・・ゆっくりと握り締めてみる。



「なにより有能且つ有名過ぎる上司達が居る。その上司達が命令しちゃったから・・・・・・しょうがない」

『・・・・・・うん』

「でもフェイト、まぁ一つ言わせてもらうとさ」

『いいよ、遠慮しなくていいから・・・・・・言っちゃって。多分それは私と同じだから』



フェイトの表情の中に、明確な怒りが見える。その対象が何かを考えて、普通に悲しくなってしまった。



「なら言う」



ただ、それでも止まらない僕も正直アレだとは思うけど。



「アイツらは局員なんかじゃない。自分達の仕事を・・・・・・何も分かってない」

『・・・・・・うん、やっぱり同じだ。私も、そう思ってた。みんなは、私達と同じだった』



そこからまた身体の調子とかを話して・・・・・・通信は終わった。

なんというか、フェイトに感謝だよね。うん、真面目に感謝だ。



『あ、そう言えば一つ忘れてた』

「いきなりなにっ!? てーかどうして通信が繋がったっ!!」

『あ、ごめん。えっとね・・・・・・その、そっちに行けなくてごめん。私もまだ報告書とかの処理が終わってなくて』



いや、そんな申し訳そうな顔しなくても・・・・・・ほら、仕事はやっぱ大事だしさ。



『・・・・・・今、来なくても大丈夫って考えた』

「地の文を読まないでっ! というかほら、仕事優先なのは基本でしょっ!!」

『基本じゃないよ。というか、それなら私の基本はヤスフミ優先だよ。・・・・・・その、こういう時は力になりたいんだから』

「そ、そっか。あの、その・・・・・・ありがと」










・・・・・・僕、やばい。またフェイトにフラグ立てられたのかも。





それでなんかめちゃくちゃ元気出てきた。うん、僕はまだまだ頑張れる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌日。目が覚めると・・・・・・シャマルさんとリインが同じ布団の中に居た。





僕はシャマルさんの胸に顔を埋めていて、リインがフルサイズで後ろから抱きついてる。










「・・・・・・・・・・・・なんでっ!?」





ま、待て待て・・・・・・シャマルさんはパジャマ着てる。

リインも同じく。二人ともスヤスヤと嬉しそうに寝てる。

・・・・・・お、落ち着け。なんでこうなる? なんでこんな形になるのさ。



とにかく、考える。リインとシャマルさんの腕を起こさないように外しつつ考える。





≪そんなの、二人があなたを放っておけないと言って泊まりに来たせいでしょ?≫



枕元でプカプカ浮かぶのは、我が相棒。でも、それだけじゃない。

その両側に、シオンとヒカリも居る。それで呆れた表情で僕を見ている。



「全く・・・・・・お前、フェイトが居るのに相変わらずだな」

「あら。押しに弱いのも、お兄様のいいところだと思いますよ? おかげで私もやりやすいですし」



なんだかいつもの調子なのがおかしくて、うれしくて・・・・・・布団から起きながら、僕はアルトを見る。



「アルト、おはよ。ヒカリとシオンも、おはよ」

≪おはようございます。・・・・・・気分は、どうですか?≫

「まだあんまりよくない。でも、全部持ってくわ。結局それしか出来ないんだし」



そうだね、結局はそこに集約されるのよ。罪を数えるというのは、そういう事なんだ。



≪ならいいです。・・・・・・私も肩くらいは貸してあげますから、まだ大丈夫でしょ。
それで恭也さん達にも相談してみましょうよ。話すだけでも変わるでしょうし≫

「うん、そうだね。あと・・・・・・二人も、ありがと」

「いいえ、問題ありませんわ。お兄様」





さっきは起きた時の情景があんまりだったけど、ようやく思い出した。

・・・・・・昨日あのまま家に帰る事が許されて、僕は帰路に着いた。で、シャマルさんとリインもついて来た。

少しだけ優しい空気の中一緒にご飯を食べて、更にカウンセリングという名目でお話をした。



何時の間にかお泊りって話になって、遠慮したんだけど大丈夫だからと言われた。

それで結局そのまま添い寝した。また甘えてしまった。

だけどどうしても止まらなかった。ただ抱きしめてくれる事が、凄く嬉しくて。



でも、それが申し訳なくて謝った。シャマルさんは『それでいい』と言ってくれた。

・・・・・・ただ、なんか妙に嬉しそうだったけど。それがなんか気になったけど。

まぁそこはいいや。シャマルさん・・・・・・ありがと。





「アルト」

≪はい≫

「色々考えたんだけどさ」



僕は弱くて情けないから、フェイトやシャマルさんやリインの力を借りてなんとか立ち上がれた。

だから気づいた事がある。アイツは・・・・・・あの男は。



「お前の事も狙っていた・・・・・・か?」

「つまりお兄様もターゲットの一人だった」

「・・・・・・人のセリフ、取らないでもらえます? まぁそういう事なんだけど、どうかな」

≪でしょうね≫



さすがは我が相棒、僕の言いたい事が分かってくれたらしい。まぁ伊達に年上じゃないしなぁ。

でもシオンとヒカリ、二人は駄目だよ。僕のセリフを遠慮無くぶん捕りやがって。



≪あの男は、あなたが自分を殺せないという前提に対して絶対の自信を持っていました≫





それがアイツの隙であり弱点にもなってた。まぁ、だからこそ僕はそこを突いて殺せたんだけど。

そうじゃなかったら、負けてたかも知れない。というか・・・・・・殺されてた。さすがにアクセルフォームは使えないしなぁ。

そうだ。アイツの敗因はスバルやギンガさん、エリオと言った捕獲対象が居たから。



そうじゃなかったら、広範囲魔法で一気に終わっていた危険もある。





「だがそれだけではない。あの男は話を聞く限り、お前の経歴や能力を事前に知っていた」

「リインとの約束の事、話してたしね。間違いないよ。
僕について相当嗅ぎ回ってた。だからこそ殺せないとタカを括ってた」

≪私もそう思います。大体、瞬間詠唱・処理能力の事だって基本的には秘密事項ですし≫





この辺りは、レアスキルじゃないからという事で隠すのは結構容易。

僕が資質的にこの能力を100%使い切れてないというのも、皮肉だけどそこの助けになってる。

ようするに端から見ると気づかれにくいって事。隠し手は多ければ多いほどいいもの。



そこを知ってるって事はデータベースかなにかに入られたのかな。そうすると・・・・・・やばいな。



『向こう』に僕の手札、あらかた知られちゃってるかも。





「そして・・・・・・なによりだよ」

≪えぇ、あなたに対しても本当に僅かにですが、攻撃が甘い部分がありました≫



ただブレのようなものがあった。僕に対してだけは本気で殺してもいいとか思ってたんでしょ。

見る限り自分に正直なタイプの男だ。だから余計に分かる。



「でも、どうしてなんだろ。例えばスバルやギンガさんは・・・・・・言い方は悪いけど分かる」

≪エリオさんも同じくですね。アイツはエリオさんを『プロジェクトFの遺産』と呼びました≫



僕は確かにその単語を聞いた。そして、それがなにかを知っている。



≪・・・・・・フェイトさんと同じように≫

「・・・・・・まぁ、この辺りはいいじゃないの。
フェイトがエリオの保護責任者を買って出た理由の一端は理解出来たし」

≪だから、あの人は余計に入れ込んじゃうですかね。それがいい事とは私には思えませんけど。
ある意味では究極の傷の舐め合いじゃないですか。というか、絶対病んでますって≫



また朝っぱらからキツい事を・・・・・・いや、僕も全く同じ事考えたけどさ。



「いいじゃないの? 傷の舐め合いが必要な時だってあるよ。
ちゃんと消毒しないと化膿して肉が腐っちゃうんだから。ちゃーんと治療出来てれば、それでよし」

≪消毒出来てるかどうかすら怪しいですけどね。でもそれ、惚れた弱みですか?≫

「そうよ。・・・・・・男はね、惚れた女の子のちょっとバカな部分も笑って受け入れるものなのよ。
で、相手の都合に思いっきり振り回されるのも覚悟するの。前に知佳さんがそう言ってたよ」

≪・・・・・・アバンチュールの時に言ってましたね。私もその場に居たから覚えてますよ≫





なお、カナダの仕事場に居る同僚の男の人がそんな話をしてたって教えてくれた。

決して知佳さんの主観じゃないのは知っておいて欲しい。・・・・・・まぁそこはともかくですよ。

僕が狙われる理由・・・・・・あぁ、出自以外なら思い当たる節があるわ。



問題児やってれば局内外問わず、それなりに恨みも買うさ。ただそれで報復とかはない。

2年前にヒロさんとサリさんが広めた好き勝手な噂が、凄まじい事になってるから。

ぶっちゃけなのはのスラングは噂レベル。でも、僕の噂はもう噂じゃない。真実になってる。



尾ひれに尾ひれがつきまくった挙句、僕が管理局の真のトップで裏表両方の世界を牛耳っている何て言うのもある。

さすがにそれを信じてるのは居ないけど、普通に悪党が報復なんて選択肢をポイ捨てしても仕方のないレベルではある。

なんだよ。秘匿級のロストロギアを眼光一つで破壊したとか、中身は最凶最悪のダークデーモンって。



僕は普通に何処にでも居る17歳の男だっつーに。そんなどこぞの魔王みたいな真似は出来ないってーの。





「だが狙われる原因はなんだ? 確かに恭文は風評だけなら魔王以上の大魔王だが・・・・・・逆恨み?」

「今回はそれとは違うはずです。あの男はお兄様だけを狙ってきたわけではないんですから。
それは他も同じ。ナカジマ姉妹だけでも、モンディアルさんだけでもない。全員ひっくるめてです≫

「そして自分ならそれが可能だと本気で思ってた。・・・・・・まぁ、その通りだったけどさ。
やっぱりさ、守る刃や倒す刃より強いのは・・・・・・殺す刃だよね」

≪使い手にもよりますよ? ただ、基本はそうです。鋭さに差が出ますから≫





・・・・・・この場合、やっぱりスカリエッティが絡んでるのかな? まぁ状況的に見てそれだとは思う。

でもなんで僕? 僕はスカリエッティとは何の接点もない。

それに瞬間詠唱・処理能力だって珍しい能力だけど、そこまですごいってわけじゃないもの。



うーん、謎だ。なぜ僕に対してそんな風にするのか・・・・・・まさか、しゅごキャラの事がバレてるとか?



出来れば考えたくはないけど、そっち方向なのかな。そうなるとかなりマズい事になるんですけど。





「・・・・・・やすふみ、くん」



あれこれ悩んでいると、シャマルさんが唸りながら目を開ける。

眠そうに・・・・・・けだるそうにしつつ僕の事を見上げる。



「あ、ごめんなさい。起こしちゃいました?」

「ううん、大丈夫。・・・・・・でも」

「でも?」

「昨日は激しかったわね。でも、とってもよかった。私、あんなに乱れたの初めて。
ねぇ、もしよければなんだけど・・・・・・恭文くんとはまた、こういう事をする関係になりたいな」



とりあえず近くの枕で遠慮なくシャマルさんの顔面を叩いた。



「いったーいっ! いきなり何をするのっ!?」

「やかましいっ! 普通にエロな事言うなっ!!」

「だって・・・・・・私の夢の中ではそうだったのよ? あ、そうよね。夢なのよね。
うぅ、まるで貪られるかのように恭文くんにいっぱい啼かされたのに・・・・・・夢だったんだ」



はぁっ!? アンタ、僕を抱きしめながら一体なに考えてたっ!!



「あ、まさか・・・・・・夢の中まで私は恭文くんに抱かれる権利はないって言うのっ!? ひどいっ!!
それはひど過ぎるわっ! せめて夢の中だけは『私×恭文くん』を成立させたっていいじゃないっ!!」

「おのれの夢なんて知るかっ! 別に夢見ても妄想してもいいけど、お願いだからそれを現実に持ち出さないでっ!?」

「・・・・・・お姉様、シャマル医務官はバカですね」

「そうだな、バカだな。なぜ昨日上げた株をここでいきなり落とせるのか」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フォン、レイメイ」

「そうや。で、資料を見てもらえば分かると思うけど、次元世界でもベスト20に入るくらいの凶悪犯罪者や。
スカリエッティと同じく第一級捜索指定もされとって、裏表問わず散々やらかしとる。しかしよりにもよってコイツやなんて」

「はやて、知ってるの?」

「知っとるもなにも、前に追っとった事件の主犯や。もちろん未解決」





朝、はやてに呼び出されて昨日ヤスフミとリインが殺した男の資料を見せてもらっていた。

名前はフォン・レイメイ。スカリエッティと同じ違法科学者。自身も優秀な魔導師でヤスフミと同じ能力を持った相手。

それとスバル達が持ち帰ってくれた戦闘データの検証の結果、生体改造を施されていた可能性が高い事が分かった。



主な効果は魔力量の増加と、身体中を穴だらけにされても数瞬で復活という肉体の瞬間的な再生能力。

それがヤスフミとスバル達が六人がかり・・・・・・違う。

ヤスフミとリインがスバル達を振り切ってでも、殺すという手段を取るしかなかった一番の原因。



そして私は少し言い間違いをした。多分その改造は自分で施したんだ。様子を見ると自慢しているようにも見えた。

だけどなにより目を引いたのはその犯罪歴。あまりにひどい。まずは大量虐殺に誘拐。

あとはお決まりの生体改造に実験・・・・・・見ているだけで虫唾が走るし、吐き気がしてくる。



今更ながらヤスフミがあれだけ厳しく言った意味が分かった。そうだ、私は完全に不抜けていた。

私達の仕事は、こういう存在と向き合って戦う事なんだ。なのにエリオ達が被害者になる可能性を考えてなかった。

この男が私やエイミィ達にナカジマ三佐を殺すと言った時も逃げ続けていた。



私達ならきっとなんとかしてくれると期待を押しつけて・・・・・・私が言う権利はないんだけど。





「でな、これ見たうちの子達の意見としては・・・・・・『捕縛なんて無理』って即答やったわ」

「シグナム達でもそうなの?」

「そうや。能力的な事どうこうもあるけど、なにより精神がイカレとる。
シグナム達曰く、古代ベルカでもここまでのはあまり会わないそうや」



それは・・・・・・相当だね。シグナム達、戦闘経験は私達よりずっと上なのに。



「資料に載っとる罪状かて、あくまでも表に出てる部分だけよ? 実際はきっとこれより上や。
正直な、うち恭文とリインを責められんわ。これを捕縛しろなんて無茶振りにもほどがあるやろ」

「そうだね。多分普通にやったら、私やなのはでも無理かも知れない」

「ヴィータの到着を待ってればって意見もあるんやけど、あの時点で全員ギリギリやったみたいやしそりゃ無理な注文やて。
あとは・・・・・・アレや。ヴィータが足止めされる可能性もあったやろ? ほら、召喚師連中が戻ってきてーとか」

「あぁ、それもあったね」





あの時あの場に救援に向かえたのはヴィータだけだった。私となのはとはやてはヘリの方に回ったから。

そしてシグナムはヤスフミにも説明した通り、見事に出遅れてしまった。だからそういう可能性が出る。

実際には起こらなかったけど、フォン・レイメイの手伝いとして召喚師がヴィータの邪魔をする可能性もあった。



なんでもいいの。例えば別の召喚獣を出して、その子で足止めでもいい。

転送魔法をトラップ的に仕掛けて、そこをヴィータが通ったら発動とかでもいい。

そうやって時間を稼がれたら、本当に手の打ちようがなかった。



あの時点でスバル達は『救援を待つ』という作戦しか立てて無かったもの。

ヤスフミもそこを考えて、現状戦力での打破を視野に入れるべきだとみんなに説明した。

でもスバル達はもう説明した通りの感じで・・・・・・だから振り切った。



あぁもう、完全に私達の不手際だ。教導がもう少し上手く進んでいればこんな事にならなかったのに。





「でもはやて、二人が居ればスターライト」



・・・・・・あぁ、無理だよね。うん、スターライトは使えない。確かにスターライトは強力。

多分あれを使えば、相手がなんだろうと鎮圧は出来たはず。でも、あの場ではそれは無理。



「地下で使うには威力が大き過ぎる」

「そうや。これやとまず、チャージのための時間が取れん。
仮にあのチビが得意のトラップ仕掛けて撃てたとしても、落盤でそのまま生き埋めがオチやろ」



そして逃がすのもアウトだった。というより、また来ても捕縛出来るかどうかが分からない。

ここの辺りはヤスフミ達に宣言した通りの事が起こる可能性も含まれているので、あしからず。



「なによりあの能力は怖過ぎるよ。やっぱり恭文に頼る事になってたと思う。
恭文は資質的な問題で100%使いこなせてないから、うちらでもまだ対処出来るんよ?」





それはヤスフミの魔導師としての欠点・・・・・・ううん、本人は欠陥って言い切ってる。

魔力量や魔力での遠距離攻撃適正に恵まれていないヤスフミでは、この能力を活かし切れてないの。

多分この能力はクロスレンジよりも、アウトレンジの高火力攻撃の方が効果が大きいと思うから。



はやてやなのはみたいなチャージタイムの必要な砲撃をよく使う魔導師なら、なおさらだよ。



もしもはやてみたいな子がこの能力を覚えたらどうなるか・・・・・・その恐ろしさは説明する必要ないと思う。





「でもあないな生体改造でチート魔力に身体能力持ってる奴が使ったら、同じ能力持っとる恭文にしか対処出来んわ。
向こうの魔法は全部うちらの先の先を取るし、ブレイクハウトみたいな特殊魔法使われる可能性もあるしな」

「そうなんだよね。悔しいけど私達、これに限らずマイノリティな相手には本当に弱い。
そういう相手が出てくると、ヤスフミに頼ってどうにかしちゃう事が本当に多い」

「去年のアイアンサイズやオーギュスト・クロエしかり、これしかり・・・・・・うちらマジ恭文に甘え過ぎやな」





それで問題はもう一つある。ヤスフミは自分の能力を活かして、私達では発動すら出来ない魔法をいくつか組んでる。

例えばそのうちの一つが、ブレイクハウト。ヤスフミの魔法の代名詞だね。

アレは物質の分子の繋がり・・・・・・構築パターンそのものに干渉。その上で物質を変換ないし分解する魔法。



アレは一般的な物質操作とは違うの。よくあるそういう魔法は、あくまでも操作。

物質に魔法をかけて意のままに操るのが操作魔法。だけどヤスフミの物質変換は構造そのものを作り変える。

つまり向こうもそういう・・・・・・能力があるからこそ使える魔法を使ってくる可能性があった。



その場合、私達では本当に対処出来ない可能性があった。例えば物質分解だよ。

物質を構築する分子そのものの繋がりを切るとかで、どんなに固いものでも簡単に壊せちゃうの。

そういうのを使ってこられたら、デバイスや装甲でどんなに守っても全て無意味になる。



しかも魔力量もハンパじゃないから、使われた場合に止められなくなるのは察して欲しい。



なんというか、今更ながら寒気がどんどん強くなる。これで性根がアレなんて、最悪過ぎる。





「それに多分この男相手で私達が全員揃ってる状況になんて、絶対に来ないと思う」

「そこは間違いないな。うちらがなんかしとる時を狙ってーって感じで襲って来てたやろ。現に今回がそれや」





なんだろう、素直に喜べない。二人の行動や判断が正しかったと立証されたのはよかった。

だけどそれでも・・・・・・やり切れない。私達の不備が余りに多過ぎるもの。

あの事件からもうちょっとで1年が経つ。でも私は今、あの時と同じ悔しさを感じている。



何も出来なくて、手すら伸ばす事が出来なくて・・・・・・私は一体、今まで何をしてたんだろう。



あの子が必死に強くなっている間、私は一体何をしていたんだろう。この差は、いつ生まれたのかな。





「とにかく、この情報はすぐにみんなに公開やな。どちらにしろ捜査のために資料渡さんとあかんし」

「出来ればこれで少しだけでも分かってくれるといいんだけど」

「これで分かってもマジ気持ち悪いだけやけどなぁ。こういう時だけ一致団結なんやもん。
てーか気分悪いわ。これじゃあうちら、部隊纏めるために恭文を生贄にしたも同然やで?」

「・・・・・・そうだね」



そこまで考えて、少し気づいた。だからはやての方を驚いた表情をしながら見てしまう。



「ヤスフミまさかとは思うけど、そのためにスバル達に攻撃仕掛けたりとかしたんじゃ」

「はぁ? いやいや、さすがにソレは・・・・・・ありえるな。うし、ここは後でツツいとこうか」

「うん」





私の予想通りならヤスフミとリインは、きっと何も言わない。どんなに言われても何も言わない。

だけどだけど・・・・・・私、本当にバカだ。私はいつだってヤスフミに迷惑をかけてばっかりだよ。

1年前の事もそうだし今回だってそうだよ。ヤスフミが大変な時に私・・・・・・何も出来ない。



昨日お話したけど、どこまで助けになれてるかは実は自信なかったりするんだ。





「それで・・・・・・フェイトちゃん、実はうちからひとつお願いや」

「なにかな」

「フェイトちゃんは、アイツの味方で居て欲しいんよ」



はやてはそう言いながら、真剣な目で私を見る。



「別にアイツ擁護しろとか、みんなに殺すのは仕方がなかったとか、そういう事を言えいうんやない。
ただな、アイツはアンタの事めちゃくちゃ好きやし、大事に思うとる」



うん、知ってる。だって昨日もそう言われて・・・・・・泣きたくなるくらいに嬉しかったから。



「そのアンタにまでこの事について責めるような事言われたら、アイツマジで追い詰められてまう。
そやから・・・・・・お願いや。思うところはあるかも知れんけど」

「は、はやて。どうしたの? というか、大丈夫だよ。
私はその・・・・・・ヤスフミの友達で、仲間で、家族なんだから」

「なら、大丈夫なんか?」

「・・・・・・うん。自分でも不思議なくらいにね、怖く・・・・・・ないんだ。
というか、昨日少しだけ、ヤスフミと通信で話したの」

「そうなんかっ!?」





話を聞いて、今はそっとして置こうかと思った。でも、やっぱり心配になった。

一人で談話室に入って、通信をかけた。

出てきたあの子は、少し疲れた顔をしてて・・・・・・それに胸が苦しくなった。



それから『ごめん』と謝るヤスフミを見て、私の気持ちは固まった。



それで・・・・・・昨日の話の内容をそのまま伝えた。はやては安心したように表情を柔らかくした。





「・・・・・・そっか」

「うん。でも、おかしいんだよね。ヤスフミの反応がこう・・・・・・真っ赤なの」



おかしいんだよね。ヤスフミ、そう言うとすっごく顔を赤くしたの。もうトマトかって言うくらいに。

・・・・・・ううん、理由なら分かってる。私がその、一時的にヤスフミの奥さんになったからだよね。



「フェイトちゃん・・・・・・アンタ、自覚ないんやな」

「なにが?」

「いや、なんでもない」



はやて、そんな呆れた目で見ないで? 私、ちゃんとどうしてそうなるのか分かってるから。

確かに恥ずかしかったけど、あの・・・・・・ヤスフミを『旦那様』って言うの、結構楽しいかも。



「とにかく安心したわ。もうここだけはなんとかせなあかんと思ってたからなぁ」

「ごめんね、心配かけちゃってたみたいで。でも、大丈夫だから。・・・・・・それでね、はやて」



実は、私も用件がある。それは三つ。まず一つ目からいく事にした。



「私もそうだけど、はやてやみんなも大丈夫? リイン・・・・・・重荷を背負ったわけだし」

「うちらはもう覚悟しとるよ。で、うちらも実は昨日リインとちょおお話した。
言うた事は・・・・・・うん、フェイトちゃんと変わらんよ。そやから、大丈夫」

「そっか、ならよかった」



一つ目の危惧が私の思い過ごしだと分かって、内心ホッとした。まぁはやてやシグナム達だから大丈夫とは思ってた。

でも安心した。・・・・・・それで次はさっき部隊長室に入る前にグリフィスから聞いたある事実。



「・・・・・・六課に近々査察が入るって本当?」

「本当や。それもオーリス三佐・・・・・レジアス中将の秘書の方が直々にや」





理由は察しがつく。六課が地上に居るのが気に食わないんだ。六課は本局所属。

だからミッド地上にありながらもレジアス中将が実質的にトップを勤めるミッド地上本部の管轄から外れてる。

私が思うにレジアス中将は本局嫌いで有名だし、好き勝手やられるのが気に食わないってところかな。



あとは昨日の戦闘。私もなのはもはやても、実は限定解除しちゃったんだ。

だから市街地付近でSランク魔導師を三人も投入した事になる。これは何気に大きな問題。

でも大丈夫なのかな。地上部隊の査察、相当厳しいって聞いてるし。



それにうちの部隊は私やはやてを筆頭に、叩けば埃の出る人間ばかりだから。

・・・・・・なんだろう。自分で言ってて今更だし事実だけど胸が痛む。

今顔が浮かんだあの子もその中の一人として見られるのかと思うと、すごく・・・・・・嫌だ。



ううん、今はそこじゃない。問題はそこじゃないの。私達、このままだと査察を乗り越えられない。





「はやて、それってかなりマズいんじゃ」

「マズいな。まぁそこは対策を考えとくから多分大丈夫・・・・・・なはず」

「そっか。ならはやて、もうひとつ」

「なんや?」



これが三つ目。実は最近・・・・・・ううん、違う。六課設立時からずっと気になってた事がある。



「そろそろ六課設立の本当の理由、教えてくれないかな。なにか・・・・・・隠してるよね」





六課は色々とおかしい部分がある。普通ならこんな編成にしないもの。



というか、ありえないよね。ヤスフミが教えてくれた非公式の後見人の話も含めるとかなり。



だから今聞いている。さすがにもう知らないふりは出来なくなったから。





「・・・・・・そうやな。もうここで話さんとあかんやろ。
てゆうか、フェイトちゃん的には恭文の事もあるから、余計話して欲しいんやろ?」

「そうだね。ただ、それだけじゃないんだ。・・・・・・実はね、私隠し事してる件に関しては相当怒ってる」





ヤスフミと話して、信じる前に私達だからこそやるべきと突きつけられた事。



私はそれを思い出しながら、ちゃんとはやてに伝える事にした。



だから真剣な顔で、睨みつけるように自嘲するような笑みを浮かべ始めたはやてを見る。





「ここははやての夢だよね? 色々ごちゃごちゃしてるけど、そこだけは間違いない。
悲しい事を少しでも減らしたくて、成果を出して上を変えるために作った夢の部隊」

「・・・・・・そうや」

「それで私達も事情込みだけど乗っかってる。ならこれは私達の夢でもあるの。
はやて、私が許せないのはそこ。夢の中身が変わるなら、ちゃんと最初から話して欲しかった」





もちろんこの発言がはやてを困らせてるものだとは思う。組織の一員として、ありえない部分も多々あると思う。

でも違うの。この夢に乗っかった時の私は、局員でもなんでもなかった。ただのフェイトだった。

ただのフェイトとして描いた夢を、組織の中で一つの形にしたというだけの話。たったそれだけの事だった。



だから友達としてはやてにちょっとだけお小言。でも、お小言の対象ははやてだけじゃない。





「うん、だから怒ってるよ? 黙ってたはやてに対してもそうだし、自分に対しても」

「・・・・・・自分にも?」

「うん。それならはやて、苦しかったんじゃないかって・・・・・・ヤスフミからアドバイスされたんだ。
だから今、こうやって話してる。はやて、ごめん。私はやてに任せっぱなしで、ちゃんと気づけなかった」



私はそのまま、はやてに頭を下げる。だってあの、怒りと同時に申し訳なくも思ってたりするの。



「ここは私達みんなの夢のはずだったのに、重要なところをはやてに任せっぱなしで叶えた気になってた。
それで重いものとかはやてだけに背負わせて・・・・・・勝手な事言いまくって勘違いした。私達が六課をこんな風にした」

「・・・・・・・・・・・・アホ。そんな謝られても困るわ。てか、うちの責任が大きいんやし。フェイトちゃん」

「なに? あ、殴るならボディに・・・・・・でもお腹はその、やめて欲しいな。私だって赤ちゃん産みたいから」

「一体どこの三原じゅん子っ!? そないな事せんから、まず顔を上げてーなっ!!」



はやては私の両肩を掴んで一気に引き上げる。それから呆れ気味の表情をしつつ、ため息を吐く。



「とにかくアンタの気持ちはよう分かった。ちょうどクロノ君も地上に降りてきとるみたいやし・・・・・・うん。
ちゃんと最初から最後まで全部話すわ。当然、恭文とリインも込みでな」

「ヤスフミとリインも?」



そこはあまりに予想外だったので、はやての言葉に首を傾げる。



「うちもな、これでもアホなりに色々と考えとるんよ。それに・・・・・・二人にはちゃんと話す必要がある。
ほら、ティアナの事もあるやろ? 昨日の事が無かったにしても、話すつもりやった。もう無関係とちゃう」

「そうだったね。特に今はティアナ、風邪引いちゃって動けないし」

「あ、それはうちもリインから聞いとる。・・・・・・一応恭文の事は黙っとこうな?」

「うん」



今回の事、ティアナが知ったらどう思うか分からないもの。だから今は・・・・・・今は内緒で。



「とにかくそうした上で、今後どうするかを考えてもらわんとあかん。ま、その話も現地でするわ」

「分かった。でも、今から連絡?」

「そこはリインに話をしとる。そやからリイン経由で恭文も聞いとるはずやし・・・・・・もう向かってるんやないかな」





それから通信でなのはに事情説明をする事になった。二人で壁にかけてある時計を見て、頷き合う。

なのは、聖王教会の医療施設に預けられたあの子が気になって、シグナムと一緒に様子を見に行ってた。

でも時間的にはもう帰ってる頃のはずなんだ。だから私達はなのはにその場で通信をかけた。



理由は一つ。なのはにも六課の隊長の一人として話を聞いてもらうため。





『びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』



開いた画面に映るのは、一人の女の子。それは、あのレリックを運んで来た子。

その子がなのはの足に抱きついて、泣き喚いてる。



「「・・・・・・え?」」



それで周りに居たスバル達も困って・・・・・・ううん、違う。どこか不満そうにその子を見ていた。

だからあの子が更に怯える感じになってるのかも知れない。



『あ、フェイトちゃんはやてちゃんっ! お願い、助けてー!!』

「いやいや、助けてって言うたかて・・・・・・どないしたんや、その子」

『ちょっと色々あって医療施設から引き取ってきたの。
でも、仕事があるからみんなに任せようとしたら、これで』

「・・・・・・懐かれちゃったのかな」



そう言えば泣き喚くというよりは寂しくて甘えてる泣き方だ。うーん、これは・・・・・・アレしかないね。



「なのは、お仕事は他の人に任せようか。というか、今その子の側を離れちゃだめだよ」

『そんなー! フェイトちゃん、お願いだから助けてっ!? さすがにそれは無理だからー!!』










・・・・・・結局、放置も非常にアレなので私がこの子・・・・・・ヴィヴィオを説得した上で、なのはをはやて共々連れ出した。





そして現地でヤスフミとリインと合流。ほぼ24時間ぶりに直接会うあの子は、相変わらずな感じだった。





それが嬉しくて、ちょっと少しの間ハグしてその感覚を確かめたのは・・・・・・きっと許されるよね?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



現在、僕達は聖王教会の中。通路を歩きながら目指すのは、ある場所。





なので僕達は木造りの木目が綺麗なドアを開けて、部屋の中に足を踏み入れる。










「失礼します」



なんて言いながら部屋に入ると、そこに居たのは一人の女性。それと・・・・・・あ、珍しい。また制服姿だし。



「お初にお目にかかります。高町なのは一等空尉と」

「フェイト・T・ハラオウン執務官であります」



敬礼つきでそう挨拶をするのは局員二人。つーか堅苦しい。もうちょいなんとかならないものか。



「お二人とも初めまして。聖王教会のカリム・グラシアです」



そしてその人は僕の姿を見つけて、安心したように笑ってくれる。・・・・・・このお姉さんはカリム・グラシア。

聖王教会の騎士の中でも偉い人で、ヒロさんの年の離れた幼馴染。僕達はこの人に会うためにここに来た。



「・・・・・・恭文君、お久しぶり。あ、それにリインさんも」

「いや、すっかりご無沙汰しちゃってすみません、カリムさん」

「カリムさん、お久しぶりなのですー♪」



・・・・・・で、今日はなんで僕呼ばれたんですか?



「今日呼んだのは、あなたの軟派なところをシャッハに修正してもらおうと思って」

「誰が軟派ですか誰がっ! そして地の文を読まないでくださいっ!!」



ま、全く・・・・・・誰だよ、妙な事をカリムさんに吹き込んだのは。あ、なるほど。



「なんでうちを真っ先に疑うんよっ!!」

「だから地の文を読むなっ! なんか基本小説とかではNG行動だって本に書いてたんですけどっ!! でもそれなら他に・・・・・・居るか」



ヒロさんとか、ヒロさんとか、ヒロさんとか。もしくはサリさんとか。

修行で聖王教会の修練場使っていた時に、色々お世話になったから。



「正解よ」



やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁっ! あの二人は余計な事・・・・・・また地の文を読まれたー!!



「・・・・・・え、えっと・・・・・・あの」

「はやてとリインはともかく・・・・・・ヤスフミ、もしかしなくても騎士カリムとお知り合いなの?」



二人が口を開けて呆けている。で、僕とカリムさんを交互に見る。

その様子が少しおかしくて、カリムさんと一緒に笑ってしまう。それから、僕は二人の言葉に頷いた。



「えぇ、そうです。私と恭文君は、個人的にお付き合いのある関係なの」

「「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」

「フェイト執務官、ご挨拶が遅れてしまって本当にごめんなさいね。
本当なら真っ先にあなたのところへ伺わなければいけなかったのに」



カリムさん、なんでそうなる? そしてその『私達付き合っています』的な言い方はやめて。



「一応恭文君の元祖ヒロインで現時点で本妻最有力候補のリインさんには、ちゃんと挨拶していたのだけれど」

「されちゃいましたー」

「今後とも、もしよければ仲良くして欲しいわ。よろしくね」



あの・・・・・・いや、だからね? 僕、本命フェイトだから。カリムさんだってそういうのじゃないでしょうに。

そして元祖ヒロインって言うのやめてっ!? ちょっとおかしくないかな、それっ!!



「い、いえ・・・・・・あの、なんというか、恐縮です」

「というわけで私は現地妻・・・・・・何号かしら」

『フラグ立ってるのっ!?』



フェイトはその場でぺこぺこしつつ、横目で僕を見る。というか、なのはも同じく。

そして視線が言ってる。『どこでどうやってこうなるのっ!?』と。なので説明する。



≪以前聖王教会でカリムさんの護衛の仕事を引き受けたご縁で、仲良くさせていただいているんです≫

「というか、僕の紅茶の淹れ方の師匠2号なの」





あぁ、あれもキツかったなぁ。カリムさん、意識してかしていないのか分からないけど、身体くっつけてくるんだもん。

というか、密着ですよ密着。僕がどれだけ着やせしてると思ってしまうような感触にどきどきしたと?

まぁ年齢も離れてるから、あんまそういう感じでは僕を意識していないんでしょ。カリムさん、そういうのにはちょい疎いし。



前にカリムさんの側近であるシャッハさんに以前その辺りを聞いた所・・・・・・ドンピシャだった。

カリムさん、シャッハさんの知る限り・・・・・・いや、ここはやめておこう。触れても僕は楽しくない。

ただカリムさんは色んな意味で頑張り屋さん過ぎるかも知れないとだけ、言っておく。



もしかしたらフェイトと同じ・・・・・・なのかな。それでフラグは立ててないから。





「そっか、二人は知らんかったなぁ」

「「え、はやて(ちゃん)知ってたのっ!? ・・・・・・いや、改めて考えたら当然だけどっ!!」」



なんでそこまでというくらいにハモるフェイトとなのはを見て、僕達は苦笑するしかなかった。



「なんというか、相変わらず仲良しな方々ですね。お兄様的にはコレはアリなんですか?」

「シオン、気にしちゃいけない。てゆうか、僕はもうこれがデフォだと思う事にした」





なお、当然だけどシオンとヒカリも居る。ティアナの方はシャマルさんが見てくれてるので安心。

・・・・・・フェイト、別に僕は好きになった相手がなのはとかでも、応援するよ?

大丈夫だよ、同性愛も異性愛も同じなんだから。言い訳とかじゃないなら別にいいよ。



僕ニコ動にアップされてた某らきすたのMAD見て、同性愛とかの認識変えたのよ。





「うち、カリムと仲えぇもん。なんやカリムは恭文がお気に入りらしくてなぁ。
楽しそうによう話しとるもん。なんかのノロケかっちゅうくらいになぁ」

「もうはやて・・・・・・そういう言い方はやめて?
あくまでも、いい友人としての付き合いに留めているんですから」



だったらさっきの発言はなんですかっ! あなた性格変わってませんっ!?



「とにかく立ち話もなんですから、こちらへ」





というわけで、カリムさんに案内されて窓際の丸いテーブルへ移動する。

・・・・・・てゆうか地上に降りていたんですよね。うん、知りませんでした。

なお僕達より先に来ていたのか、さっきからそのテーブルに座りっぱなしの男性はクロノさん。



それで今日は珍しい事に提督の服。いつもはあの地味目なバリアジャケットなのに。

というかはやてが能力リミッター解除したとか言ってたし、多分間違いない。クロノさんが解除したんだ。

僕はクロノさんと同じ後見人で、リミッター解禁の権限も持っているカリムさんがやったのかと思ってたんだけど。





「・・・・・・クロノ提督、少しお久しぶりです」

「あぁ、フェイト執務官も。元気そうでなによりだ」



・・・・・・ねぇ、あなた方おかしいから。敬礼つきで役職つきで挨拶する兄妹がどこの世界に居るのよ?

もうちょい何とかならないのかね。まったく、堅苦しいったらありゃあしない。



「・・・・・ほら、ヤスフミも」

「あー、そうだね。クロノさん、久しぶり・・・・・・じゃないですよね」

「そうだな、なんだかんだでちょこちょこ会っているからな。というより、昨日話したばかりだ」



実はちょっと通信でお話したのよ。クロノさん、ティアナの事後見人なのにかなり心配してくれててさ。

一応僕なりに現状と、六課の問題点をレポートにして送ったりもした。・・・・・・更に問題点あったけど。



「そうなんですよね。こう・・・・・・全然新鮮味ないですね」



まぁ、いい事ではある。僕はともかくクロノさんは忙しいもの。

それでも以前と変わりなく会えるのは、とてもすばらしい。



「あの、ヤスフミ。そうじゃなくて・・・・・・ね? 今は公式な場なんだから」



うっさい。何時いかなる時もあるがままを通すのが僕のジャスティスなのよ。・・・・・・ジャスティスなのよっ!!

まぁそこは置いておくとして、僕は軽くため息を吐いた。



「フェイト、それはその公式な場で現地妻が増えた僕に対しての皮肉と受け取っていいのかな。しかも覚えないのに」

「・・・・・・普段通りに砕けた感じでいいのかも知れないね」

「理解してくれて嬉しいよ」





僕とフェイトがいい感じで締めたところで、全員示し合わせたように同時に席に座る。

・・・・・・さて、このメンバーでどんなカードが出てくる?

この場合、ロクなもんじゃないとは思うけどさ。うん、そこは確定だね。



でもよく考えたら、なぜ僕が呼ばれてる? おかしくないですか、これ。





「さて・・・・・・そろそろ始めようか。機動六課の今後の運営方針と、設立の裏事情に関してや」










やっぱりおかしい。リインはともかく、普通に僕が呼ばれる意味が分からない。





うーん・・・・・・どうして? というか、なんか嫌な予感がするんですけど。




















(第7話へ続く)




















あとがき



ティアナ「というわけで、ぶっちゃけます。StS・Remixのコピペが大半です。
というわけで、同じくコピペ大半な7話も含めて平謝りな作者に応援を・・・・・・って、何よコレっ!!」

りま「ティアナさん、気にしちゃだめよ。とにかく、そんなコピペな6話はいかがだったでしょうか。
本日のあとがきのお相手は真城りまとティアナ・ランスターの二人でお送りしたいと思います」

ティアナ「・・・・・・もう既にネタになってるわね」





(確かに。ただ7話まで行くとコピー部分がかなり少なくなるからそこはなんとか)





ティアナ「確かに差異が出ないとおかしい部分ではあるわよね。だってほら、この後の展開真逆だし」

りま「この後StS・Remixではまとまるけど、こっちは崩壊ルートだものね。むしろコピペだったら恐怖よ」





(いや、逆に所謂仮面的な付き合いになるとか・・・・・・うん、そんな風にはならないけど)





りま「てゆうかアレよね、六課メンバー全員ぶっ○していいかしら」

ティアナ「りま、アンタ落ち着きなさいっ! 普通に目が怖いからっ!!」

りま「何言ってるのよ、ティアナさん。私の目は愛らしくくりくりしてると評判よ?
ほら、読者もこう言ってるじゃない。『りま様は素敵ですっ!!』って」

ティアナ「言ってないわよっ!!」





(りま様は素敵ですっ!!)





りま「大丈夫、私のろりきょぬーの魅力で全員悩殺だから」

ティアナ「なんでその設定決まってるのっ!?」

りま「ちなみにこの話の段階で私Fカップだから」

ティアナ「ないわよねっ! アンタたった1年足らずでそんな発育すると思ってんのっ!? アンタは発育をナメてるからっ!!」

りま「この話の段階で私Fカップだから」

ティアナ「それで譲る気無いわけですかっ! 完全に戦うわけですかっ!!
てゆうかそれドキたま時点の私より大きいじゃないのよっ!!」





(コメディクイーンは本気です。というか、そう書かないとタイトロープダンサーで亀甲縛りにされそうです)





りま「てゆうかティアナさん、これは必要なのよ。恭文は巨乳好きだから」

ティアナ「・・・・・・まぁそうなるわよね。うん、普通にそうならないわけがないのよね」

りま「えぇ。口ではどう言っても恭文はバナナを挟める程度の大きさがないとダメなの。
おそらくはフェイトさんに惹かれたのも金髪キャラなら絶対巨乳になると踏んでの事」

ティアナ「ありえるわね。アイツ無駄に計算高いから。えぇ、ならない理由がない。・・・・・・とんでもない鬼畜ね」





(『そんなワケがあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』)





ティアナ「というわけで、そんな巨乳好きなあのバカがこれからどうなるかを期待しつつ本日はここまで。お相手はティアナ・ランスターと」

りま「真城りまでした。・・・・・・恭文、大丈夫。私はどんなあなたでも愛していく自信があるわ」










(というわけで、とまとは巨乳大好きな主人公を軸に話が進んでいます。
本日のED:GRANRODEO『Modern Strange Cowboy』)




















恭文「・・・・・・アイツら好き勝手言いおってからにっ! 僕そういう趣味ないっつーのっ!!」

フェイト「あの、えっと・・・・・・じゃあ大きな胸とか、嫌いかな」

恭文「いや、そういう事じゃないのよっ!? 大きいから好きとかそういう事はないからっ!!
・・・・・・た、例えばフェイトがその・・・・・・胸小さくてもそれで嫌いになったりとかもないし」

フェイト「そ、そうなんだ。というかあの・・・・・・ありがと」(顔真っ赤)

あむ「あの、いちゃつくのやめてもらえますっ!? てゆうかまだアンタ達そういう段階じゃないからー!!」










(おしまい)





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