小説
冬はぬくぬく(7500hitリク)
7500hit キリリクです。浅架様に捧げます。
親就で仔狐です。





風呂から上がってベッドに座り込みテレビを見ながら髪を拭う。
相変わらず世間は物騒だ。
ニュースの伝える事件を見てぼんやりしていると、くいくいとシャツが引っ張られた。
布団の上で仔狐がゆらゆら揺れていた。
「眠いのか?」
よしよしと頭を撫でてやると気持ち良さそうに尻尾が震えた。
けれど次の瞬間には小さな身体はくてんと倒れてしまった。
「こらこら。自分の布団に入れって」
抱き上げようとすると元就は半分意識が飛んでいるにも関わらず布団にしがみ付いて抵抗する。
「いやぁ…」
ぶんぶんと首を振り、俺の布団の中に潜り込もうとする始末。
元就が住み着いて、床で寝かせるわけにもいかないと思い奮発して購入したソファーベッド。
布団一式も一緒に購入して、自分のパイプベッドよりもよほど寝心地が良さそうな寝床を用意したというのに、何故か元就は俺の布団で眠りたがる。


「わかったわかった」
このまま押し問答を繰り返しても仕方ない。
元就の頭の下に枕を押し込んで布団をかけてやる。すると安心したように力が抜ける。
「お休み」
「ん…もとちか、は?」
眠そうな声が問いかけてくる。
「寝るよ」
部屋の電球を一つずつ落としていく。真っ暗闇は元就が嫌がるので、豆電球だけは残して。
薄暗闇のなか、今日も誰も寝ないソファーベッドが目に入った。
せっかく布団も引いたのに。
なんだか勿体無く思えて仕方なくそちらに近づいた。
布団はひんやりと冷えている。だが良い布団を購入しただけあって柔らかくて気持ち良い。
元就がここで寝ないのなら、俺が寝ても構わないだろう。
誘惑に駆られて布団の中に入り込もうとした、が。
「もとちかっ!」


眠ったはずの元就が起き上がってこちらを見ていた。
「もとちか、何故こないのだ」
「2人で寝ると狭いだろ」
元就は小さいからそうでもないが、それでも1人で悠々と寝れたほうが良いだろう。
パイプベッドが気に入っているのなら譲るし。
だが元就はぷるぷると身体を震わせて睨み付けてくる。
「わ、我は、眠い」
「寝て良いぞ?」
何が言いたいのだと首をかしげると元就は首を横に振って愚図る。
「寒くて寝られぬっ!」
泣きそうな声にようやく合点がいった。
布団は寒くてもすぐに温まるだろうし、元就のいる布団はもう温かくなっているはずだ。
つまりは一緒に寝たいのか。
どうしたものかと髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜてみる。
一人寝が出来ないのは問題だろう。今後のためにもここはきちっと1人で寝かせたほうが良いはず。いろいろ考え込んでいると元就の小さな声が聞こえた。
「もとちか…寝ないのか…?」
一緒に寝てくれないのか、と俺には聞こえた。
泣きそうな寂しそうな声。
甘い甘いと心の中で咎める声が聞こえる、が。




「ほら。もう少し寄れ」
結局パイプベッドに戻る自分がいた。
「はようせぬか。われは、ねむい、ぞ」
まぶたをとろんとさせた元就が急かす。
身体を布団の中に横たえて、力を抜く。すりっと小さな身体が擦り寄ってきた。身体を横向きにして仔狐の身体を抱え込んでやる。
「あった、かい…」
限界が来たらしい。次の瞬間にはすうすうと眠りについていた。
擦り寄る身体は確かに温かい。
「おやすみ」
温もりを感じながら襲い来る眠気に身を委ねた。





END





浅架様からのキリリクの親就で仔狐でした。
仔狐は甘えん坊。元親はそんな元就を甘やかし放題。
一応躾も考えていますが、甘えられると弱いのです。
浅架様に捧げます。リクエストありがとうございました!


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あきゅろす。
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