93゚ (04) 家を出てから数週間…なにもすることもなく、とぼとぼと街を歩いていた。 …ばあちゃんに頼らず生きていくっていうのは、難しいことだなあ。1人では生きていけない、つくづく思う。 家からどのくらい歩いたのか…夜は寒い。一睡もしていない身体は限界を感じていた。 ふと前に目を向けると綺麗で大きな教会があった。俺の中での時間が止まったみたいだった。 「綺麗………」 なぜか口が動いていて、歌っていたら周りには人がいた。俺が座っている石段にはお金が置いてあって…皆が足を止めてくれる。 「綺麗な声をしているね…」 一通り歌って声がガラガラになりそうになったとき、人の良さそうな男性に声をかけられた。 「…?……そんな事ないですよ。でも、ありがとうございます」 「君…なにかあったね。話す気ない?」 疑問系ではなく肯定的に言われた。この人……なんか同類っぽいな…って失礼か。 「――…そっか、ねぇ教会に来ないかい? 俺は教会の管理人をやっていてね。素直じゃない弟がいるけど…」 全てを話した。この人なら信じれる、そう思って。 両親が俺を棄てた事、ばあちゃんが亡くなった事、荒らされた事… そしたら居候しても構わないって…優しい人だ。 「宜しく…お願いします」 [←][→] [戻る] |