93゚ (03) 俺はそれからというもの荒らされた部屋も片付けずに、一点を見つめて過ごした。それが数日間続いたとき夢をみた。 ―――…凄く真っ暗な世界にいた。どこだろうとも考えはしなかった。不思議と不安感もなく、なにかに包まれている感じだった。 ふと前を見るとばあちゃんがいた。しかし、手を伸ばしても届かない。諦めようと手を引っ込めると、ばあちゃんが抱き締めて言ってくれた。 『生きて…おばあちゃん…見守ってるから』 そういってばあちゃんは消えた。 夢が覚めたあと俺は泣いていた。…もう泣くのはやめよう。俺はばあちゃんの分まで生きなくちゃ。ばぁちゃんに誇れる生き方をしなくちゃ。 そう誓い、まず最初にしたのは家全体の掃除…そして数日間食べていなかった体つきを戻すため、栄養のとれたご飯を食べることだった。 数日後…いつものようにばあちゃんの形見を身に付けて、貯金張を持ち指輪を人差し指にはめた。 強くなって…ちゃんと人を幸せに出来るようになってから、またここに帰ってこよう。 それで、ばあちゃんに報告するんだ。 "この人が俺の大切な人なんだ" そう言えるようになりたい。心の隅でばあちゃんに強く誓った。 [←][→] [戻る] |