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だから、幸恵さんと正孝さんは詩遠を棄てたんじゃない
 
自らの命と引き換えに、詩遠を守ったんだ
 
「27歳の時に亡くなった。
その2年前に詩遠を預けたから…お前の存在を知られずに済んだ」
 
「俺っ…ずっと、母さんと親父のこと、恨んで…恨んで…うっ、俺っ、」
 
泣き始めた詩遠に、空気までもが曇った
 
幸恵さんは詩遠と同じ、自分の気持ちを声に乗せられる力を持っていた
 
「殺される前、こう言ったらしい
 
『詩遠に手を出したら許さない』
 
桜鳳会は誰のことを言ってるのか、わからなかったみたいだけど」
 
だが…白川を潰し、桜鳳会に詩遠の存在が知れた
 
桜鳳会がどこにも言っていなければ、良いだけの話しだ
 
「もうっ、いいッ…桜鳳会ってのは…?」
 
また周りのものが浮き始めた
 
更に泣いているから、流石に俺でも息苦しい
 
「詩遠…あいつ等はもういない。
でも、人を恨んでも良いことなんかない
 
俺は、お前に殺しなんかして欲しくない」
 
俺がそういうと、詩遠はハッとして…倒れるように眠りについた
 

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