93゚ (16) だから、幸恵さんと正孝さんは詩遠を棄てたんじゃない 自らの命と引き換えに、詩遠を守ったんだ 「27歳の時に亡くなった。 その2年前に詩遠を預けたから…お前の存在を知られずに済んだ」 「俺っ…ずっと、母さんと親父のこと、恨んで…恨んで…うっ、俺っ、」 泣き始めた詩遠に、空気までもが曇った 幸恵さんは詩遠と同じ、自分の気持ちを声に乗せられる力を持っていた 「殺される前、こう言ったらしい 『詩遠に手を出したら許さない』 桜鳳会は誰のことを言ってるのか、わからなかったみたいだけど」 だが…白川を潰し、桜鳳会に詩遠の存在が知れた 桜鳳会がどこにも言っていなければ、良いだけの話しだ 「もうっ、いいッ…桜鳳会ってのは…?」 また周りのものが浮き始めた 更に泣いているから、流石に俺でも息苦しい 「詩遠…あいつ等はもういない。 でも、人を恨んでも良いことなんかない 俺は、お前に殺しなんかして欲しくない」 俺がそういうと、詩遠はハッとして…倒れるように眠りについた [←][→] [戻る] |