93゚ (05) カラカラ 裏門から入るとお店のような乾いた音が、俺を迎えてくれた。"いいよ"って言ってくれているみたいで嬉しい。 「寒かっただろ? 中に暖炉があるから先に行ってなさい」 言われた通りに行くと、暖かくて暖炉の近くの床に座った。 カタッ なにかを置く音がして振り向くと、さっきの人が苦笑いしながらココアを机に置いた。…名前、知らないや。 「そんな所に座ってないでソファーに座ったら?」 あ…、ついばあちゃん家の癖が…ばあちゃん家にはソファーとか、椅子がなかったからな。あるとしたら…座布団ぐらい。 「ありがとうございます。 あの…名前聞いても良いですか?俺は詩遠です」 「シオン…良い名だ。俺は蓮 レン だ。蓮で良い」 蓮…さん ばあちゃんが付けてくれた名前…良い名だって言ってくれた。嬉しい…… 「兄貴…いるの………って誰?」 ………え?蓮さん?でも蓮さんは目の前にいるし…え? 戸惑っていると隣で蓮さんがくすっと笑った。 「蘭…良いところにきた。 詩遠、こっちは蘭。俺の双子の弟だ」 軽く挨拶をする。双子なのか…だから顔が似てるんだ。 「初めまして。詩遠です…これから居候させてもらいます。 ……それと、安心して下さい。蓮さんには憧れているだけなので」 そういうと蘭さんは目を見開いて、顔を赤く染めた。だって、しきりに俺のことを見てくるからさ。 「あれ?いつの間に気付いたの? 偏見とかもないの?」 蓮さんも驚いたように微笑みながら言った。 「さっきです。なんか甘いなぁって… あ、恋愛は自由ですよ」 「「アハハっ!!」」 2人同時に笑ったのも驚いたが、笑った顔がもっとそっくりなのにも驚いた。 [←][→] [戻る] |