いただいたSS
簪さんから

 晴海学園の休日。人影のない静かなグラウンドで、そしてその片隅のベンチで婉然と足を組む者の姿があった。そしてその傍らに先程から忙しなく動く姿。

「どうしてお前がここにいる」

「またまたー。遥先輩、隣座っていいですか?」

「……座ったその瞬間に蹴り倒す」

 婉然と組んでいた足を崩し、すっくと小柄な青年、伊藤遥は立ち上がり、グラウンドに聳えるゴールへと歩きだした。そして落ち着きなくへらへらしている青年、大倉恭一を擦れ違い様に睨み付ける。希代の美形の持ち主だけあって、尚更の迫力があった。

「長谷。早く」

「はい! 今、終わります」

 ゴールの目前、ペナルティライン付近で屈み込み、スパイクの靴紐を縛り直していた青年、長谷潤は仕上げに解けぬように強く紐を結ぶとサッカーボールをライン上に置いた。
 遥が構える。空気が張り詰める。“全国の威圧感”をずっしり背中に感じながら潤はボールに描かせる軌道を脳内に何度も思い描く。

「はい、ぴー」

 恭一が口頭で笛の音を発した。潤が力強く、助走をとる。飛ぶように踏み込み、ボールを打ち出す。
 内心、恭一は喜んだ。鮮やかなカーブがかかった。右にふられたボールは急カーブをかけ、左上のコーナーへと向かっていく。

「うわ!」

 だが、しかし。遥は顔色一つ変えずにパンチングでボールを弾いた。校舎の方に弾かれたボールはあれよという間に転がっていく。

「あーあーあー。やべ」

「あ!大倉さん、俺が行きます!待ってください!」

「早くしてよ」

 ボールを転がした本人はすまし顔で威風堂々とキーパーグローブをはめ直している。恭一と潤は校舎付近の植え込みに姿を消したボールを探していた。

「見つけたら、誉めてくれますよねー? 遥さん!」

「すみません、すぐに見つけます!」



そういう休日なわけでして


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