小咄
2009-10-10(土)
DFFSS「あの男」

あの男が消えた。
息子と戦い、敗北し、笑顔のまま消えたらしい。
クジャがやかましく泣きわめいているのが聞こえる。

「やだ!やだやだやだ!何でだよ!何で、何でだよぉっ!」

煩い、と言葉にしようとしたのだが、喉に詰まって出ては来なかった。

「どうした」

英雄が含みを持たせた笑みを向けてくる。
気分が悪い。

「何がだ」

「珍しく、感情を剥き出しにしているように見えたのでな」

私がか?
眉を寄せる。
不意に脳裏に浮かんだのはあの男の雑な笑みと乱暴な言葉。

(お前も―…)

「……ふん」

杖を一振りし、その場を離れた。
私には、関係の無い事だ。



(お前も、たまには笑ってみろよ)
(中々どうして、いい気分だぜ)
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