小咄
2009-10-27(火)
白昼夢〜花弁〜(Nさんシリーズ)

朝、目が覚めて。
朝日の入り込むカーテンを開く。
絶句した。
窓の外は、一面花びらだった。
花弁が街を埋めていく。
ひらひらと柔らかく降る色彩豊かな花弁は、灰色の道路へ、緑の樹木へ、赤い家の屋根へと積もっていく。
人間が、花弁を掻き分けて歩いているのが見えた。
果敢に進むその人は、しかし花弁に埋もれ見えなくなった。
あぁ、今日、世界は終わるのか。
窓を開き、花びらを部屋の中へと受け入れる。
赤、青、黄。
桃、橙、紫。
白、黒、灰。
無、無、無。



「おい、N!起きろ!」
「…ぉ?」
目を開けば、其処にはJが居た。
花びらは、と呟けば呆れを多分に含んだ溜め息に混じって、寝惚けてるな、と返ってくる。
…夢?
寝起きで痛む頭に手をやり、寝る前の事を思い出す。
そうだ、今日はJが泊まりに来て、二人でゲームをしていたんだ。
「いきなり倒れるから何かと思えば…そんなに疲れてたなら言えよ、マッサージしてやるから」
「いや、大丈夫だ、ありがとう」
くしゃりと髪を掴んだ指の隙間から、ひらりと極彩色の花びらがこぼれ落ちた。
[*最近][過去#]
[戻る]

無料HPエムペ!