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【涼宮ハルヒの飛球〜2〜】





それは初夏の六月。

つい先日野球大会に出場した疲れがまだ抜けきれておらず、
部室で朝比奈さんの淹れてくれたお茶を飲みながら心と体のライフポイントを回復していた時、部室のドアが蹴破られた。
やれやれ、何かある度に毎回蹴られるドアの身にもなれ。もう古いんだぞこの校舎も。

もちろん、部室棟の老朽化問題など考えたことなど絶対ないであろう団長様は、満面の笑みでこう切り出した。

「みんな!ドッジボールって知ってるわよね!」

……またか。
え〜と、こいつ今なんつった?


俺は部室にいる俺以外を見回した。
最初に目に入ったのは、
学校にいるのに制服を着ず、喫茶店でもないのにメイド服を着ているグラマラスな天使である。
いや、天使より可愛いかもしれん。

その天使こと朝比奈みくるさんはハルヒが言った事を聞き取れてないのか、ドッジボールを知らないのか、
どっちにしろ首を傾げながらハルヒを見つめていた。
うん。実に可愛い。

次に、部室の窓際に視線を移した。
ハルヒの話なんて聞いてないように、分厚い本から視線をまったく動かさない。
ページをめくる動作が無かったら生きているのかどうかさえ解らないくらいだ。
置物のように風景の一部と化してしまっているその女子は、唯一の文芸部員であるところの長門有希。

ずっと観察を続けても何のアクションも得られそうにないので、さらに視線をズラした。

俺が座っている席から左斜め前のニヤケハンサム面が俺を見つめていた。
気持ちが悪い。こっちを見るな。
視線に力を入れると軽く微笑みながら両手を挙げて降参のポーズをとった。
だから、こっちを見るな。

さっきまで1人オセロゲームを繰り広げていたその男子は古泉一樹である。
きっとこの3人は何も反応しないだろう。


「ドッジボールは知ってるが、それがどうした?」
そう切り返すと、ハルヒは待ってましたと言わんばかりに得意満面になった。

「そう、なら良かったわ。3日後に近くで大会があるのよ」

この流れはつい先日体験したばかりなのだが、ちょっと待て。
その先のセリフも何となく解ってはいるが、言って欲しくない。
いや、聞きたくない。

「そういうことで、我がSOS団も出場するわよ!」
高らかに宣言しやがった。

そういうことって、どういうことで出場する事になったんだ。
「前の野球大会で勝ちはしたけども、たかが1回戦でしょ。棄権しちゃったし。SOS団の存在を天下に知らしめるには、 まだインパクトが足りないのよ」

だからこの大会に出場してさらに名を広めようと、そういう事か。

「そうよ!」

そうやってニンマリ笑うハルヒの顔は輝いていた。こうなったら反対しても無意味だろう。
俺の話なんてまともに聞いた事ないからな。

困り果てた俺はまた他の団員の様子を見た。
朝比奈さんも俺と同様に困っており、不安げな顔をしていた、あの愛らしいお方は球技に関して良い思い出なんてないだろうからな。
古泉はというと、野球大会の時と同様にニヤケスマイル面で爽やかに「なるほど」と呟き、

長門は話を聞いていないのか、相変わらず本から視線を動かさず固まっていた。


前回の野球大会の流れから察するにSOS団全員の出場は確定しているらしい。
俺達の人数は5人だが、ドッジボールってのは何人でやるスポーツなんだ。

「そんなの知らないわよ」
自分が知りもしない競技になぜ参加するんだお前は。

「何人いたって一緒よ、ボール当ててぶっ飛ばせばいいんでしょ」
その言葉を聞いた朝比奈さんが「ひぇ!?」とカナリアのような可愛らしい声をだした。
朝比奈さんを脅かすんじゃない。大丈夫ですよ朝比奈さん、あなたを当てるような輩はこの世には存在しません。
もし狙われても俺が全力で守ってみせます。
「ありがとう、キョンくん」
まだ不安が残っている顔を微笑ませ、俺に向けてくれた。

「それよりもキョン!」
耳元で叫ぶな、聞こえてるよ。
「なんだ?」
「ドッジボールが何人でやるのかとっとと調べなさい!みくるちゃんにベタベタしないの!」
はいはい、そうでしたね。

俺は渋々立ち上がり、団長席にあるパソコンに向い、必要な参加人数を調べた。

その間ハルヒは朝比奈さんの淹れてくれたお茶を飲みながら、俺の後ろでパソコン画面を覗いていた。

そうやって見るくらいだったら自分で調べたらどうだ。
「いやよ、これは雑用係のあんたの仕事なのよ、責任持ってやりなさい」
たかが参加人数調べにそこまで責任は持てんな。


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