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これなら、野盗とも対等に戦える、だろう。

「か、彼方さん!」
「どうだ芽依子!炎の剣だ!話は最後まで聞くもんだぜ!」

俺は燃え盛る刃を野盗の頭へと向けた。

「野盗ども!これでお前等をまたあの世へ送ってやる!」
「かかか、彼方さん、ちょっと待っ…」
「うりゃああ」

俺は野盗に向かって駆け出し、強引に刀を振り回した。

「ぐわぁ、危ねぇ、おいお前ら、あの小僧をなんとかしろ!」

頭の命令でも流石に炎に近付くのは勇気がいるらしい。

「ちっ、役に立たねえ奴らだ、俺がやる!」
「くらえ!炎の剣!」
「ふん!」

きぃぃぃん

「え」

頭の一振りで、炎の剣はあっさりはじかれ、そのまま木に突き刺さった。

「そ、そんな…」
「がははは、貴様のそんな燃えただけの刀で何が出来る!」
「彼方さん、もう…」
「もう、ダメなのか…」
「じゃあ、遠慮なく殺させてもらうぜ」

頭が刀を振り上げたその時だった。
パチパチっ……
ゴォォォォォォォ

「な、なんだ!」

頭が剣を下ろし、音の方へ振り向くと、さっきはじかれた刀の炎が木や葉に燃え移り、燃え上がっていた。

「やっやべ……」
「おい、おめーら!なんとか……」
「なんとか出来ないっすよ頭ぁ」

炎はどんどん燃え移り、怪しい森は火の海と化した。

「お、おい、誰かなんとか…あちちちち」

「彼方さん、今だ!」

そう言って芽依子は俺の腕を引っ張るなりひるんだ野盗共の間をすり抜け、また森の奥へと駆けた!

「あ、小僧共!」

もう野盗どころの騒ぎじゃなくなった。


しぐれ視点


彼方さん、鳳仙様、どうか無事でいてください。

私は怪しい森を駆けていた。
おそらく野盗は成仏出来ていない霊、狙いは私の筈。
私が行けば…。

「彼方さーん!鳳仙様ーー!」

返事はない、更に奥へと入ったのか、とそんな時だった。

焦げ臭い匂いが鼻をついた。

その先を見ると少しばかり森が赤くなっていた。

「ま、まさか…」

私は木を登り、てっぺんから見晴らした。
すると森が勢い良く燃えていた。
「あ、あれは、まさかっ」

私は木を降り、燃える方へ急いだ。

すると前から二つの影が近付いてくる。
あれは、彼方さんに鳳仙様。

「彼方さーん!鳳仙様ー!」
「あれ、しぐれ!どうして!」
「しぐれさん!」
「話は後です、野盗は?」
「野盗はじゃないって、早く逃げないと野盗がもう来る!」

その時だった、彼方さん達の来た道を、今度は野盗達が駆けてくる。

「ヤバっ逃げるぞ!」
「彼方さんと鳳仙様は逃げてください」
「はぁ?何言って…」
「いいから逃げてください!彼らの目的は私でしょうから」

そんなことを話しているうちに、野盗は私達の目の前に現れた。

「がははは、かなり久しいな龍神様、これまた色っぽくなってぇ」
「久しぶりですね、何故数百年経った今もこの世をさ迷っておられるのですか」
「ほう、少しは威勢が良くなったか、あの頃はもう一人の龍神と手を合わせて子猫みたいに震えてたのによぉ」
「あなた達には、これから大人しく眠りに就いてもらいます」
彼方視点


「しぐれっ!」
「彼方さん、私は大丈夫です、だから早く」
「姉神様!」
「鳳仙様も」

「おめーら、やっちまえ!龍神は殺すなよ!ただ少し痛めつけても構わねぇ」
「無駄です!」

しぐれから波動のような物が迸った。
そして一瞬にして野盗達の持つ武器が乾いた砂の如く崩れ落ちた。

「ななな、龍神!てめえ何を!」
「無駄な抵抗はやめてください!」

そう言うとしぐれは両手を広げ目を瞑った。
するとしぐれの身体が宙に浮いていた。

「しぐれ、どうしたんだよ!」
「彼方さん、これからあなた方が目にすること、全て内密にしてください、つぐみさんや小夜里さん、白河さんや朝倉さん、澄乃さんにも」

そう言うと、しぐれの体が更に高くへと上がり、森の遥か上まで浮き上がっていた。

「わあああああああ、龍神様のお怒りだぁ!!!」
「お、おい、おめーら!」

頭以外の野盗は逃げまどっていた。

空を見上げるとしぐれから淡い光が放たれていた。
するとしぐれの姿がみるみるうちに変わっていくではないか。
しぐれの衣類が消え、美しい裸体が露わとなる。
そしてその裸体を淡い光が包んだ。
その光は次第に衣となり、しぐれの姿は、龍神…。

「ああ、姉神様!そのお姿は!」

頭から短い角、そして龍神装束、まさにかの龍神そのものとなっていた。


「ああ、あああああ、りり龍神がぁ」

あの頭も完全に腰を抜かしていた。
そして龍神の怒りの如く雨が降り出した。
その雨が森の炎を徐々に消してゆく。


「悪しき魂、安らかな眠りに就きなさい」

しぐれが両手を広げ静かに目を瞑り、気を集中させると、体から眩い光を放たれた。

「ぐわぁぁぁぁぁ」

頭や他の野盗はあっさり光に飲み込まれた。

あまりの光の眩しさに、俺も芽依子もとても目を開けられなかった。


それから、どのくらい、目を閉じていたのだろう。
俺はゆっくりと目を開いた。

「ここは、あれ?」

「お気が付かれましたか、彼方さん」
「あ、しぐれ、ここは……って」

後頭部に柔らかい感触があった。
その柔らかいモノは、しぐれの……膝だった。

「ひ、膝枕ぁ?!」
「はい、彼方さん、かなりお気持ちよさそうに眠られていたので」
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