もうどれだけ走っただろう、
ハァハァと肩で息をしながら周りを見る。
図書室を飛び出して、俺は校門の前まで走って来ていた。
背後にある学校を見上げる。
胸がズキズキとする。
さっきの光景がフラッシュバックした。
キスしていた。
自分の兄弟が、大事な物が。
「くそっ…」
胸が痛いのはきっと、走ったからじゃない。
さっきの光景が、リンの声が、兄弟という壁が。
「大人になったら僕、リンをお嫁さんにするんだ」
「えへへ、レンのお嫁さんになるー」
くっつく俺達をみて笑う両親
「二人はホントに仲が良くてお母さん嬉しいわー」
「レンなら安心してリンの事任せられるな」
昔していたお伽話のような会話
何時から大人になったのだろう。
いつのまにか、一緒だった部屋は別々になったし、リンはどんどん可愛いくなる。
一時期だが、リンに彼氏が出来た事もあった。
嬉しそうに彼の事を話すリンを、両親は微笑ましそうに見ていたけど、俺はものすごく嫌だった。
大人になったら別々の道を歩んでいく、当然のこと。
お伽話は夢の話だ。
「…こんな感情になるなら大人になんかなりたくなかった」
昔より大きな手で拳を作る。
俺がリンにこんな感情を持っているなんて、リンが知ったら軽蔑するだろうか。
昔したお伽話を、俺が信じている事を