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証言・其の参

タークス副主任




違いますよ。私は別に自ら買って出た訳ではなく。
そうですね、平たく言うと私もまた被害者の一人でしょう。
とにかく言える事は、タークスとして任務をこなしている時の方が遥かにマシだと言う事です。






『1分以内に来い』


いつも通りの無茶な注文に、普段は冷徹な彼の、子供っぽい部分を垣間見る。
しかし、今回はどうやら事情が違うらしく。


呼び付けられた場所は何故かかの神羅の英雄、Sir.セフィロスの執務室。
少しの疑問。首を傾げつつも、きちんとノックをし、短く断わりを告げてから扉を開いた。


その瞬間、


疑問は、更に膨れ上がってしまう事に。





「ルー……ファウス、様?」


確かに、その筈。
白いスーツ、後ろで結った金の髪。
まさかこんなにも特徴的な人物が神羅内に二人と居る筈が無い。
否しかし、そうであって欲しくは無い。

床に直に膝を着いてデスクの引き出しを一心不乱に漁る、この目の前に居る人物がプレジデント・神羅の御曹司、あの御方であってはならない。



「……遅いぞ、ツォン」



嗚呼、この声、この顔は紛れもなくルーファウス様。
我が神羅カンパニーの副社長。
あまりの光景に視界が一瞬揺れたのは、気のせいでは無い。



「よぉ副主任」


「あ、こんにちは」




床で這いつくばっているのは、1stクラスのソルジャー。

本棚と本棚の細い隙間から出てきたのは、一般兵の中で最も知名度と人気の高い少年。




「………」


そして、奥の方で這い回っているのは。


「……Sir.セフィロス?」

私の見間違いでなければきっとそうだ。
しかし彼は昼からの重役会議に出席しているのでは。そう言えば、


「ルーファウス様、たしか貴方も重役会議に御出席なさるご予定では?」


「そんなもの、取り止めだ」








ご冗談を。



「クラウドが、大事な物を失くしたらしい」


コンフュにかかったかの様な頭の揺れを必死に抑えていると、ルーファウス様が聞いてもいない現状の説明を始めた。

「大事な物……ですか?」

クラウド・ストライフ。セフィロスの恋人でもある彼の大事な物。
セフィロスからもらった何かだろうか。誕生日などの記念日にプレゼントされる様な……。



「まさか、それを探していらっしゃるので?」

「それ以外に何がある」


いつも以上に不機嫌そうな表情の彼は、きっと自分の思い通りにならない現状がかなり気に入らないのだ。

そんな心理分析をしていても仕様がない。

「では、私が代わりに引き受けます」

「嫌だ」

「は?」


この人は、何を仰るのか。まるでガキ大将。傍若無人と言うか、天の邪鬼と言うか。


「俺が、見つける。お前はその手伝いをしろ」


失せ物探しの手伝いとは、如何様な物でしょうか?
探知機でも持って来た方が良いのか、はたまたダウジングでもすべきなのか。


「汚いぞルーファウス。仲間を呼ぶなよ」


「何とでも言え。チームを組むなとは言わなかった筈だ」


何故、ザックスがルーファウス様を呼び捨てにしているのか、そんな事はどうでもいい。
ルーファウス様は探し物をしていると言ったはず………これは何かのゲームなのだろうか。



「ごめんなさい、ツォンさん」

控えめに謝罪の言葉を口にするクラウド。
ルーファウス様と同い年くらいだったか。
何にせよあの人もこの少年の様な繊細さを少しでも持ち合わせてくれていれば。

「それは無理な話だな」
「何で聞こえてるんですか」


何だか変なノリになり始めていると感じた瞬間、今まで無言を通していたセフィロスが床を這いながら口を開いた。

「クラウド、大丈夫か?疲れたなら休憩していろ」



ルーファウス様より誰よりも、あの人が一番マイペースだ。
そんなどうでも良い確信を持った。



「………ところで、大事な物とは何でしょうか?」


「ああ、言ってなかったか?………」







いい加減、従順に生きる事を止めても罰は当たらないのではないか。
そんな事を思った、とある午後の昼下がり。






証言・其の四

タークスのエース(自称)




あぁ?別に怒っちゃいませんよ、と。
ただ、久しぶりのお休みをだな、もうちょっとだけ有意義に使いたかったと、思っただけだぞ、と。





そう、久しぶりの休日。
一日中寝倒すか、あるいは綺麗なお姉さんと寝倒すか。
そんな二択をゆっくり選ぼうとしてた矢先にだな。


『急用だ、すぐにセフィロスの執務室まで来い』


まさか俺にご指名がかかるとは思ってもみなかった。
ツォンさん、アンタはやっぱり部下に労いの言葉一つ掛けちゃくれないんですね。
まぁそんな事は長編で既に学習している。


と、話が逸れた。


それで、先輩思いな俺様は休日の一時も犠牲にして呼び付けられた場所まで来た訳なんですが。





「…………。」


えーと。


この異様な空間は何だろうな。ミステリーゾーンに迷い込んだか。


「よくきたレノ」


思わず扉を閉めようとした俺に向かってナイスタイミングでツォンさんが話し掛けてきた。
怖いんですけど、その笑顔。



「はぁ……帰っていいですかツォンさん、と」

「無理だな」


ツォンさんの肩越しに室内を覗き見て、あぁやっぱり来るんじゃなかったと心の底から感じた訳だ。



「よぉレノ」

「ごめんね、休みなのに」
「なんだ、また増えたのか」




うん。すっげぇ帰りたい。
床を這い回るザックス。
カーテンの影から出てきたクラウド。
そして机の引き出しを辺り構わずひっくり返している副社長。



更にはこれまた床に這いつくばっている英雄の幻覚まで見えるのは、疲れてるからだな、きっと。




「セフィロス、やっぱりもういいよ。皆にも悪いし……」


相変わらずクラウドは可愛いな。
違う、そうじゃない。
どうやら幻覚でなくてリアルの英雄らしい。
何でだ。


「気にするなクラウド。人手は多いに越した事は無い」


若干会話がずれてないか?
まぁ、来たからには理由を聞かせてもらわないとな。


「で、ツォンさん達は何してるんですかねぇ、と」




「失せ物探しだ。お前も手伝え」





要約。


どうやら、皆でクラウドが失くした大事な物を探しているらしい。



クラウドの、大事な物……



「……貞操ですか、と」



言った瞬間、ダイアモンドダスト並の冷気にさらされた。


「いや、だって失くした大事な物とか言われたら、やっぱりなぁ、と」


「んなもん部屋中探し回らねぇだろ」


「馬鹿め」


「……お前を呼んだのは人選ミスだな」


「貞操ならとうの昔に失っているがな」

「せ、セフィロスッッ!!!?」




後半二名を除き、厳しい言葉を返された俺だが。


「で、そんなに必死になって探さなきゃならないもんなんですか、と」


よくよく見回してみれば、神羅のトップに程近い人物達が並んでいる。
本当に、なんだって言うのかね。


「そりゃお前」

「かなり大事な物だからな」

「……そう言う事だ」



何だろう、何かが引っ掛かるんですが。


「……何で半笑いなんすか、と」


「……気のせいだな」


ツォンさん、アンタ嘘吐くの下手だろ。


「な〜んか怪しいな。どうせアンタら俺を騙すつもりなんだろ、と」


「お前を騙して俺達に何のメリットがあるんだよ」


この猿。


しかし乗り掛かった船、何より、その大事な物とかいうのがすげぇ気になるのも事実。
クラウドの大事な物か……見つけたら一割くれるのか?
何かエロ臭いな。



「赤毛、良からぬ妄想をするなら千の欠片に斬り刻むぞ」



英雄からの死の宣告を受け、俺は久しぶりに恐怖を味わった。



「皆、ちょっと休憩しませんか?」


敬語のクラウドも慎ましやかで可愛らしい。
英雄の死の宣告、一瞬で忘れてますが。


「そうだな、俺達が休む間レノが探してくれるらしい」


待てこのドS副社長。
なんて言おう物ならツォンさんに即射殺されるだろう。
俺に拒否権は無い。


「………解りましたよ、と。で、大事な物とやらは何ですかね、と」


「さすがタークスのエースだ。探してもらいたい物は……」







七転八倒。
所詮この世に神はいないのか。





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