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証言・其の伍

都市開発部門取締役



いや、噂以上だったよ。
まさかこの目で実際に拝む事が出来るとはね。
私は楽しませてもらったよ?少し気疲れはしたがね。




いきなり会議の中止を告げられ。
まぁ、ガハハやキャハハ、それにラード親父と顔をあわせずに済むのはかなり喜ばしい事だ。
さて、空いた時間をどう使おうか、そんな事を考えながら廊下を歩いていた時だ。



「………?」


ふいに、ある部屋の前で足が止まった。
確かここは、セフィロスの執務室。
半開きの扉の隙間から一瞬見えた光景。
それが気になり、つい覗き見てしまった


………何故、彼らがここに?


思った瞬間、部屋の中から伸びた何者かの腕に強い力で室内へと引き込まれたのだ。

「うわっっ!!!?」


「は〜い一名様、ご案な〜い♪」


私を中に招き入れて陽気に言ったのは赤毛のタークス。確かレノとか言う名の青年だったはず。




「おや、リーブ君じゃないか。相変わらずヒマそうだな」


何ぬかしとんねん、このクソガキ。

そんな事一言でも言った日には瞬時に私は僻地に飛ばされてしまうだろう。



「副社長、私は別にヒマな訳では………急に午後の会議が中止になったので、」


ぼそぼそと呟くと、副社長の後ろにいたタークスの副主任(ツォンとか言う名だったか) が眉間に皺を寄せた。



「ルーファウス様…やはり会議は……」


「あぁ、中止になったようだな。まあいい」



……一体何が起きているのだ。何故、英雄の執務室に副社長とタークスが?
混乱する頭で辺りを見回し、



「…………。」



床を這う英雄の姿を直視し、更に混乱した。



「あの〜……」


目が点状態の私に向かって後ろから誰かが声をかけた。振り向くと、


「君は……」


金髪、碧眼。まるで人形の様に見目麗しく、小柄な少年(一般兵の制服を着ているのだから恐らく女では無いようだ)が私を見上げていた。
思わずその愛らしさに頬が緩む。


「都市開発部門の、偉い人ですよね?」


偉い人。その言い回しが何とも子供らしく、可愛らしい。


「あぁ、リーブというんだ。君は?」


尋ねた瞬間、背後から殺気を感じ、慌てて振り向いた。



鬼神。そんな形容がぴったりな英雄の姿。
明らかに私を見据えている。
冷や汗が背中を流れた。



「お〜いクラウド〜、お湯沸いたぜ〜?」


その時隣の部屋から黒髪の青年が現れた。
確か彼はソルジャーだ。見覚えがある。


ん?クラウド……

「君は、まさか…「俺の物だ」


私の言葉を遮り、セフィロスが言い放つ。いつのまにか、少年の後ろに回りその細い腰を抱きながら。


「…もう、セフィロス。恥ずかしいよ」


「俺は何も恥ずかしくは無い」




私は恥ずかしい。




何だこの、バニラエッセンス並に甘い空間は。
噂には聞いた事がある、英雄と少年の恋沙汰。
まさか、こんな至近距離で拝む日がくるとは。



「あ、コーヒー入れないと。リーブさんも飲んでいって下さいね」


「あ、ああ。ありがとう」



それにしても。


英雄、ソルジャー、副社長、タークス……そして英雄の恋人。


何なのだろうか、この部屋は。



「あ、カップが足りないや。え〜っと…」


手際よく人数分のカップを用意する少年。
可愛いなぁ、とか思いながら呆然と見守っていると、危なっかしく爪先立ちで上の戸棚のカップを取ろうとしている。


「あっ」


「「「あっっ!!」」」


バランスを崩したクラウド。
それに焦る六人の男の声が合わさった。



トサッ、
クラウドを柔らかく迎えたのはセフィロスの胸。


「大丈夫か?無理はするなクラウド。俺が取る」


先に言えよ。多分皆心の中で突っ込んだが、まぁ流石恋人。
大事にならなくて良かった。


そして、はたと忘れかけていた現状を思い出す。



「副社長、そう言えば皆は何故ここに…「あ」



またも言葉を遮られた。今度は少年によって。

しかし今度はどうやら先程と様子が違う。
皆が無言で(ぽかんと口を開きながら)クラウドの手元を見つめている。






「……あった」







「………?」


あった?何が?


今イチ状況が把握できないが、私もつられて少年の手元を見た。



その手に持っているのは、
とても小さくて、変な形の。薄っぺらい板の様な……





「……ジグソーパズル?」




私が呟いた瞬間、少年が満面の笑みで微笑んだ。



「良かった〜!!!!こんな所にあったんだぁ」


少年とは違い少し放心気味の副社長達。


「クラウド……それ、何処にあったんだ?」


黒髪のソルジャーの問いに笑顔で答えるクラウド。


「何かね、今戸棚から取ったカップの底にくっついてたみたい」


「へぇ〜……良かったじゃん」


「うん!これで苦労した3000Pのパズルがやっと出来上がるよ!」




これは、もしかして。




「皆さん、それをずっと探してたので?」


「……聞くな」


「…………はぁ」


「ツォンさん、俺に特別手当てとか出るんすか、と」



………。




「大事なピースだからな、見つかって良かった」


「うん、セフィロスも、みんなもありがとうっ!」



楽しそうに微笑み合うセフィロスとクラウド。

そして対照的に疲労の色が目に見えて解る後の面子。それを見送りながら、私はこっそり部屋を後にした。








えぇ、とても有意義に過ごせましたよ。











はてさてこれにて一件落着。


世に言ふ其れは、
恋は盲目。





かくて、皆様お忙しひ中
ありがたうござひました。



さても、この御話の

壱番のうましかものは、



誰でせう?






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