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「ひっ……やあぁぁぁああぁぁぁあぁあああ!」

かろうじて繋ぎ止めていた気丈さも、目前にした恐怖に跡形もなく弾け飛ぶ。
グレーテルは心の底から悲鳴を上げると、倒れた体勢のままでウサギの人形を振りかぶった。

払うようにして弧を描いたそれは野球のバットの如く青い人形に直撃すると、首なしの青い塊を弾き飛ばす。
その衝撃で手からウサギの人形もすっぽ抜け、そちらは倒れているギャリー目掛けて飛んでいった。

ウサギの人形は壁に当たると、ギャリーの頭にそのまま覆い被さる形で落ちる。
青い人形の体は笑っている自らの顔目掛けて真っ直ぐ飛んでいき、お互い弾け合って部屋中に赤い絵の具をばらまいていく。

個体を構成していた目や手足などといった部位が、赤色と共に飛び散っていった。
大人が見ても十分にグロテスクな光景を目の辺りにして、グレーテルは荒い息のまま目を背けようと寝返りを打つ。



「ぜぇ、ぜぇ、はぁ……は、ごほっ、ごほっ……っはぁ、はぁ……。」

まるで先程の青い人形のように這いつくばって、ずるずるとギャリーの元まで寄っていく。
だが体力も緊張も限界まで張り詰めて爆発した直後の体では、すぐに力尽きてその場でぐったりと横たわるしか無かった。



(ぼんやりしてよく見えない……つかれちゃった、ねむい……。)



朦朧とした意識で忙しない呼吸を繰り返し、体中汗だくでびしょびしょになったまま力が入らない。
極度の疲労にが眠気を呼び寄せて、そのまま意識を手放そうとした。





バタン





乱暴にドアが開く音。
霞んだ視界ながらそちらへ目をやると、ぼんやりと真っ黒な影が部屋へ入ってくるのが見える。



だが、動かしたくても動かない体では、何か行動する事も言葉を発する事すらも出来なかった。





→ 「49」


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