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突然開いた扉にも驚いたが、何よりそこに人が立っている事に驚いた。
反射的にギャリーの名前を呼びそうになったグレーテルは何とか口から出かかった言葉を飲み込み、ウサギの人形をぎゅっと抱きしめて後退さる。



対する男性は、品定めでもするかのように少女を見下ろしていた。
無言でじっと見られているのは気持ちの良いものではない。 首の後ろがじりじりする。
思わず視線を逸らそうとするが、ふと男性の胸ポケットに気になる物が差し込まれているのに気が付いた。

「あ……お花……。 お兄さんも、迷子……?」

思わず口を開いてしまったが、それに対しての返答は返ってこない。
代わりに男性の方もグレーテルの持つ桃色の薔薇に気が付いたのか、独り言で何やら呟いた。
「アイツの言ってたガキか…」などと聞こえたのに、グレーテルは驚いて顔を上げた。

「お兄さん、ギャリーさんを知ってるの……?」

言葉の雰囲気から敏感に感じ取った問いかけだっだが、黒い薔薇の男性は無言のまま少女の脇を通り過ぎると、部屋の隅にあった本棚へと歩いていく。



ぐいっ



「……ンだよ。 離せ。」

「……あ、ごめんなさい……。」

本能的に男性の服の裾を掴んでしまい、鋭い視線と共に投げられた言葉に慌ててそれを離す。
が、視線だけは意地でも逸らさなかった。

「お…教えて下さい……。 ギャリーさんは、どこですか。」

睨み付けられて怯えてるのは傍目にも解るくらい青ざめているくせに、気丈にも問いかけてくる少女に男性は―――ジルベルトは舌打ちをする。
うぜェ、と一言溢すと、尚本棚へと向かいながら吐き捨てた。

「気になンなら向こうに行け。」

それ以上は言わずに、本棚の本を適当に取って中を確認し始める。
そこから動こうとしないジルベルトに「…お兄さんは?」と問いかけると、「知るか」と苛立たしい声音で返ってきたので、グレーテルは首を傾げながらも一人で部屋を出ていった。





子供と認識した時点で一切の関わりを拒否したジルベルトは、特に心配や気にする事も無く手元の書物に集中する。
『ゲルテナ作品集 上』と題された本のページを捲りながら、次々と項目に目を通していく。
Aのページ、Kのページ、Jのページ……。

(……目新しいモンが無ェな。)

溜め息を吐いて本を閉じると、その隣にあった『ゲルテナ作品集 中』を手に取った。





→ 「46」


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