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「ケホッ、ケホッ………っ…。」

寝苦しそうに身を捩るギャリーを、グレーテルが心配そうに見守る。

駆け寄って名前を呼びたい気持ちを抑えてその場に留まっていたのだが、そんな気遣いなどどこ吹く風でジルベルトは容赦無くギャリーの体を足で仰向けに反す。
その拍子にギャリーの頭に覆い被さっていたウサギの人形が転がり落ちて、丁度枕代わりになった。

「オイ、いつまで寝てンだ。」

相変わらず乱暴なジルベルトにグレーテルはハラハラしながら止めるべきかを迷う。
だが、ギャリーは傍目にはっきりと解るくらい額に汗を掻いている。

丁度うなされているような状態に、むしろ早く起こした方が良いのかもしれないとグレーテルが近付こうとした時だった。



「………あと5分………。」



ドスッ



確かに漏れ聞こえた言葉をグレーテルが理解する頃には、ジルベルトがギャリーの腹を靴のまま思いきり踏みつけていた。

「っかは……っ! 」

「ふざけンなオマエいい加減にしろさっさと起きやがれ。」

ショックか何かで固まっていたのが、どうやらいつの間にかただの睡眠に昇華していたらしい。
危機感も緊迫感も無い寝言に堪忍袋の緒が切れたのか、ジルベルトは容赦の上に情けまで無くしてギャリーを『起こしに』かかっていた。

グレーテルが起きないギャリーを別の意味で心配になった時、突如覚醒は訪れた。



「ごほっ……、っ痛いわね! さっきから何なのよ!」

「! ギャリーさん起き……。」

ゴンッ



咳き込んで起き上がろうとしたギャリーにグレーテルが喜びを示そうとした瞬間、ギャリーの顔面に何かが投げつけられて直撃した。
耳を塞ぎたくなる鈍い音に次いで、ギャリーがいつぞやの覚醒時と同じ叫び声を上げる羽目になる。



「っ痛ぁーいっ!」




ゴトンと重々しい音をたてて床に落ちた物体は、どうやら一冊の本の様だった。





→ 「51」


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