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目に悪いショッキングピンクの壁の部屋。
薄暗い部屋も気味が悪いが、これはこれで目が痛い。 こんな部屋は以前見たことがない。
そもそも目覚めてから今に至るまで、見知った部屋など在りはしなかったのだが。

(もしかして、構造が変わってる……?)

進みながらもずっと抱いていた違和感を言葉にするなら、まさにそんな感じだった。
そしてその違和感を自覚したその時に、新たな変化はやってきた。



「……ひっ、ぐす。 ………ふえぇ…っ……っ。」



部屋の奥の方から、今度ははっきりと聞こえた。
しゃくりあげて嗚咽を漏らした泣き声。 更に言うなら、幼い少女のような声。
90゜曲がった壁をそっと覗いて、青年は目を真ん丸に見開いた。





壁から抜け出したかのように同じピンク色のカントリードレスを着たプラチナブロンドの少女が、同じくショッキングなピンク色をしたウサギの人形を抱き締めて、蹲って泣いている。
おまけに、傍らに落ちている小さな薔薇の色も、統一されたようなピンク色だった。

……これは果たして罠なのかしら。

メアリーの件があるので、そういった可能性も無きにしもあらず。
しかし罠とするなら随分とあからさまな気がしないでもない。
どうしたものかと思案するも、小さな少女を放っておくなど結局出来なかった青年は、

「おじょーちゃん、大丈夫?」

つい、声を掛けていた。





突然の声に反応して、がばっと勢いよく起き上がった少女は、涙でぐちゃぐちゃになった緑色の目を青年に向けると「ひっ……」と小さく悲鳴を上げて、ウサギの人形を更に強く抱き締めた。

今更だが青年の風貌は、お世辞にも爽やかとは言い難い。
長い前髪のせいで顔には影が落ち、左目も完全に覆ってしまっている。
辛うじて明るみに出ている右目は三白眼で、身を纏うコートはボロボロのボロボロだ。

そんな青年の風貌は、年端も行かぬ少女を怯えさせるには十分な効果を発したらしい。
立ち上がることすら恐ろしいのか、座ったままの姿勢でじりじりと後退さり、されど緑色の目は見開いたまま青年から逸らさない。

見た目に怯えている少女に戸惑うも、青年は敵意は無いことを示そうとして、目線の高さを合わせようとその場で屈んでみせた。

「そんなに怖がらないで? 取って食べたりなんかしないから。」

にこりと笑顔を見せて、握手を求めるように控えめに右手を差し出した、その時だった。





「やあぁぁぁっ! 来ないで、ホームレスッ!」

「ちょっと失礼ね! 誰がホームレスよ!」



緊張感なぞどこ吹く風の叫びが二つ、目に痛い部屋に木霊した。
至近距離の叫び声にお互い耳が痛くなったのは言うまでもない。





→ 「04」


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