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“入力せよ”



既視感のある状況。
イヴと共に行動していた時に遭遇した仕掛けだったはずだ。
『深海の世』や『ミドリのよる』と言った作品名を入力して解錠する仕掛けであったそれが、今まさに目の前に現れている。
この状況下なら、入力するのは完成させたパズルの作品名だと思われるのだが。



「……………何だっけ、全く思い出せないわ。」



作品自体は目にしたような気がする。
この空間に迷い混む前の美術館で、どこかにこの絵と同じような石像を見かけた記憶がぼんやりと残っている。
だが、見て回った作品の名前まで事細かく覚えている訳がない。

(『あうん』……は別の作品よね。 そもそもあれ美術館にあったっけ……?
 見た目はインパクトあったから何となく覚えてるんだけど、題名なんか覚えてないわよ!)

一人頭を抱えて猛烈に悩んでいるギャリーに対し、我関せずとでも言わんばかりに黙ってその様子を眺めているジルベルト。

そもそもこの男性は美術館に何しに来ていたのだろうか。
少ししか行動を共にしていないが、美術館に鑑賞に来そうな人種にはお世辞にも見えない。
例えばグレーテルなら、イヴと同じようにきっと両親などに連れられて来たのだろう。

心配からの不安に駆られるギャリーの思考は、無意識の内に少女の名を呟かせていたらしい。
誰だソイツとジルベルトに突っ込まれて、慌てて口に手をやった。



「え、ウソ、今アタシ声に出してた?」

「こンな状況に心配できるほど女好きかよ、オマエ。」

「アンタって奴は! どうしてそんな風にしか捉えられないの。
 グレーテルは彼女じゃなくて、ここで出会った女の子よ。 まだ小さいんだから心配して何が悪いのよ。」

「カマの上にロリコンかよ。 完全に救われねェヤツ。」

「勝手に人を重度の性的倒錯者にしないでくれるかしら。 誤解も甚だしいわよ、全く。」

「どこが違うンだよ。 第一オマエのその見た目でガキつれ歩いてたら誘拐犯にしか見えねェっての。」



ぎゃあぎゃあと不毛な言い争いが始まる。
誘拐犯とか失礼にも程があるわよ、と言い返した所で、ギャリーは思考が反応したのを感じ取った。

(誘拐犯……誘拐、ゆうかい……何かしら、何かが引っ掛かって……。)

……………………………………………。










「思い出した! そうだわ、『融解』よ!」





→ 「34」


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