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「っ!?」

文字が浮かぶや否や、そこから無数の黒い手が伸びてくる。
ギャリーが叫ぶより前に、ジルベルトが気付くより前に、その黒い手はジルベルトの口を塞ぎ服や手足を掴んで自由を奪い首を絞め、全身を拘束する。
とてつもない力で全身を締め上げられ、身体中が悲鳴を上げた。



声すら出せない状況でも必死に抵抗するジルベルトだが、多勢に無勢ではそれがまかり通る筈もない。
その上さらに黒い手の一本が、ジルベルトの黒い薔薇を奪い取ろうと伸びてきた。



「そうはさせないわよ!」



ギャリーはこれ見よがしにライターの火を付けて見せると、その黒い手に押し付けて薔薇を奪い返す。
元々この空間自体が火に敏感に出来ているせいか、ギャリーの行動は大きな効果があったようだ。

黒い手の集団は狂ったようにうねってジルベルトを解放する。 だが間髪入れず今度はギャリーに襲いかかってきた。

「…っげほ、っはァ……それを貸せ、投げろ!」

ギャリーが拘束される寸前にジルベルトが叫び、それを疑問に感じる間もなく本能が指示通りにライターを投げ渡す。
直後に同じ形でギャリーが黒い手達に絡みつかれるが、ジルベルトはこの状況下でシガレットの箱を取り出した。

まさか吸うんじゃないでしょうね、とギリギリの思考で危惧すると、そのまさかでジルベルトはシガレットに着火する。



だが、何故か箱の中身を丸ごと取り出して全てに火を付けていた。

「要は対処しきれねェくらい全面焼き印まみれにしてやりゃ良いンだろォが。」

言って一本だけ口に据えると、残りの全てをばらまく様にして 黒い手に向けて投げつける。
残った空箱にまで火を付けて投げつけると、据えていた一本と火を出したままのライターをそれぞれ持ち、ギャリーの首を締め上げているそれに向かって、トドメだと言わんばかりに叩きつけるようにして押し付けた。

全面攻撃を仕掛けられ、統率を乱した黒い手の集団は見た目に狼狽えたようにわさわさと奇怪な動きをし始める。





好転の兆しを見逃さず二人は壊れた壁の向こうに見える新たな通路へ駆け出すと、次の部屋へと逃げ込んだ。





→ 「31」


あきゅろす。
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