[携帯モード] [URL送信]

(とりあえず薔薇、薔薇を取り戻して……後の事はその時になってからよ!)

半ば自棄になりながら、ギャリーは再び黒い服の女と命懸けの鬼ごっこをする羽目になっている。
倒れている男性の心配をする事なく薔薇を回収に行けるという最善の策には違いないのだが、同時に己の命が危機に晒される状況に陥るせいか、素直に喜べないのは気のせいでは無いだろう。

薔薇を取り戻した後に対峙して蹴り飛ばすくらいの覚悟をしながら、黒い服の女が花占いをしていた場所へと辿り着いた。

そこには散らされた花弁と、僅かに花弁の残った薔薇。

即座に薔薇を拾って後ろを振り返ると、黒い服の女がみるみる距離を詰めて這い寄ってくる所だった。
……これは本気で戦わなければならないかもしれない。
壁にくっつくようにして背を付けた時、何かが背骨の辺りに当たる感触がした。



ガタンッ



何が当たったのか確認する間もなく、目の前の床に隠し穴の如く落とし穴が出現する。
驚いて目を真ん丸にしたギャリーの目の前で、黒い服の女はその穴に落ちた。



いや、落ちたのだが落ち切ってはいない。



穴は横の壁から壁へと繋がるほど横長ではあったのだが、縦に関しては跨げるか否か程度の幅しか開いていなかった。
黒い服の女はその穴に額縁だけが引っ掛かる形ではまってしまい、こちら側には額の裏しか見えない。
恐らく暴れているのであろう、引っ掛かった額縁がガタガタと激しく揺れており、橋代わりにして渡るには些か不安を覚える程だった。

「……えっと、助かった…のよね?」

ギャリーは目の前の成り行きに疑問符を浮かべて、ちらりと自身の後ろを確認する。
先程背骨に当たった辺りの所に、スイッチのような出っ張りがあった。
気が付かない内に背中で押してしまったのだろう、自身の運の良さに賛辞を贈る。

早くこの薔薇を回復させてあげないと、と恐る恐る暴れる額裏に足を置くと、一際大きく揺れ出したので心を決めて一気に渡り切った。



そのまま駆け出したギャリーの耳に絵が落ちていくような音が届いたが、本人は全力で聞こえなかった振りをしてそのまま駆け去った。





→ 「26」


あきゅろす。
[グループ][ナビ]
[HPリング]

無料HPエムペ!