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グレーテルに出会ったばかりの時に注意した、薔薇の扱い。
当然迷い込んだ当初はその大切さなんか知らないし、ギャリー自身も逃げる手段として青い薔薇をみすみす渡してやった過去がある。
その結果、花弁を毟られるたびに身体中に痛みが走り、立っていることすら困難な状況に陥った。



……そう、まさに目の前で悶えているこの男性のように。



「……この急いでるときに。 アンタ、そこ動くんじゃないわよ!」

ギャリーはそう言い残すと、男性を飛び越えて入り組んだ道を駆け抜ける。
左手の法則などすっかり頭から抜け落ちて、手当たり次第に角を曲がって行った。

どんどん進むが扉らしきものなど一切見当たらない。
一刻も早くグレーテルも見つけなければならない状況で、時間の無駄使いなど許されないというのに。

焦りも最高潮に達しかけた頃、最高に望ましくない形でそれは発見された。



袋小路で、

一方通行の逃げ道に、

その場に落ちている薔薇の花弁、

見覚えのある……と言うより、身に覚えのある光景。



絵画から上半身だけを出した髪の長い女が、それはそれは美しくおぞましい顔で花占いの真っ最中だった。
ただひとつ、その女が黒い服を着ている事を除けば、その姿は記憶に残っているものと何ら変わりなく。
ついでに言えば、こっちの姿を認めた瞬間に物凄いスピードで這いずり寄ってくるのも同じだった。



「……何で新色が出てるのよっ! こんなので出たって何も嬉しくなんかないじゃないーっ!」

ごもっともながらも状況的に叫ぶような事ではないが、奇しくもそれが始まりの合図となる。





命懸けの一方的な鬼ごっこの再来だった。





→ 「24」


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