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“別々に生まれた双子の種は樹が育て、”
樹というのは『口直しの樹』の事だろうと思い、手に入れた二つの種をこの樹の根本へ置いてみると、それは直ぐ様樹に吸い込まれるようにして消えた。
次の過程に移っても良いのだろうかと、最後の一節を読み返す。

“育った双子は一体となり、柔らかな葡萄酒で眠りにつく。”
柔らかな葡萄酒は『ワインソファ』の事だと目星がついていたのでそれを調べてみると、くるまった紅色の絹の中から茶色い鍵が出てきた。

忘れない内にと花瓶で薔薇を回復し、二人はそれで解錠すると次なる部屋へと進んでいく。





「……おっきな時計……。」

「ホントね。 アタシの背よりも高いわ。」

新たな部屋に辿り着いて真っ先に目を引いたのが、木製の外殼をまとった大きな振り子時計だった。
どこかの童謡に出てきそうなこの古びた時計は、振り子ごと止まっていて動いていない所までそっくりである。

と、時計の振り子を護るガラス扉に何か貼り付いているのが見えた。



“アナタは今、何時?”



「……文章おかしいでしょコレ……意味不明だわ。」

アタシは時計じゃ無いわよ、と一人突っ込むと、取り敢えず部屋全体を見渡してみる。
が、この時計以外に怪しそうな物は見当たらなかった。

またも頭を抱える羽目になりそうだと思った矢先、とことこ歩いて近寄ってきたグレーテルが何も無いところで蹴躓いて、ギャリーの横っ腹に意図せぬダイレクトアタックをお見舞いする形になった。

「〜〜〜っ!」

「いたた……っ。 あ、ごめんなさい…ギャリーさん。」

悶絶するギャリーに頭を擦りながら謝るグレーテル。
ギャリーは「アンタアタシを殺す気なの?」と涙目になりながら訴えると、横っ腹を擦りながら立ち上がる。



「と言うかポケットに入ってたこの時計が痛か―――あ。」



間の抜けた声は、何か糸口を掴んだ時のものだった。





→ 「19」


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