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グレーテルはウサギの人形を力一杯抱きしめ、唇を噛んで声を漏らさないように必死に耐えていた。

(怖い…けど……泣かないって、決めたもん……!)

目に涙は溜まっているものの、けして泣き声は上げまいと体を震わせながら耐える健気な努力はギャリーにも伝わったのだろう。
敢えてそこには触れずに、謎解きの解釈をグレーテルにも聞こえるように声に出した。

「“破片を集めた白”っていうのがこれの事だと思うのよねー。」

言いながら先程バラバラに崩れ落ちた白い絵を覗き込むようにして、ギャリーは「う…」と引き攣った顔をする。
とっさに白い絵が掛かっていた額縁を見やると、その下に“ミルクパズル”とタイトルが貼ってあるのが確認できた。

(“集めて”と言うことは、組み立てないといけないのかしら。 アタシこれ苦手なのよね…。)



頭を抱えたギャリーの後ろから、何とか涙腺を制したらしいグレーテルが顔を覗かせた。
少女はギャリーとミルクパズルを交互に見てから、恐る恐るパズルのピースを手に取ると、

「……このパズル、を…完成させたらいいの…? だったらわたし……これ、やってみる…。」

果敢にも真っ白のパズルに挑戦し始める。
人形片手に手探りでパズルを組み立てていくスピードは最初こそ戸惑っていたものの、要領を掴んだ後はギャリーが挑戦するより余程早いと思える程だった。

「グレーテル、こういうの好きなの?」

手際の良さに驚いて訊いてみると、グレーテルは首を横に振って「…やったことない」と答える。
ひょっとするとこの少女、実は結構頭がよろしかったりするのかもしれない。

ひとまずミルクパズルはグレーテルに任せて、ギャリーは謎解きに戻ることにする。

(同じ考えでいくと“砕けた赤”は苦味の果実の事だと思うんだけど、これはパズルが完成してからね。 となると次なんだけど……。)



“黒+青の満月を、色のない世界へ。”



さて、これは何を意味するのやら。





→ 「16」


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