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次なる部屋へ繋がる、一面真っ白の細長い通路。
その両側の壁に、一見同じように見える絵がずらりと並んで飾られていた。

獅子と般若を足して2で割ったような形相の見たこともない獣が、まるで食らいついて来るかのように大口を開けてこちらを向いている。
お世辞にも可愛いとは言えないその絵に、グレーテルは怯えたようにギャリーの後ろへ付きながら歩く。
ギャリーはと言うと、警戒心を剥き出しにした目で絵画達を見張りながら歩いていた。

と、不意にギャリーが立ち止まる。 突然止まったので、その後ろを歩いていたグレーテルはギャリーの足にぶつかる形になった。

「……どうしたの、ギャリーさん…?」



「グレーテル。 そのウサギの人形、帽子みたいにして頭に巻き付けて。 出来るだけ耳を塞ぐようにね。」



突然の指示は意図が解りかねるものだったのだろう。 グレーテルは不思議そうな顔をしてギャリーを見上げるが、ギャリーに「早く」と急かされたので、大人しく言われた通りに人形を頭にやった。
端から見ると、人形がグレーテルの頭に抱きついてるようだ。
その両手を自身の耳にあて、塞ぐようにぎゅっと押し付ける。
これでいいの?と目で訴えてきたグレーテルに、ギャリーは上出来と頷いてみせた。

“ちょっとここで待ってて”

ギャリーは口の動きと仕草でそう伝えると、一番近くにあった絵の前に立つ。
目の前にあるのは、複数ある怪物の絵のひとつ。
何事かと見守るグレーテルの目の前で深呼吸すると、勢いよく絵画を殴り付けた。





…………………ように見えた。



「…………………っ!?」

ギャリーの手が、絵の中に入っている。
しかもそれだけではない。 絵の中の怪物が、突然口の中に入ってきた腕を噛み千切らんばかりに牙を立てる。

「……っんの、痛いわねっ! 放しなさいよ!」

もう片方の手で今度は間違いなく絵画を殴ると、怯んだのか一瞬怪物の口が開く。
その隙を逃さず手を引き抜くと、その手には真っ白な鍵が握られていた。



途端、通路に掛かっている全ての絵から獣の唸り声が轟き始める。



奮闘しているギャリーとは裏腹に、目の前の現実と展開に追い付けないグレーテルは固まったまま動けず、呆然とその場で立ち尽くすしかなかった。





→ 「10」


あきゅろす。
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