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「サキは、」

しばらくの沈黙のあと、早紀ちゃんは蚊の鳴くような声で言った。

「サキは、嘘ついてません」

しかしプールの中では男子が騒がしく泳いでいるため、先生は聞き取れなかったらしく何だ、と聞き返した。早紀ちゃんの大きな瞳には涙が膜をはって、みるみる膨れ上がっていく。それがぽろっと零れそうになったときだった。

「あたしは本当に生理なんです。あたしは何にも悪いことしてないのになんで怒られなきゃいけないの。サキは悪くないもん」

早紀ちゃんが急に声を張り上げて、一気にそこまでまくし立てた。言い終わると今度は堰を切ったようにわんわん泣き出す。あたしもほかのみんなも、男子までもがびっくりして早紀ちゃんを見ていた。先生が動揺して早紀ちゃんを宥めにかかる。愛海ちゃんと仲がいい小坂さんや杏奈ちゃんが、気まずそうにうなだれていた。早紀ちゃんの泣く声と先生の謝る声以外には、プールは水を打ったような静けさだけが広がっていた。

早紀ちゃんの泣く声を聞きながらあたしは無性に腹が立ってきて、タオルを肩まで引っ張り上げて体育座りの膝に顔をうずめた。お尻の部分が生ぬるいプールの水に濡れていて、少し気持ち悪い。

サキはわるくないもん。
サキはわるくないもん。

ああ、うるさい。
そうやって啓介を振ったときも泣いたんだろうか。そう思うと早紀ちゃんがすごく憎らしい気がした。早紀ちゃんが、嘘じゃないもん、って言うたびにそれがますます嘘っぽく聞こえて、余計にイライラした。あたしは丸くなったまま、時間が過ぎるのを待っていた。いつも眠たい話にすぐ耳を塞ぎたがる脳みそは、今日に限ってずっとしゃきっとしたまんまだった。





















































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