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――ああ、ほんとだったんだ。
前を歩く猫背の啓介の背中が、今日は更に丸っこい。声をかけようかどうか迷っているうちにストーカーみたいになっていることに気づいて、慌てて名前を呼んだ。

「啓介、」
「んわっ!」

啓介がビクッとしたので、あたしの方がびっくりしてしまった。キョトンとしていると振り向いた啓介が真っ赤になっている。

「何だよ、美代か。びっくりさせんなよマジで」
「声かけただけじゃん」
「うっさいなあ」

そう言ってすぐまた振り向いて歩き出す。あたしはそのななめ後ろをちょっと早足でついて行く。長く伸びる啓介の影を踏まないように歩いた。

「振られたんだって?」

下を向いたまんま啓介の影に問いかけると、影は振り向くみたいに揺れた。ふと啓介を見るとばっちり目が合って、ちょっとドキッとして思わずまたすぐ下を向いた。

「…うん」
「ふーん、なんで?」
「あたしのこと見てくれないから、だって」

また影に問いかけると、あっさりぶっきらぼうな答えが返ってきた。その答えに少し、引っかかる。

「…“あたし”?」
「あ?お前じゃねえよ」

思わず立ち止まる。啓介に問いかけると素っ頓狂な答えが返ってきた。

「違くて、」
「え、ああ…うん。そう言ってた」

早紀ちゃん、自分のこと“あたし”って言ったのかな。全然想像つかない。

「…へえ、」
「…俺もびっくりした」
「え?」
「“あたし”なんて言うからびっくりして、言葉全体の意味飲み込めてないうちに泣き出すしさー、」
「へー、」

あたしの脳みそが自然と耳を塞ぎたがるみたい。徐々に思考がぼんやりしてくる。また適当に相槌を打ちながら、あたしは何故だか居たたまれなくなって、足元の小石を軽く蹴りながら水泳のことを考えた。明日の体育、どうにか休めないかな。





















































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